![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
父は生まれてから一度として自分の意のままにならないことはなかった、だから自分の息子のりょーまに優しく接することができた、だけども、なぜかりょーまの母もりょーまも自分の意のままにならなかった、我が子は自分と同じアルファで分身だ、
2021-09-05 04:04:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
だから、自分の意のままになるはずだった、自分の選んだ最上級のオメガの腹から生まれてくる子もアルファのはずだった、全ては『だった』という予想だ。 なぜ、こうも上手く事が進まない、なぜ?なぜだ?どうして?こんなことなかった、どこから間違ったどこから…、
2021-09-05 04:04:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「お前がいるからだ!!ど底辺で下劣なオメガ!!」 父がいぞーに憎しみの目を向け指をさした。 「お前さえいなければ計画は狂わなかった!!お前がりょーまに出会ったから!!お前がりょーまを誑かしたから!!お前さえいなければりょーまは、私の思う通りの理想の息子なった!!
2021-09-05 04:04:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
だから、この場で死ね!!やれ!!あいつを!!」 狂ったように叫ぶ父の言葉にいぞーの腕を掴み体を入れ替えようとする、りょーまが前面に出れば…。 「りょーま、」 その顔は、とても柔らかな声と顔だ。 「おまん、わしと死ねるかえ」
2021-09-05 04:04:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
銃口がいぞーに向けられる中でなんて柔らかな顔だろう声だろう、懐かしい…まだお互い純粋でいたあの頃のようだ。 「おりょーさんとけーきちには悪いけど、僕は、いぞーさんとなら一緒に死ねる」 だからりょーまもこの場ににつかわしくない顔で微笑む。 「なら、わしと一緒に行くぜよ」
2021-09-05 04:04:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
りょーまの掴んだ手を払い逆に腕を掴み窓から二人で飛び出す。 もう父もそんなりょーまを捕まえようとは思っていないのだろう、子供などまた別のオメガに産ませればいいと大声をあげ二人まとめて始末しろと叫んだのだ。
2021-09-05 04:04:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
逃げても逃げても追っては来る息が切れるまで二人で走った、だが、その実、深手を負っていたのは…。 「もう、ここまでじゃの」 月も照らさぬ寂れたスラム街、そこにあるのはドブ臭い川。
2021-09-05 04:04:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そこで生きられなくなった人間、絶望した人間が身を投じる、そして運が良ければ遺体くらいはあがるが、その遺体もあがったとしてもそこらに投げ捨てられるか処理場にゴミと一緒にされ焼かれるしかなかった。 そんな末路しか残っていない。
2021-09-05 04:04:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「おりょーは、しょぶんのジジイが引き取った、やき、大丈夫じゃ」 「そっか」 「けーきちもそこにおる」 だから、あとは自分達、自分達がいなければ…。 「にゃあ、りょーま、次があるなら、わしの言葉…聞いてくれんかえ」 いぞーの腹部からじわりとシミができる。
2021-09-05 04:04:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
けーきちを連れ必死で逃げた時に脇腹を裂かれていたのだ、それをしょぶんのところにあった包帯でがちがちに固めて治療などせず飛び出そうとしたところへおりょーが来た。
2021-09-05 04:04:42![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
あの短時間でおりょーがいぞーを見つけることなど不可能に近いはずなのにそれができたということは、よほどの不測の事態と…そして、最後にはいぞーがここに来るだろうと誰かが予測をたてていたとしか考えられかった。
2021-09-05 04:04:43![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そしてそれは当たった、おりょーは、いぞーに助けを求めた、りょーまの命を、と…。 今のりょーまの父親は危険だと考えが甘かったと…それを聞いて場所を言われておりょーの治療も任せて飛び出したのだ。 「嫌になるほど聞かせてよ」 「長い話になるぜよ」
