オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ホイール・オブ・ブルータル・フェイト #5
「この痛み!イヤーッ!」キャバリアーがゴリラめいたハンマーパンチで反撃!だがニンジャスレイヤーは流麗なステップでこれを受け流しワン・インチ距離まで踏み込むと、下腹に拳を叩き込んだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴウランガ!完璧なタイミングで放たれたポン・パンチのクリーンヒット!
2011-08-22 21:28:56ついにキャバリアーのニンジャ耐久力の限界を超え、9フィートの巨体は回転しながら吹き飛ばされ、競技場の壁に叩きつけられる!「キャバリアー=サン!」ナムアミダブツ!ボーツカイの叫びも虚しい!ニンジャスレイヤーは地面に転がるツーハンデッド・カタナブレードツルギに飛びつく!
2011-08-22 21:31:09「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの上半身に縄のような筋肉が盛り上がった。そして、見よ!あの巨人がようやく両手で扱えるほどの大業物カタナブレードツルギの柄を、ニンジャスレイヤーはゆっくりと持ち上げ、そして、ゴウランガ!自らの体を軸に、ハンマー投げ選手めいて遠心力で振り回し始める!
2011-08-22 21:33:46ブン……ブン…ブン、ブン。ツーハンデッド・カタナブレードツルギを遠心力で振り回すニンジャスレイヤー、 真上から見ればそれは扇風機めいて見える事だろう。あるいは古事記に記された凶運の車輪めいて?ニンジャスレイヤーの狙いは決まっている……壁に背中をめり込ませたキャバリアーだ!
2011-08-22 21:38:17「キャバリアー=サン!」ボーツカイはチョッパーバイクをフルスロットルさせた。もはや彼自身なぜそのような決断をしたのか解らなかった。彼はとにかく必死であった。ニンジャスレイヤーを倒せるのはキャバリアーなのだ!自分ではない!「キャバリアー=サン!ヌオオーッ!」
2011-08-22 21:40:57ニンジャスレイヤーの回転は今や十分な勢いをカタナブレードツルギに与えていた。彼はついに、ハンマー投げめいたその遠心力を……「イイィ……イイイヤァーッ!」放った!高速回転しながら、カタナブレードツルギは持ち主を真っ二つに葬るべく飛んでゆく!
2011-08-22 21:43:17その直線上へ、ボーツカイの駆るバイク・チャリオットが殺到する!飛ぶカタナブレードツルギ!ボーツカイ!「イヤーッ!」ボーツカイは座席を蹴って跳躍、さらにフロントカウルを蹴って跳んだ!飛来するカタナブレードツルギ!「グワァァーッ!」ナムアミダブツ……ナムアミダブツ!
2011-08-22 21:47:49カタナブレードツルギと空中でぶつかり合い、ボーツカイは転落した。「アバ……アバッ」まず彼の視界に入ったのは、人工芝に転がる、腰から上を消失したニンジャの下半身であった。誰の?自分自身のものだ。「アバッ」ボーツカイは吐血した。試みは成功したのだ。カタナブレードツルギを受けたのだ。
2011-08-22 22:00:02ボーツカイを切断したカタナブレードツルギはくるくると宙を舞い、キャバリアーの足元へ……突き刺さった。もがいていたキャバリアーは壁の亀裂を拡げつつ、身をもぎ離して復帰した。「ヌウウ……この寒さ……この痛み……」地面に突き立ったカタナブレードツルギを両手で握ると、一息で引き抜いた。
2011-08-22 22:21:47「さあ、やれ……」ボーツカイはさらに吐血した。「ヤツをやれ。たのんだぞ」「……」キャバリアーはカタナブレードツルギの刀身を見、それからボーツカイを見た。そして呟いた。「ボーツカイ=サン」……ボーツカイの意識は途絶え、その上半身は爆発四散した。
2011-08-22 22:27:34キャバリアーの目の前にはボーツカイが運んで来たバイク・チャリオットがある。キャバリアーはノシノシと歩き、台車に乗り込んだ。二台のチョッパーバイクがサーチライトを走らせ、オートモードがあらためて起動した。「リースタートザーマシーン。リースタートザーマシーン」
2011-08-22 22:31:02致命的攻撃が失敗に終わったニンジャスレイヤーは?彼は新たな一手を打つべく、転倒していたアイアンオトメのところにいた。車体を起こし、それに跨ると、キャバリアーのバイク・チャリオットを真っ直ぐに睨み据えた。二者は無人の競技場で向かい合った。双方の前照灯が互いを照らし出す。
2011-08-22 22:36:18「正々堂々勝負せよ……」キャバリアーがカタナブレードツルギを頭上で担ぐように構えた。呼応するように、二台のチョッパーバイクがエンジンを唸らせる。ニンジャスレイヤーはキャバリアーを見返した。ギャルギャルギャル!ギャルギャルギャル!血に飢えたアイアンオトメが後輪を荒々しく回転させる。
2011-08-22 22:58:03遠くの空で突如、花火が光った。少し遅れて、タイコめいた重低音がドォンと鳴った。それを合図にバイク・チャリオットのキャバリアーとアイアンオトメのニンジャスレイヤーはお互いめがけて全速の突進を開始した!
