2021年6月10日

「モラルハラスメント」「モラ」は単なる罵倒語で、法律的な意味はない ーー裁判例の紹介

弁護士ドットコムが大貫憲介弁護士の連載「モラ夫バスター弁護日誌」を開始しました。しかし、そもそも「モラルハラスメント」という用語自体に疑義があり、上記連載は学術的に批判されるべきです。
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

ネットで、精神的虐待をする夫を「モラ夫」「モラハラ」等と呼ぶことがかなり増えていた。 しかし、モラルハラスメントとは、自己愛性パーソナリティ障害という精神疾患に関連した特徴的な現象を指すようである(確立してるか不明)。 こういう記事は学術的批判が必要では。 bengo4.com/c_3/n_13140/

2021-06-08 15:30:44
リンク 弁護士ドットコム 「家庭内痴漢」されても、子のため離婚を我慢する女性…「モラハラ夫」の起源を考える 弁護士歴33年の大ベテラン、大貫憲介弁護士による新コラム「モラ夫バスター弁護日誌」が始まります。国内外問わず、年間平均100件の離婚事件を担当してきた大貫弁護士。「モラハラ夫」が多数存在していることに... 2 users
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

私が判例検索で調べたところ、モラルハラスメントが登場する裁判例は60件程度あった。 いずれも暴力はないが精神的に酷い目にあっていると主張したい場合に、相手を批判するために当事者の主張として使われていた。 裁判所は使わない言葉で、必要があればまれに「精神的虐待」と認定していた。

2021-06-08 15:32:42
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

それから、労働関係で、例えば「A社にはモラルハラスメントがある」という趣旨の言論が名誉毀損に該当する不法行為だと主張されるといった名誉毀損訴訟も、かなりの数を占めていた。 なお、もともとモラルハラスメントは、夫婦関係と労働環境における現象を説明する概念として主張されている。

2021-06-08 15:40:27
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

例えば、東京地判令和2年6月4日・令元(ワ)14632号 不貞の慰謝料請求で、原告が被告を批判するためのレトリックとして、「モラルハラスメント」を持ち出している。 もちろん、原告主張はモラハラの概念、鑑定による判断などは全くない単なる悪口のようなものなので、裁判所は相手にせず、認定しない。 pic.twitter.com/GFdjaG99Tz

2021-06-08 15:49:58
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

東京地判令和元年11月12日・平29(ワ)33094号 これも不貞の慰謝料請求だが、「不貞したときは、モラハラなどで婚姻関係は破綻していた」と弁解を出したが、根拠がないので裁判所に否定している。 pic.twitter.com/Grgv8LqKzY

2021-06-08 16:12:17
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

東京地判令和元年9月10日平30(ワ)11154号 「いわゆるモラルハラスメント行為」を裁判所が認めている。 認定事実は ①「キチガイ」「死ね」「子供をおろせ」等の日常的暴言 ②愛犬への虐待 ③離婚歴についての嘘 であり、不法行為が認定された。モラハラは関係なさそうで、「いわゆる」がついている。 pic.twitter.com/aykZUbwLao

2021-06-08 16:36:58
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

①の暴言行為が「いわゆるモラルハラスメント」と認定されている。 これに対し、②の愛犬虐待は、「(犬)を段ボール箱に入れたり,(犬)の口に指を突っ込んだりする嫌悪刺激」と認定されているが(添付)、モラハラの判断では触れられず、③はモラハラに認定されていない。 pic.twitter.com/Whg7MmMrKc

2021-06-08 16:45:15
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

被告の不法行為は、別紙1に原告の主張が、別紙2に被告の反論が長々とまとめられている。 これは読んでいると胸クソが悪くなるほど酷いもので、モラハラがどうとかいうレベルではない。ただし、原告に対する有形力としての暴力はなかったようで、ゆえに暴力とは言えず、モラハラが主張されたのだろう。

2021-06-08 16:48:31
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

判決文には「モラルハラスメント」の言葉が出ているものの、これはモラハラにあたりそうにないし、モラハラと関係なく問題なく不法行為が認められる事例(ただ、物理的暴力がないだけ)。 モラハラは争点になっていないし、その概念は判断に必要ではない。主張があるので、「いわゆる」と書いただけ。

2021-06-08 17:05:24
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

東京地判平成31年4月16・平30(ワ)20295号 不貞発覚後に「ぼくもモラハラで苦しかった」との主張があっただけ。 東京地判平成31年3月27日・平30(ワ)224号 不貞時点で婚姻関係が破綻していなかったが、「モラハラも暴力もなかったので、問題なかった」という趣旨の主張に対し、形骸化してたと認定。 pic.twitter.com/W97tLXmuHT

