「モラルハラスメント」「モラ」は単なる罵倒語で、法律的な意味はない ーー裁判例の紹介
- kyoshimine
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ネットで、精神的虐待をする夫を「モラ夫」「モラハラ」等と呼ぶことがかなり増えていた。 しかし、モラルハラスメントとは、自己愛性パーソナリティ障害という精神疾患に関連した特徴的な現象を指すようである(確立してるか不明)。 こういう記事は学術的批判が必要では。 bengo4.com/c_3/n_13140/
2021-06-08 15:30:44私が判例検索で調べたところ、モラルハラスメントが登場する裁判例は60件程度あった。 いずれも暴力はないが精神的に酷い目にあっていると主張したい場合に、相手を批判するために当事者の主張として使われていた。 裁判所は使わない言葉で、必要があればまれに「精神的虐待」と認定していた。
2021-06-08 15:32:42それから、労働関係で、例えば「A社にはモラルハラスメントがある」という趣旨の言論が名誉毀損に該当する不法行為だと主張されるといった名誉毀損訴訟も、かなりの数を占めていた。 なお、もともとモラルハラスメントは、夫婦関係と労働環境における現象を説明する概念として主張されている。
2021-06-08 15:40:27例えば、東京地判令和2年6月4日・令元(ワ)14632号 不貞の慰謝料請求で、原告が被告を批判するためのレトリックとして、「モラルハラスメント」を持ち出している。 もちろん、原告主張はモラハラの概念、鑑定による判断などは全くない単なる悪口のようなものなので、裁判所は相手にせず、認定しない。 pic.twitter.com/GFdjaG99Tz
2021-06-08 15:49:58東京地判令和元年11月12日・平29(ワ)33094号 これも不貞の慰謝料請求だが、「不貞したときは、モラハラなどで婚姻関係は破綻していた」と弁解を出したが、根拠がないので裁判所に否定している。 pic.twitter.com/Grgv8LqKzY
2021-06-08 16:12:17東京地判令和元年9月10日平30(ワ)11154号 「いわゆるモラルハラスメント行為」を裁判所が認めている。 認定事実は ①「キチガイ」「死ね」「子供をおろせ」等の日常的暴言 ②愛犬への虐待 ③離婚歴についての嘘 であり、不法行為が認定された。モラハラは関係なさそうで、「いわゆる」がついている。 pic.twitter.com/aykZUbwLao
2021-06-08 16:36:58①の暴言行為が「いわゆるモラルハラスメント」と認定されている。 これに対し、②の愛犬虐待は、「(犬)を段ボール箱に入れたり,(犬)の口に指を突っ込んだりする嫌悪刺激」と認定されているが(添付)、モラハラの判断では触れられず、③はモラハラに認定されていない。 pic.twitter.com/Whg7MmMrKc
2021-06-08 16:45:15被告の不法行為は、別紙1に原告の主張が、別紙2に被告の反論が長々とまとめられている。 これは読んでいると胸クソが悪くなるほど酷いもので、モラハラがどうとかいうレベルではない。ただし、原告に対する有形力としての暴力はなかったようで、ゆえに暴力とは言えず、モラハラが主張されたのだろう。
2021-06-08 16:48:31判決文には「モラルハラスメント」の言葉が出ているものの、これはモラハラにあたりそうにないし、モラハラと関係なく問題なく不法行為が認められる事例(ただ、物理的暴力がないだけ)。 モラハラは争点になっていないし、その概念は判断に必要ではない。主張があるので、「いわゆる」と書いただけ。
2021-06-08 17:05:24東京地判平成31年4月16・平30(ワ)20295号 不貞発覚後に「ぼくもモラハラで苦しかった」との主張があっただけ。 東京地判平成31年3月27日・平30(ワ)224号 不貞時点で婚姻関係が破綻していなかったが、「モラハラも暴力もなかったので、問題なかった」という趣旨の主張に対し、形骸化してたと認定。 pic.twitter.com/W97tLXmuHT
2021-06-08 17:40:59東京地判平成31年3月20日・平30(ワ)22737号 離婚後に、妻が、離婚の原因は夫(僧侶)のモラルハラスメントだと主張し、それが不法行為と認められなかった事例。 夫の「ばかやろう」「いい加減にしろ」といった暴言がありましたが、「不適切な言動」とされて、モラハラとは認定されていません。 pic.twitter.com/3KcpYYFyMf