2011-08-22 23:02:55「ヌウウウーン!」キャバリアーがほとんど背中を向けるようにして、ツーハンデッド・カタナブレードツルギに力を込めた。その刀身は極限のニンジャ膂力によって小刻みに震えている!ニンジャスレイヤーはまったく減速する事無く、その斬撃の攻撃範囲へ突進する!間合いが重なる!「「イヤーッ!」」
2011-08-22 23:06:13アイアンオトメが跳んだ!二台のチョッパーバイクを跳び越え、キャバリアーの胸元めがけ!そしてキャバリアーは斜めのイアイ斬撃を放つ!アイアンオトメに跨ったニンジャスレイヤーの肩から上を切断する斬撃軌跡!だがそこにニンジャスレイヤーの身体は無い!
2011-08-22 23:10:39ニンジャスレイヤーはアイアンオトメの座席を蹴り、はるか上へと跳躍していた。ツーハンデッド・カタナブレードツルギを振り抜いたキャバリアーへアイアンオトメの鋼鉄のボディが魚雷めいて突き刺さる!「グワーッ!」それだけではない!上空のニンジャスレイヤーは通過するキャバリアーめがけて降下!
2011-08-22 23:15:02真下にはキャバリアーのひしゃげたカブト、そこに護られた脳天!ニンジャスレイヤーは硬く握った拳を振り上げ、真っ直ぐに降下!この構えはカラテのザ・モースト・ファンダメンタル・アーツ!ニュービーカラテカは最初の一年、これ以外の動作の練習は許されない基本中の基本動作!カワラ割りである!
2011-08-22 23:22:39「……イヤーッ!」真上から突き下ろしたニンジャスレイヤーの拳は、アケチ・ウォリアーめいたキャバリアーの古典的カブトを貫く!衝撃波で「恨」の漢字飾りが粉々に砕け散り吹き飛ぶ!「グワーッ!」さらにカブトが真っ二つに割れ砕けて左右に落ちる。露わになったのはソクシンブツめいたミイラの頭!
2011-08-22 23:31:56ニンジャスレイヤーの決断的な拳は止まらず、粘土にヘラを突き刺すかのように易々とその頭部をも貫通、そのまま鎖骨、肩甲骨まで、甲冑ごと割り裂いた!「アバーッ!」ナムアミダブツ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはキャバリアーの肩を蹴って、再度、天高く跳躍した。
2011-08-22 23:36:24アイアンオトメは力を失ったキャバリアーをそのまま轢き倒し、地上へ降り立った。ニンジャスレイヤーはくるくると回転しながらそこへ降り立ち、座席に跨った。そしてチャリオットを振り返った。肩から上を完全破壊されたキャバリアーはボロクズめいて台車から地面に転げ落ちた。
2011-08-22 23:38:47乗り手を失ったチャリオットはそのまま真っ直ぐ、壁めがけて走り去ってゆく。落下したキャバリアーがバウンドするたび、その四肢は甲冑の隙間から不浄な炎を散らし、やがて、バラバラの残骸と成り果てて散乱した。ゾンビーニンジャは言葉も無く、滅びた。
2011-08-22 23:42:36ドォン。ドォン。遠くで花火が断続的に打ち上げられる。ニンジャスレイヤーは戦いの痕跡に視線を走らせた。切断されたボーツカイの腰から下。そしてキャバリアーの甲冑の残骸。命や魂がもはや無いそれらは、かつてありし情報の断片、冷たい有機物に過ぎない。
2011-08-22 23:50:24死して屍拾うもの無し。それはニンジャスレイヤー自身にとっても同じ事だ。この殺戮行が終わる時……それは己が力及ばず倒れた時だろうか。その時には彼もまた、塵芥と成り果てて、誰に顧みられる事も無いだろう。
2011-08-22 23:57:56IRC通信機が微かに光り、デッドムーンからのメッセージを知らせる。内容に目を走らせ、懐へ通信機をしまい込んだ後も、ニンジャスレイヤーはしばし、アイドリング状態のアイアンオトメの上で無言であった。
2011-08-23 00:01:28