【どこかに線を】福間健二 #k2fact306

福間健二 @acasaazul

ふと思い出した傷に。その弱さ、強さ、弱さ。日暮れに帰るところがなく触れあう指からのメキシコも小粒だ。これでは負ける。安全を願う人たちのあいだを通って汚れた路地に入る。その傷に伝えることを思いながら、だれを待つのか。地理よりも感情だよ、おバカさん。（どこかに線を１）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

中くらいの巻貝が反論する。雨雲の晴れた劇場のからっぽの客席にひびくだろう。青いこと、つまり感情。それから、想像力。そういうだれにでもあるものって、弱い者に味方する気流に乗るとはかぎらない。子どもの泣き声とテレビの音。なんだ、出発した場所に戻った。（どこかに線を２）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

ノスタルジーを拒んで頭のなかで横断する国境。その音。釘の立つ面を動く大きめのムクロジの種子もなにか言いたい。迷い切ったことがあればわかるはずだ。出発した場所に戻ることの安らぎ。懐かしい人と思いたくなくてもその笑顔に負ける。ロッテ、今夜も勝ったんだね。（どこかに線を３）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

地球も回転にくたびれている。フランスの作家がメキシコで感じたこと。不法でも合法でも火傷の痕のある手が招く場所には悪魔の娘たち。装置と扮装だとわかっても指を滑らせたくなる。でも、肩を少し下げるだけで落ち着くアメリカもある。きょうは大谷も筒香も試合がない。（どこかに線を４）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

公園の老人たちと鳩、マリンバの音。規則を守らないのはたのしいよ。地球の心配をするのは死んでからのことにして、物語はやめてくれのワクチンと解体する窓の二〇二一年だ。何十年も前からの大きすぎる手足にだれが言う。お昼を一緒に食べないかって。雲、結論を急ぐな。（どこかに線を５）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

おじさん、おばさん。征服できない色、過ぎていく時間、溶けない紙など、いつも頭にあって、それで大人ということだ。一般論、役に立つ果物の皮ってある。香りとうるおいを少しもらって自分が死にそうだった夢からさめる。効果として、やさしい大人。落ちて汚れていても。（どこかに線を６）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

子ども時代、よその家の大人はだれでも、おじさん、おばさん。夕暮れの道を明かりの方に進み、親しくなるとオカズの好みがちがうのがわかった。へんなおばさんもいた。指、腕、首、それぞれの光る輪を自慢した。へんなおじさんは、可愛いだけの、可愛い動物を恋しぬいた。（どこかに線を７）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

なぜ杉並は物陰からふわりと現れるおじさんを解きにくい暗号にしたのだろう。ねえ、きみ。見つからないと思っていた雨ざらしのアメリカが歪んで北から夜がきた。類似と相違、反対なのかもしれなくて、いまその何気ない目の動きはこれが夢だと思うきみを転落させないため。（どこかに線を８）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

美しいだけの、美しい言葉に酔いたいってつまり大人にも暗号にもなれない人と別れ、お父さん鳥とお母さん鳥が飛ぶ空だ。この秋のどこかに線を引いて。慎重な逃亡者ならわかる。何を拾えばいい地理なのか。でも、だれかと連絡のつく状態。悲しい知らせが突然舞い込む。（どこかに線を９）#k2fact306

福間健二 @acasaazul

もうごはんを食べてごちそうさまとか言わない。足音がしない古いファッションに支配されるまま。すべてが滲みでる。食いとめたい善良さの線、意欲の線、遅いのだ。二日つづきの青空。ずっと雨だった九月のカナダで拾った夢は役に立たない。起きなさいとドアを叩くだけ。（どこかに線を10）#k2fact306