シトスレイヤー第一話「第3新東京市炎上」より 「トキオ・スリー・イン・フレイム」

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戦車 @MoterSensha

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2021-05-31 20:04:46
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シトスレイヤー 第一話「第3新東京市炎上」 より  「トキオ・スリー・イン・フレイム」

2021-05-31 20:09:19
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(これまでのあらすじ) 秘密結社ゼーレの首魁であるキール・ローレンツは、シトスレイヤーのアンブッシュを受け捕縛、拷問を受け惨殺された。ヒューマン・インストゥルメンタリー・プロジェクトの片鱗を掴んだシトスレイヤーは、情報を元に日本の都市、トキオ・スリーへと向かったのだった。

2021-05-31 20:14:13
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ポーン。ズズズ。ヴーン。ポーン。電車が停まり、車内放送が響く。『現在、特別非常事態宣言発令中のため停車シマスドスエ。お客様は避難重点……』「シトだな」表情を隠すかの如くハンチング帽を目深にかぶり、トレンチコートを纏った顎髭の目立つ男は呟いた。奇遇なタイミングだ。男は列車を降りる。

2021-05-31 20:17:41
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パワーウーパワーウー。遠くから響く警報音を聞きながら、無人のホームを歩き、無人の改札を抜ける。皆避難したのか、タクシー乗り場のタクシーはいずれも無人。そして広場の何処にも人の気配は感じられなかった。放送では名をふせられていたものの、やはりシトが来たのだと男は確信する。

2021-05-31 20:21:30
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彼女に連絡した際、指定したベンチに腰掛ける。日差しが強い。この島から夏以外の季節が消えて15年になる。港街であるにも関わらず、流れてくる風に潮の香りは感じられなかった。セカンドインパクト以来、海の生物は雑菌に至るまで死滅している。無だ。故に、臭いなどあるはずもなかった。

2021-05-31 20:30:42
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待ち合わせ予定時間を過ぎたが20分待つ。都市を満たす警報音は止まぬ。誰も現れず、車一台通らない。皆退避壕に避難しているのだ。おそらく彼女は来るまい。相応の情報を与えたにせよ、彼女に取り信じがたい情報が多く、またこの都市はシト迎撃に忙しく、地位的に要職でもある。彼は状況判断した。

2021-05-31 20:35:36
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「手土産が要る」彼は呟いた。ブズーン。ブンズズーン。遠雷のような響きが、見下ろす湾口、その向こう側の海から響く。砲撃。この国の軍隊、ジエイタイという名の奇妙な組織がシトを迎撃しているのだ。「15年ぶりか」白く冷え切った過去の景色が脳裏を奔る。彼の呟きに答えるものは誰一人いない。

2021-05-31 20:42:14
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司令部は絶望の声で満たされていた。「戦車砲が効かない」「JDAM無効」 「大隊全滅ドスエ」「救難要請複数」「停電エリア増大な」SMACK!ジエイタイの将軍が、悲嘆の嵐に思わず机を叩く。「この程度の火力では埒があかん!国連の増援は何をしとる!」

2021-05-31 20:50:00
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司令部正面の巨大モニタの中、全身を黒いタイトスーツで包み、白い下面を付けたような、人に似て人とはかけ離れた異形の巨人が、全身でジエイタイの攻撃と爆発を浴びながら、まるで気にも止めていないように歩いている。第三シト、サキエル。それがその巨人の仮称である。

2021-05-31 20:54:52
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「やはりATフィールドか?」ネルフ総司令、コーゾー・フユツキは傍らの副司令、ナオコ・アカギに問うた。無論、ナオコは頭を横に振る。「使徒に対して、通常兵器では実際無理です。この国の弾薬が尽きたとしても、傷一つつけることはできないでしょう」

2021-05-31 20:57:37
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「ならば、容赦なく使うか」「はい。トキオを焼いてなお飽き足らない。人類の存亡のためならば、街などいくらでも犠牲にしてかまわないということなんでしょうね」FUCK、と彼女が小さく舌打ちするのをコーゾーは聞いた。

2021-05-31 21:03:12
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そして、その罵りに答えるように、モニタの中に重爆撃機B52、コールサイン『バンザイ』が現れ──そして、腹の下から何かを投下した。投下された物体は放物線を描いて巨人へ向かい、その周囲を取り囲んでいたVTOLの群れが、B52『バンザイ』もろとも我先に透過した物体から散り散りに逃げてゆく。

2021-05-31 21:09:31
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投擲された物体は、巨人の付近で突然輝きを発した。その輝きは急激に膨れ上がり、巨人を飲み込み。ZGGGGGGTOOOOOOOM!KRA-TOOOOOOOM!KABOOOOOOOM!DOOOOOM!DOOOOOM!DOOOOOOOOM!

