プロローグ

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

弟は月夜の柄が入った枕を手に取ってから、ふわりと浮かんで兄の後を追った。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

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＿＿＿の箱庭 @kami_bake

眼前に、読破した本の山。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

その山の上に、もう一冊重ね置けば、ついにそれは彼女の背丈を越した。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

＿＿そろそろ新しい本もらうべきだな。 などと独り言ちて、ぐぐ、と凝り固まった背を伸ばした。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

ポキ、だのゴキ、だの、漸く楽になったと言わんばかりの軽い音が、骨を伝って聞こえてくる。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

…人間の身体を模したソレ。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

わざわざその内側まで似せる必要もなかったろうに、とどうでもいいことを思考した。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

内臓も、骨も、血も。そこに在るように作られてはいるが、無いも同然であることに一体どれほどの神が気が付いているのだろう。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

あってもなくても、負の感情に苛まれてしまえば使い物にならない。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

…そう、そもそも根本的に人とは在り方が……肉体でないから、魂というべきか。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

…そう、魂の在り方が違うのだから、外側だけ似せたところで……

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

そこまで思考して、我に返った。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

ああ、これだから。これだから暇なんてものはいけないんだ。いらないことまで考えてしまう。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

＿＿そも、自身が一番暇を持て余した存在であることを棚上げして、彼女はひとつ、決意した。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

「よし、昼寝しよう」

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

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＿＿＿の箱庭 @kami_bake

箱庭の青空で、たったひとつ。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

誰から光を受けるでもなく、煌々と輝く球体。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

人の世では、＿＿正確には、少し異なるが。 それを、『月』と呼ぶらしい。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

ただし、箱庭から眺められるそれは、地球でみるそれよりも遥かに存在感を持っており、壮麗である。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

＿＿美しき箱庭の月は、箱庭の付属品でもなければ装飾品でもない。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

此処もまた、神の住まう土地である。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

箱庭のどこよりも、暗く寒い場所。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

それこそが、『月』。