2021-06-08 18:48:14以上はWestlawというデータベースシステムの「モラルハラスメント」59件のヒットのうち、20件から参考になる裁判例を拾ったものです。 学術論文だったら、もっと仔細に検討する必要がありますが、だいたいの傾向は分かると思います。また、それは、まともな弁護士なら概ね分かっていることです。
2021-06-08 19:42:18それは「モラルハラスメント」「モラハラ」という言葉は、裁判で物理的暴力がない相手を批判するために常用される言葉で、現時点では裁判所の判断には関係がない(原則無視される)ということです。 法律的意味は全くないし、「精神的虐待」と言えばすみますから、この外来語を使う必要性はゼロです。
2021-06-08 20:06:20「モラ」「モラ臭」「モラハラ」みたいな言葉は、私は、ネットスラングみたいなものだと認識していました。 ただ、不思議なことに弁護士、しかも人権意識が高いと自他ともに認めるような方が、平気で使う。私は、法学分野では出てこないし、「いわゆる」をつけずに使うことが信じられなかった。 twitter.com/kyoshimine/sta…
2021-06-08 22:49:03ネットで使われる「モラ」を帰納すると、ダブルバインドのような意味が含まれているらしい。そこで、宇崎ちゃんが前後矛盾した主張で批判されていたときに、「これはモラハラっぽい」と使いたいと思ったことがある。 それでも、怪しげなスラングを使うつもりには、どうしてもなれなかった。
2021-06-08 22:51:22かといって、モラハラの概念を勉強しようとは思えず、当時はそのまま放っておいたが、モラハラに関する書籍を読んで、裁判例を調べると、やはり当初の仮説は正しいことが分かった。 なるほどやはりねと思ったところ、スラングが立派な連載のタイトルに出てきて驚愕した次第。 twitter.com/kyoshimine/sta…
2021-06-08 22:52:54これは仮説というか、従来から疑問に思っていることなんだけど、「モラル・ハラスメント」って概念、学問的に確立してないんではなかろうか。 そして、「モラ」とか「モラ夫」とか弁護士も盛んに使っているけれど、学問的な基盤がないため、単なる罵倒語になってしまっているように感じることが多い。
2019-07-30 13:55:42私はこの連載を許しません。 弁護士ドットコム @bengo4_com には期待してるんだ。なにを筋の悪いことをやってるんだ。
2021-06-08 22:55:17あわせて、無批判に「モラハラ」を使っていた心ある弁護士には、猛省を求める。 あなたたちは、精神疾患と関連した術語を、勉強せずに相手方批判のための武器として使うような愚か者ではないはずだ。
2021-06-08 22:56:45ちょっと休憩します。 あとは、なぜモラハラという外来語が、精神医学のせの字もしらないような弁護士に盛んに濫用されるのかという分析。セクハラやヘイトスピーチとの比較。 それから連載の著者大貫弁護士について。 このツリーの背景については以下参照。 twitter.com/kyoshimine/sta…
2021-06-08 23:01:28ご参考 twitter.com/jimokujiimajuk…
2021-06-08 23:02:57モラルハラスメントも、逆に片親疎外も裁判所は認定したがらないので、具体的事実を主張立証する様に心がけています。どうも2つとも、使うと主張が苦しい印象を与えてしまう気がします。 twitter.com/kyoshimine/sta…
2021-06-08 22:43:57後日談
忘れていたんだけど、「意味が確立していないモラハラ概念を弁護士が安易に使うな」というまとめを作っていて、通じるところがあるな。 最近は弁護士が「モラハラ」を濫用するのを見るのは、減った気がする。 togetter.com/li/1728301
2021-11-26 00:22:10なお、大貫弁護士の連載「モラ夫バスター弁護日誌」はぽしゃったようですね。 6月の初回を受けて私がまとめで批判したのですが、その後、連載の看板を使わない単発記事を2個書いて、そのままになっている。 twitter.com/bengo4topics/s…
2021-11-26 00:25:50弁護士歴33年の大貫憲介弁護士による新コラム「モラ夫バスター弁護日誌」が始まります。 大貫弁護士が目の当たりにした離婚事件を元に、モラハラ夫とは何か、その呪縛から逃れるためにはどうすればいいのか、連載で読み解いていきます。 bengo4.com/c_3/n_13140/
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