2021-05-31 21:15:21
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一瞬司令部巨大モニタをホワイトアウトさせるほどの光量となる。発生した電磁パルスの影響で一時画像にノイズが奔るが、それもすぐに回復した。巨大な赤いきのこ雲が、巨大モニタに写しだされる。

2021-05-31 21:15:46
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「ヤッツケター! 」オペレーターの一人が思わずガッツポーズする。N2爆雷投下によって生じた巨大なクレーター、その中央に巨大な樹木のごとく聳えるキノコ雲の中に、巨人の姿を見て取ることはできなかった。「君たちの出番はなかったようだな」ジエイタイの将軍が、嫌味に満ちた目でコーゾーを見た。

2021-05-31 21:22:36
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だが、むしろコーゾーは憐れむように首を振った。一瞬怒りを浮かべた将軍が、しかし正面モニタを見て驚愕する。キノコ雲の只中から、緩やかに歩み出る黒い巨人の姿が見えた。表面こそ融解した形跡はあったものの、おそらく有効なダメージは与えられていまい。

2021-05-31 21:26:17
戦車 @MoterSensha

「ヌゥウーッッ!一発で効かんというなら、二発でも三発でも叩き込むまでだ!二番機『ヨロコビ』、続いて投弾!」なお諦めきれぬかのように、将軍が後続のB52『ヨロコビ』へN2爆雷の再投弾を命じる。「急いだヒキャクがカロウシしたというコトワザを知らないのかしら」ナオコが罵る。

2021-05-31 21:30:29
戦車 @MoterSensha

無論、聞く耳を持つまい、とコーゾーは思っているが、声には出さない。この状況にあたって、コーゾー率いるネルフはシト邀撃の指揮権を握り得る状況であった。しかし、肝心の攻撃手段がない。攻撃手段たる汎用人型決戦兵器、エヴァンゲリオンが使用不能なのだ。

2021-05-31 21:35:37
戦車 @MoterSensha

一週間前、エヴァンゲリオン初号機の起動実験が行われたが、その起動実験時に初号機が暴走、施設を散々破壊した挙げ句停止。パイロットはエントリープラグにより脱出したもののプラグが壁面に衝突、全治二ヶ月の重傷を負っていた。脾臓破裂。到底戦闘できる状態ではない。

2021-05-31 21:42:22
戦車 @MoterSensha

「歯がゆいな。人が暮らしていた街を、無意味な攻撃で破壊せねばならんというのは。ヨーロッパより緊急移送中の弐号機はどうなっている」「作戦可能位置に到達するまで、あと3時間はかかります」ナオコの答えに、コーゾーは頭を振った。「この都市が焼け野原になるのに充分な時間だ」

2021-05-31 21:42:38
戦車 @MoterSensha

「ヤッチマエー!」「ズガタッキェー! 」「ナンオラー!」「ヒカエオラー!」これまでの攻撃がほぼ無効であったのに対し、少なくともN2爆雷が表面を融解させたことに期待を持ったのだろう。参謀や将軍、オペレーターたちがモニタの中を突進する『ヨロコビ』へ声援らしき声を贈る。

2021-05-31 21:49:14
戦車 @MoterSensha

バカバカしいとコーゾーが内心思った直後、『ヨロコビ』の一番エンジンが突如停止した。続いて二番、三番、四番も停止。緩やかに右方向へ頭を垂れるように『ヨロコビ』はシトの目前へ落ちてゆき、砕け散った。コーゾーが瞠目する。将軍が不満も顕に叫んだ。「故障!整備のサボタージュ!責任問題だ!」

2021-05-31 21:49:45
戦車 @MoterSensha

「し、しかし4発同時に停止など……攻撃もなく……」「ダマラッシェー!!」オペレーターの言葉に、将軍は怒りを隠そうともせず、喚き散らす。だが、コーゾーにとって最早そのようなことは、どうでも良かった。

2021-05-31 21:59:47
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