連続小説【闇の雨】

140字小説にして断片のシーンごとにツイートしたものをまとめました。 最初から物語を読むことができます。 是非お楽しみくださーい! ヾ(´∀`*)ノ
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「何故貴方なの?」彼女の悲痛な叫び。皮肉な運命を呪いたくなる。彼女が望んでいるのは……。「ごめん」白い病室のなか彼女の時は止まっている。彼女の腕にはいくつもの細い線。俺は心を抉る事しかできない。 闇の雨。酒と煙草で自嘲を慰める。沁みる音色。光を許されない雨だけが俺に降り続ける。

2021-05-25 16:43:14
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溜め息のように雨。 適当な女と安っぽい快楽を貪る。 「俺、人殺しなんだ」 女の顔が凍りつく。 「なんてな。冗談だよ」 女はヘラヘラした笑顔に戻って、俺の背中をバンバン叩いた。 下品な光のなかに女が消えていく。 煙る荒廃の街 『お前は人殺しだよ』 冷笑する月の呟き 明白な罪 「……だよな」

2021-05-27 00:12:33
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「何でだ」俺が来ると必ず出されるカクテル。ラスティネイル「渡したよな」……「何で使わないんだよ」アイツの弟は無言で次のカクテルを作る。シャンディガフ。「またか」お決まりの流れ。俺の意に反するカクテルばかり飲ませやがる。苦痛を味わいたい俺にラスティネイルは、それこそ無駄なんだよ。

2021-05-29 00:14:46
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「あの時一緒についていけば良かった」彼女の後悔が沁みる。「そしたら私も……」それは彼女が一番望むこと。そして俺が一番望まないことだ。「それは違うよ」彼女が俺を見る。「俺が行けば良かったんだ」彼女は否定も肯定もしない。ただ唇を噛みしめる。必死に言葉が吐露するのを我慢するように……。

2021-05-29 20:53:46
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『僕が買ってくるよ』 あの日は激しい雨だったんだ。俺は体調不良で全てが億劫だった。だから……否、それだけじゃない。俺はただ彼女と二人きりになれる口実が欲しかったんだ。だから陳腐な芝居までして彼女を……。『じゃあ行ってくる』最期の優しい笑顔。 数十分後。 雨のなか、罪と罰が産まれた。

2021-05-30 06:00:25
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「これ返します」バーカウンターに置かれる小瓶。「中身は処分しました」俺は諦観の溜め息をついた。「生きて苦しめって事か」ケイタが深い溜め息をつく。そしてノートのようなものをカウンターの上に。「兄の日記です」「日記?」「貴方は大きな勘違いをしてる」「え?」「これは、兄の懺悔です」

2021-06-11 06:16:47
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#連続小説Y闇の雨 まさに青天の霹靂だった。雷に撃たれたような衝撃……。日記の内容をちゃんと理解し受け止めるには、まだ時間がかかりそうだ。愕然とする俺にケイタが口を開いた。 「あの事故の前日兄が店に来たんです」「え?」 「その時兄が言ってました」 「…」 「彼女とは別れるつもりだって」

2021-06-16 10:51:55
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#連続小説Y闇の雨 「彼女を解放してあげるつもりだって」 「……解放?」 「はい。確かに兄はそう言っていました」 日記にもそんな事が書いてあった気がする。 「もう気づいてると思いますが」 「……」 「彼女のイクミさんが本当に愛していたのは」 「……」 「貴方です」 灰の空が割れる音がした。

2021-06-17 22:38:53
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俺はどうしても信じられなかった。未だ放心状態のままだった。まさに天変地異だ。まさかそんなはず……。じゃあ、あのイクミの言葉は一体……。全てが俺の勘違いだったって言うのか?そんな馬鹿な……。 「この日記を読んで思ったんです」 「……」 「もしかしたら兄は自殺だったんじゃないかと」

2021-06-18 04:12:08
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「自殺……まさか」 「真相はわかりません。でも兄が二人への罪悪感に苦しんでいたのは事実です」 日記の内容は、ハルトの罪と苦悩を痛烈に吐露していた。あの闇の雨の中うまれた罪と罰は、他にも存在していたのか。闇の雨は全ての真実を見えなくしてしまった。 「やっぱり憎んでたのかもしれない」

2021-06-18 10:39:46
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「すぐに兄の日記を見せていれば少なくとも貴方はここまで苦しまなくてもすんだはずです。でも俺はそうしなかった。そうしたくなかった」 「……そうか」 「日記の存在を隠したのは僕の罪です」 「どうして俺にこれを?」 ケイタが小瓶を見つめた。 「貴方にまで死なれちゃ困るから」 俺は苦笑した。

2021-06-18 11:14:25
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「私が悪いの」イクミはハルトの日記の存在を知っていた。「私がハルトをちゃんと愛せなかったから」「イクミ……」「私がハルトを追いつめてしまったの」彼女が顔を覆う。 「何で貴方なの?」 「……」 「何でハルトじゃなくて貴方だったの?」 俺の闇の雨と彼女の嗚咽が、今明確に重なった。

2021-06-19 08:46:48