Umeyanさんの検出限界と定量下限の解説

Umeyan(@umeyan2010)さんの検出限界と定量下限の解説
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Umeyan @umeyan2010

放射線の測定値の公表で「検出せず」という表記が問題になっている。たとえば,http://t.co/6qbAttrの資料では,「検出せず」と表示した上で,「「検出せず」とは、検査機器で測定できる定量下限値未満であることを示す。」とし,さらに定量下限値を併記している。

2011-08-19 19:23:49
Umeyan @umeyan2010

表中の「検出せず」の意味が明示されているのはよい。しかし,「検出せず」=「定量下限値未満」は理解しがたい。この2つは明確に異なる概念である。

2011-08-19 19:26:14
Umeyan @umeyan2010

「検出せず」は対象を検出したかしないかを統計的に判断するときの基準である。つまり,あるかないかの基準である。あるのにないと判断してしまう誤りと,ないのにあると判断してしまう誤りの確率をどの程度に設定するかによって,検出限界の定義は変わる。

2011-08-19 19:28:28
Umeyan @umeyan2010

分析化学の分野で一般に使われている検出限界の定義は,ブランク値の変動の標準偏差の3倍の信号を与える対象の量である。この基準は,測定値が正規分布するとして,ないのにあると誤って判断する確率を0.15%に設定したものである。

2011-08-19 19:38:18
Umeyan @umeyan2010

一方,定量下限は,これ以下の量では定量値を表示する精度が確保できないという意味で使われる。定量値にどの程度の精度を要求するのかによって,定量下限は変わる。精度をよくしようとすれば,定量下限は大きくなる。つまり,精度を明示しない限り定量下限は定義できない。

2011-08-19 19:41:07
Umeyan @umeyan2010

以上のように,検出限界と定量下限はそもそも考え方も(そして当然に)算出法も異なるので,「検出限界」=「定量下限値」とはならない。一般には,精度を有効数字1桁確保するようにしたときには,「検出限界」<「定量下限値」となる。

2011-08-19 19:43:07
Umeyan @umeyan2010

それはともかくとして,表中に「検出せず」(あるいは「不検出」)などと記載し,その定義を併記したとき,その表と定義をセットで見たときには誤読はしないであろう。しかし,「検出せず」の定義が異なる複数の表を比べたときに,表間で「検出せず」の定義が異なっていたら,問題であろう。

2011-08-19 19:45:06
Umeyan @umeyan2010

そして,おそらく一般の人にとっては,「検出せず」の一般的定義よりも「○○Bq以下」などの個別的定義の方が有効であろう。すると,表には「検出せず」などと記載するのではなく,「2以下」などと記載して,表の注として,その一般的意味の解説を付記することとした方がよいだろう。

2011-08-19 19:47:42
Umeyan @umeyan2010

RT @parasite2006: @hayano 定量下限値なり検出限界値を公表すればしたで、こんどはよそと比べて大きいと言われて非難を浴びせられる事態がすでに発生中http://t.co/cHAVFXF (小数点以下の定量下限値を実現するために必要な装置の性能と測定時間を知らないからこそ言えることではある)

2011-08-20 08:10:25
Umeyan @umeyan2010

なるほど,数値を出したらこういうことが発生するのか・・・これはリテラシの問題なのだろう。(ある一時期を除いて)有効数字や誤差の問題をおざなりにしてきた学校教育の責任も大きいと思う。

2011-08-20 08:12:58