2021-06-08 17:40:59
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

東京地判平成31年3月20日・平30(ワ)22737号 離婚後に、妻が、離婚の原因は夫(僧侶)のモラルハラスメントだと主張し、それが不法行為と認められなかった事例。 夫の「ばかやろう」「いい加減にしろ」といった暴言がありましたが、「不適切な言動」とされて、モラハラとは認定されていません。 pic.twitter.com/3KcpYYFyMf

2021-06-08 18:48:14
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弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

以上はWestlawというデータベースシステムの「モラルハラスメント」59件のヒットのうち、20件から参考になる裁判例を拾ったものです。 学術論文だったら、もっと仔細に検討する必要がありますが、だいたいの傾向は分かると思います。また、それは、まともな弁護士なら概ね分かっていることです。

2021-06-08 19:42:18
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

それは「モラルハラスメント」「モラハラ」という言葉は、裁判で物理的暴力がない相手を批判するために常用される言葉で、現時点では裁判所の判断には関係がない(原則無視される)ということです。 法律的意味は全くないし、「精神的虐待」と言えばすみますから、この外来語を使う必要性はゼロです。

2021-06-08 20:06:20
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

「モラ」「モラ臭」「モラハラ」みたいな言葉は、私は、ネットスラングみたいなものだと認識していました。 ただ、不思議なことに弁護士、しかも人権意識が高いと自他ともに認めるような方が、平気で使う。私は、法学分野では出てこないし、「いわゆる」をつけずに使うことが信じられなかった。 twitter.com/kyoshimine/sta…

2021-06-08 22:49:03
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

ネットで使われる「モラ」を帰納すると、ダブルバインドのような意味が含まれているらしい。そこで、宇崎ちゃんが前後矛盾した主張で批判されていたときに、「これはモラハラっぽい」と使いたいと思ったことがある。 それでも、怪しげなスラングを使うつもりには、どうしてもなれなかった。

2021-06-08 22:51:22
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

かといって、モラハラの概念を勉強しようとは思えず、当時はそのまま放っておいたが、モラハラに関する書籍を読んで、裁判例を調べると、やはり当初の仮説は正しいことが分かった。 なるほどやはりねと思ったところ、スラングが立派な連載のタイトルに出てきて驚愕した次第。 twitter.com/kyoshimine/sta…

2021-06-08 22:52:54
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

私はこの連載を許しません。 弁護士ドットコム @bengo4_com には期待してるんだ。なにを筋の悪いことをやってるんだ。

2021-06-08 22:55:17
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

あわせて、無批判に「モラハラ」を使っていた心ある弁護士には、猛省を求める。 あなたたちは、精神疾患と関連した術語を、勉強せずに相手方批判のための武器として使うような愚か者ではないはずだ。

2021-06-08 22:56:45
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine

ちょっと休憩します。 あとは、なぜモラハラという外来語が、精神医学のせの字もしらないような弁護士に盛んに濫用されるのかという分析。セクハラやヘイトスピーチとの比較。 それから連載の著者大貫弁護士について。 このツリーの背景については以下参照。 twitter.com/kyoshimine/sta…

2021-06-08 23:01:28

コメント

はよ TOKYO 2020-21 @hayohater 2021年6月11日
ぼんやりとしたニュアンスで推測でしか言えなくてすみませんが、「モラルハラスメント」というのは一見「正義」「正論」(っぽく見える何か)を前面に押し出して相手に反論させず結局自分の要求が道徳的に正しいかのようにして相手の嫌がる・気の向かないことをさせる、ってことなんだろうと思っていましたが、先生が例示するように最近の用例はほぼ「精神的虐待」「言葉の暴力」で済んでしまいそうですね。
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inti @inti87913544 2021年6月11日
アダルトチルドレン。あれも確か元々は親がアルコール依存等の機能不全家庭で育った事を指す用語じゃなかったかな。まぁ、漠然と便利な語だから使うんだろうね。自戒を込めて。
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はるを待ちかねた人でなし @hallow_haruwo 2021年6月11日
既存の概念だと隙間になって取りこぼされがちな問題課題に誰かが名を付けて取り上げたのが、広まりひとり歩きしてあれもこれも取り込んでなんか漠然とした言葉やバラバラな用法になるあるある。
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sleepy banana @nemure_nemure_ 2021年6月12日
inti87913544 Adult children of alchoholicsで「かつてアルコール中毒者の子供だった人の成人後」って意味ですね。ofから後ろが切り捨てられて、全然違う意味になった
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