シトスレイヤー第一話「第3新東京市炎上」より 「トキオ・スリー・イン・フレイム」

EVANGELION ∧ i : AAA Wunder S シリーズ統計1万読まれ近い記念特別ほうそう企画のまとめです。
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戦車 @MoterSensha

何をどう進めようが、ゲンドー・イカリの知ったことではない。彼に取り、世界などどうでもよく、モータルもどうでも良い。家族さえあれば、彼は満ち足りていたからだ。しかし、過程がどうであったにせよ、妻は死に、息子は狂った。それが全てだ。

2021-05-31 22:59:41
戦車 @MoterSensha

その所以をたどるならば、やはり古代よりニンジャとモータルを滅ぼすべく活動してきたシトに要因を求めるべきなのだろう。故に、彼は眼鏡を外し、トレンチコートを脱ぎ捨てた。

2021-05-31 22:59:59
戦車 @MoterSensha

低く。しかし己の心にうねる赤黒い怒りのままに、ゲンドー・イカリは呟きながら、鋭く、素早く跳躍した。

2021-05-31 23:02:21
戦車 @MoterSensha

ZAP! 直後、シトの両目がひかり、数瞬前まで彼の居た草原が巨大な爆発に包まれる。だが、その瞬間には最早彼は赤黒の装束に身を包んでいた。爆風を背に、より高く、より遠く、より素早く、弾丸のごとく加速する!

2021-05-31 23:02:42
戦車 @MoterSensha

「イヤーッ!」弾丸めいた速度でゲンドーがトビゲリを繰り出す!しかし、それはシトの直前に突如出現した、赤い八角形の波紋めいて輝く防壁に阻まれる!ATフィールド!モータルの武器など物ともせず、ノーカラテのニンジャでも貫くこと能わぬ絶対の防壁! シトという種族に共通した絶対の護りである!

2021-05-31 23:06:25
戦車 @MoterSensha

だが……おお、見よ! ゲンドーのトビゲリは弾かれるどころか、むしろ食い込むようにATフィールドを凹ませ、めり込んでゆくではないか!超音速の砲弾やミサイル、N2爆雷の核融合爆発すら凌駕する超爆発すら防ぎきった絶対の防壁が、凹字に歪んでゆくではないか!熱した飴細工を捻じ曲げるように!

2021-05-31 23:06:50
戦車 @MoterSensha

「ATフィールドを中和しているの!?」ナオコ・アカギが司令部で驚愕の叫びを上げる。エヴァであれば、シトのATフィールドを中和突破できる。それと同じ事象と思ったのだ。彼女はモータルであり、科学者だ。総判断するのも、無理はない。だが、紛いとはいえニンジャであるコーゾーにはわかっていた。

2021-05-31 23:12:31
戦車 @MoterSensha

「違う」「中和以外の手段で、ATフィールドを?」ナオコの疑問に、コーゾーは少し迷い、しかし明言した。「カラテだ」「カラテ?」ナオコが疑問の唸りを上げる。理解できないという顔であった。しかし、コーゾーは重ねていう。

2021-05-31 23:12:55
戦車 @MoterSensha

「カラテなのだ。圧倒的カラテ。ニンジャの武器は磨き上げたカラテ。ヒトが出現する以前から、いつの時代もカラテを極めた者が上へゆく。シトのキャリアーであった月を先んじて砕いたのもカラテだ。頭上の月は、その残骸が再び寄せ集まった亡骸に過ぎん」

2021-05-31 23:13:16
戦車 @MoterSensha

そしてモニタに移るゲンドーのトビゲリは、遂に人類には突破不能とすら思われたATフィールドを貫く!加速!足刀がシトサキエルの仮面、その頬へ食い込んだ!N2爆雷ですら漸く表面を僅かに溶かした程度であったにも関わらず、ゲンドーのトビゲリは、数メートルのひび割れを仮面に生じさせたではないか!

