- eguchi2020
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第4点として、最高裁昭和60年10月23日判決・刑集39巻6号413頁(courts.go.jp/app/files/hanr…)は、18歳以上の者と小学校就学の始期から満18歳に達するまでの者(他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除く)との性行為一般を処罰対象とするのは広すぎるが、
2021-03-02 21:09:45青少年を誘惑・威迫・欺罔しor困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交・性交類似行為及び青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交・性交類似行為と解するなら処罰範囲が不当に広過ぎるとはいえない等としたものですが、
2021-03-02 21:09:46この最高裁判決を裏から見れば、(法定強制性交等罪や児童福祉法34条1項六号違反等となるものは別として)18歳以上の者と18歳未満の者との性行為のうち上記2類型のいずれにも該当しない性行為(特に婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為)まで
2021-03-02 21:09:46処罰対象とするのは処罰範囲が不当に広すぎるということになると思いますが、改正案178条の3第3項は13歳以上16歳未満の者の心身の未成熟に乗じた不当な手段を用いたことは要件となっておらず、また、
2021-03-02 21:09:46性交等又は手淫等が13歳以上16歳未満の者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものであることも要件となっていないため、
2021-03-02 21:09:4718歳以上の者と13歳以上16歳未満の者との性交等又は手淫等は、例えば18歳の者と婚約中又はこれに準ずる真摯な交際関係にある15歳11ヶ月の者との間で行われたような場合であっても、
2021-03-02 21:09:47「例外なく常に」単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものと評価されるというならともかく(私はそのような評価は明らかに不当だと思いますが)、
2021-03-02 21:09:47そうでなければ処罰範囲に上記2類型のいずれにも該当しない場合を含むことになり処罰範囲が不当に広すぎるということになると思いますが、提言はこの点についてどのように考えたのかが明らかではありません。
2021-03-02 21:09:48第5点として、改正案178条の3第3項は、13歳の者は4年11ヶ月年上である17歳11ヶ月の者との関係で有効な同意をすることができる一方で、15歳11ヶ月の者は2年1ヶ月年上である18歳の者との関係で有効な同意をすることができないということを前提とするわけですが、
2021-03-03 22:35:46上記5点のうち、第3点の、18歳の高校3年生と15歳何ヶ月の高校1年生の場合における2年を少し超える程度の年齢差は、15歳何ヶ月の者の同意を法的に無意味なものとして18歳の者に刑罰を科すことを正当化し得るほどの差なのかについては個々人の考えというか評価の問題ではありますが、
2021-03-04 22:31:37第2点の、例えば15歳のAは2年6ヶ月年上である17歳6ヶ月のBとの関係で有効な同意をなし得るのに、それから6ヶ月経過してAが15歳6ヶ月になったとき2年6ヶ月年上であることは変わらない18歳のBとの関係で有効な同意をすることができなくなるということを妥当とする理由は何か、
2021-03-04 22:31:37第1点の、年上の者に精神的な障害などがあり実際の(精神的)成熟度はもっと下の年齢相当である場合であってもそれを考慮することなく当事者の年齢だけで判断するという内容の案を採用した理由は何か、
2021-03-04 22:31:38第4点の、例えば性交等or手淫等が18歳の者と婚約中又はこれに準ずる真摯な交際関係にある15歳11ヶ月の者との間で不当な手段が用いられることなく行われたような場合であっても、そのような関係にあることは考慮することなく当事者の年齢だけで判断するという内容の案を採用した理由は何か、
2021-03-04 22:31:3813歳の者は4年11ヶ月年上である17歳11ヶ月の者との関係で有効な同意をすることができる一方で、15歳11ヶ月の者は2年1ヶ月年上である18歳の者との関係で有効な同意をすることができないとする理由は何か、が提言には書かれていないわけで、改正案のこの部分には説得力がありません。
2021-03-04 22:31:39「刑法典における性犯罪規定の改正案についての提言」(lgcj.tokyo/%e5%88%91%e6%b…)のうち評価できない箇所2ヶ所目は改正案178条の3第1項で、この提言の改正案は全体としては外国法の条文を継ぎ接ぎしたうえで改悪したようなものではありませんが、
2021-03-09 23:06:23改正案178条の3第1項に関しては、基本的にドイツ刑法177条1項(gesetze-im-internet.de/stgb/__177.html)で用いられている、意味が明確でない文言(「gegen den erkennbaren Willen」)を訳したうえでそのまま持ってきただけのものというしかありません。
2021-03-09 23:06:23しかも、ドイツ刑法177条1項については立法時のドイツ連邦議会の文書(dipbt.bundestag.de/dip21/btd/18/0…)の22~23頁を見ると、法案はいわゆる"No means No"の考えを取り入れているとか、
2021-03-09 23:06:24反対の意思は、被害者がそれを犯罪時に明示的に(口頭で)表明するか暗黙的に(例えば性的行為に対して反抗することや泣くことによって)表現する場合、認識可能であるとか、被害者の意思が曖昧である事例はこの規定によってとらえられないといったこと等が記述されていますし、
2021-03-09 23:06:24ドイツ連邦通常裁判所2018年12月4日判決(juris.bundesgerichtshof.de/cgi-bin/rechts…。PDF以外ならopenjur.de/u/2135414.html)のような判例もありますが、提言の記述からはこのようなドイツにおける立法者意思や判例まで含めて取り入れようとしているのか条文の文言だけ取り入れたのか明らかではありませんし、
2021-03-09 23:06:24改正案178条の3第1項における「認識することができる人の意思」とは具体的にどのようなものなのかということについて、提言には前述したドイツ連邦議会の文書のような説明もありません。
2021-03-09 23:06:25具体的な説明がありませんので、具体的な説明を前提としてその通りに解釈した場合の問題点という形ではなく、「認識することができる人の意思」という文言はどのように解釈することが可能であるか、そしてそのような解釈が採用された場合の問題点という形での批判になりますが、
2021-03-12 19:59:32