2021-09-05 04:04:43![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「いいよ、たくさん話をしよう、いぞーさんが隠してること僕に言わなかったこと、全部教えて聞かせて」 鉛弾が二人に何発も嵐のように向かってくる。 いぞーを庇おうとした、けども…、また体を変えられてしまう、体ごとそして大事な頭部を自分の胸に庇いこみ川の中に飛び込んだ。
2021-09-05 04:05:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ライトを向けろ!!」 大量のライトが川に向かって照らされる。 ゆらりと動く水面に紅い糸のような細い線がじわりじわりと広がる。 「おい、一応、もっとぶち込んどけよ」 のんびりとした声が合間から聞こえる。
2021-09-05 04:05:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ま、一応、念のためってことよ、そこらの魚でも万が一でもいてみなよ、また首をばさって落とされちゃうかもだろ、そんなの嫌だろ」 間延びしたような声でへらりとした顔でなんでもないことのように男が引き金を引き、六発、また鉛弾が川の中にぶちこまれれば川が真っ赤な色で染まった。
2021-09-05 04:05:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ばらっ…たん…とん…っと音をたて使えなくなった弾丸を床に落とし新しい弾丸を一発づつ装填する。 「あ…ひっつひ…こ、ころ…」 風を斬る音が一回、上手く斬れたなと、みっともなく命乞いをし尻をつき這いずり逃げかけた男がまた死んだ。
2021-09-06 15:38:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
歩きながら一発づつ弾丸を込めシリンダーを回し引き金を引けば物陰に隠れていた男の眉間を間違いなく弾丸が貫き絶命する。 ここに来て一体何人と数えるもの面倒で数えてすらいない。 清潔感を漂わせて服が、見るも無残なほどに汚れボロボロな姿で、いつもは一本に括っている髪も落としたまま…。
2021-09-06 15:38:18![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
逆鱗に触れた…っというのは、こういうことを言うのだ。 パイロンとして名を馳せていても、まだ人を手にかけたことはない、その男がなんの感慨もなく、ただ淡々と屋敷にいる人間の命を奪っていく。 「父さん、そろそろ隠れんぼはやめようよ」 乾いた発砲音が床を打ち抜く。
2021-09-06 15:38:18![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その音が耳に飛び込む度、身を小さく縮こませ震わせる。りょーまといぞーは死んだと報告を受けたはずなのに…なぜ…りょーまがここにいるのか…わからない。 また一人が刀で二度斬られ絶命し、その返り血が顔に飛び散り口に入ってしまうと、 「全然美味しくない」
2021-09-06 15:38:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
唾と共にその血を吐き捨て血のついた刀をふり鋭い刃に戻す。 血液は刃の切れ味を落とす、 「いぞーさんほど、僕は上手く斬れないからさ、一太刀で斬れないと苦しむよ、ぁあ、でもいいか、」 発砲音が近づき、ついに厳重に鍵をしているドアを、わざわざ弾をこめなおして撃ち壊した。
2021-09-06 15:38:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「いぞーさんは、僕のせいで苦しんだ、父さんの勝手な思いのせいで苦しんだんだ、母さんも…けーきちも、だから、苦しんで苦しんで地獄におちや」 逃げ場のなくなった屋敷の中でみっともなく失禁し涙を流す。 「どうして…い、いや、あんな、オメガごときに…」
2021-09-06 15:38:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
目元は微笑んでいるが温かの欠片も見当たらない唾を飲み込み、 「わ、悪かった、わた、私が悪かった、金ならいくらでも払う、から、もうお前を、狙わない、あのオメガが欲しいと、言うなら…」 みっともない命乞いは惨めしかない、 「ならあやまってよ」 「は、え?」
2021-09-06 15:38:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「悪い事したら、ごめんなさいだろ、いぞーさんにさ、」 「は…は…ぁ?」 ばらばらと使えなくなった弾丸を床に落とし一発づつゆっくりとこめ笑みを浮かべる。 「そのだきな頭を床にこすりつけて両手をついて土下座しろっちゅうとるんじゃ」 「はひ!!は、ぃいいいいい!!」
2021-09-06 15:38:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
股の間に向かって一発の弾丸が飛び裏声をあげ叫んだ。 「なんもかんも遅いぜよ、いぞーさんも母さんも、みてもうておらん!!おまんが土下座しようが組織を解散しようが、もう遅いんじゃ!!やき、おまんの命でもって二人に償いにもらんが、それで贖え、べこのかあ!!」
2021-09-06 15:38:21