2021-05-31 23:17:19
戦車 @MoterSensha

「本物のニンジャのトビゲリは、N2爆発すら凌駕するというのか!?」コーゾーが、我知らず驚愕とともに思いを叫んだ。司令部に、どよめきが奔る。

2021-05-31 23:17:48
戦車 @MoterSensha

無論、目の前の、ただの人間にしか見えない赤黒の装束を纏った存在が、いともたやすくATフィールドを突き破ったことも理由だった。だが、それ以上に彼らは別の言葉に動揺していた。

2021-05-31 23:17:58
戦車 @MoterSensha

「ニンジャ?」「ニンジャナニ?」「ニンジャ?」「ニンジャナンデ?」一様に、皆がその言葉を口走りだす。「いかん!」コーゾーが青ざめた。

2021-05-31 23:18:30
戦車 @MoterSensha

傍らのナオコを振り返る。彼女の表情も青ざめ、震え、その名を口走っていた。「ニンジャ」己の迂闊をコーゾーは呪った。名は体を表す。長らく忘れられていた存在。しかし遺伝子に、恐るべき脅威、超常の生ける神として記憶されたもの。

2021-05-31 23:18:43
戦車 @MoterSensha

コーゾーが思わず叫んでしまったその名が、彼らに思い出させてしまったのだ。そして、ニンジャという存在に対し、およそ抵抗するすべを保たぬモータル、それも長らくニンジャの脅威と存在を忘れて久しい存在が、それを思い出せば、どうなるか。

2021-05-31 23:21:29
戦車 @MoterSensha

「アイエエエエエエエ!!!」「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」「コワイ!!」「アバーッ!! アバババーッ!!!」「オゴゴーッ!!」瞬時にして、司令部は混乱で満ち溢れた。

2021-05-31 23:22:09
戦車 @MoterSensha

50人以上詰めている司令部の全員が、一人残らずニンジャ・リアリティ・ショックを引き起こし、錯乱状態に陥ったのである!知るべきでない神秘を知ったと理解した本物の恐怖!

2021-05-31 23:22:19
戦車 @MoterSensha

ジエイタイの将軍は無論、おお、先程まであれほど理性的な表情を浮かべていたナオコ・アカギまでもがしめやかに失禁!本物のニンジャが齎す恐怖はこれほどなのか、とコーゾーは再び驚愕する。

2021-05-31 23:34:43
戦車 @MoterSensha

紙学問であったものが実体となり、理論上の幻想であったものが現実となる。紛いとはいえニンジャとなっていなければ、コーゾーもこの混乱と失禁の群れに混じっていたことであろう!

2021-05-31 23:34:56
戦車 @MoterSensha

無論ゲンドーにとりそのような状況など知るすべはない。トビゲリの反動で後方跳躍をかける。だが、サキエルがハヤイ!右腕が蛇めいて唸り、右手が空中のゲンドーの胴を掴んだ!

2021-05-31 23:40:43
戦車 @MoterSensha

すかさず、肘の裏より輝く長いパイルが、サキエルの背の方向へ伸びる!手のひらより射突されるそれは、空中のVTOLは勿論、重装甲の戦車すら容易に貫く速度と威力を誇る、実体を持つ高熱光学兵器とでもいうべき奇怪なる武器!即殺可能体制である!

2021-05-31 23:41:02
戦車 @MoterSensha

ALAS! 最早ゲンドーもこれまでなのか!? だが、おお……ゲンドー・イカリの目に恐怖はない。むしろ狂気すら感じるほどに澄み渡っており……その両目の瞳孔の奥、赤黒く燃える光がある!

2021-05-31 23:41:23
戦車 @MoterSensha

そして、ゲンドーは自由なる両手を自らの顔面の前で合わせ、深くオジギをした。

2021-05-31 23:41:47
戦車 @MoterSensha

「アイサツ……!」  コーゾーが思わず呻く!ニンジャが、戦いの前に行うという儀式!それは、コーゾーに取り、古代文献の文字列でしか目撃したことのないものである!彼とてかつては学究の徒であったものだ、目の前の神話的光景に息を飲まざるを得ない!

2021-05-31 23:42:07
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