オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ホイール・オブ・ブルータル・フェイト #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ホイール・オブ・ブルータル・フェイト
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(あらすじ:デスナイトとの死闘の中、ニンジャスレイヤーは、キョートの秘密組織「ザイバツ・シャドーギルド」とソウカイヤとの抗争が、あの日のスゴイタカイ・ビルでの凶運を引き起こしたのだと知る。デスナイトに勝利したニンジャスレイヤーは盟友ナンシー・リーの協力を仰いでいた)
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「フユコ?トチノキ!」己の叫びでフジキドは我にかえった。朝?ブラインド窓から気怠い陽光が漏れ込み、外ではバイオスズメの鳴く声。フジキドは正座している己を見出す。この姿勢で待ちながら眠ってしまったのか。眼前に無骨なデスクと椅子がある。デスクには電源の落ちたUNIXデッキ「久米4」。
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そして寝息。フジキドは立ち上がり振り返る。ベッドフートンには無防備に泥のように眠る金髪の美しい女。ナンシーだ。うつ伏せの横顔、目の下のゴスめいたクマはザゼンドリンクの過剰摂取の症状の一つだ。実際、普段のナンシーであればこんな姿を他者に見せはすまい。フジキドは彼女を案じた。
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デスクにはドラムロールに巻かれたパンチシートのプリントアウトと、添えられたメモの切れ端がある。ナンシーの字だ。「例の組織の関与の裏付け取得済。当然これはボランティアでは無く貸しです。ナンシー」……フジキドはパンチシートを手に取り、下ろし、そしてナンシーに手を合わせた。「ドーモ」
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「死体にアイサツするみたいな真似はよしてよ」思いがけずナンシーが目を閉じたまま言った。「すまぬ。起こしてしまったか」「このまま話していい?ちょっとね……しんどくて」「大丈夫なのか」ナンシーは溜息を吐いた。「大丈夫って事も無くて。症状……原因はわかってる」
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「ザゼンドリンクだな」「判る……まあ……貴方ともだいぶ長い付き合いになるしね」目を閉じたまま、ナンシーは口の端を歪めて笑った。「ここのところの能力以上のオーバーワーク……今まで騙し騙しやって来た。対処の方法自体は色々あるけど……」「すまぬ。……すまぬ」フジキドは二度繰り返した。
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特にここ最近、ナンシーは己のニューロン性能をザゼンドリンクのオーバードーズによって補って来た。飲用者の精神をフラットに澄み渡らせる瞑想用のドラッグ「ザゼン」は、主要マーケットであるザゼンカルトやヨギ達の間のみならず、一部のハッカーにも「裏技」として愛用されている。
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ナンシーのザゼン使用の常態化は避け難いものであった。ソウカイヤやヨロシサン、オムラの危険なIRC防衛機構、そしてダイダロスのようなハッカーニンジャを相手取った熾烈な戦いは、彼女に相応の消耗を強いてきたのだ。ゆえにフジキドは詫びた。「……よしてよ」ナンシーは寝返りを打った。
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「何度でも言うけど、私はボランティアで貴方を助けたり、ニンジャやヤクザとやり合ってるわけじゃ無い……私には私の事情と理由がある。ワカル?」「……」事情と理由とは?フジキドは問いを飲み込んだ。これまでも繰り返し、浮かんでは消えた問いだ。二人の共闘は長いが、共有する秘密はまるで無い。
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ナンシー・リーとは何者なのか?フリー・ジャーナリストを自称する彼女であるが、どこまで信じたものか。非凡なUNIXタイピング速度、判断力。それらはどこから来たのか。そもそも彼女はなぜ戦う?……同様に、ナンシーはフジキドの名を知らぬ。フジキドが戦う理由もはっきりとは話しておらぬ。
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フジキドは彼女を信頼している。だがそれは言わば、無言のまま、脆い土台の上に築かれた、かりそめの五重塔めいたものではないか……?「ナンシー=サン」フジキドは言った。「こんな時だが」「何」「私の名前は」ブガー!ブガー!突如UNIXデッキ「久米4」の電源がオンになり、警報音が鳴り響く!
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黒いモニタ画面に緑色の文字が流れる。「危ない察知接近察知お引越し」エンドレスで表示されるマントラめいたゴチック文字をフジキドは睨んだ。「ナンシー=サン!これは」「ええ……ええ」ナンシーは離人症めいて淡々と相槌を打つ。「破壊……デッキを破壊して今すぐ」
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フジキドは聞き返しはしなかった。彼女が「今すぐ」と言えば、今すぐなのだ。「イヤーッ!」スラム!電撃的速度で繰り出された踵落としが「久米4」を粉々に粉砕!内蔵記憶装置はもはや鉄屑以外のなにものでもない!「ナンシー=サン」「手配は……してる……多分こうなるって……さっき思ったから」
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次の瞬間!ドスドスという物騒な打撃音とともに、「克服」のショドーが額縁に飾られ吊るされたドアが、内側にひしゃげる!「ザッケンナコラー!」ヤクザスラング怒声!「ね……早い……やっぱりこうなる……」まるで他人事のように、うつ伏せのままナンシーは呟く。「スッゾオラー!」怒声!
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ニンジャスレイヤーの脳内にニンジャアドレナリンが駆け巡りニューロンが激しくスパーク。時間の流れが泥のように鈍化する。まずはパンチシート!ニンジャスレイヤーはデスクのドラムロールとメモを掴み取って懐へしまう。ナンシーは?いまだうつ伏せのままだ。窓。ブラインド。朝日。ひしゃげるドア。
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「ザッケンナコ」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは問答無用のサイドキックをドアへ叩き込む!ドアは今度は外側へ折れ曲がり、吹き飛んで、そのすぐ向こうにいたクローンヤクザ二名を外の廊下の壁との間に挟んで押し潰した!「アババーッ!?」
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時間は僅かだ!ニンジャスレイヤーは振り返り、窓のブラインドを引きちぎると、部屋着姿のナンシーを抱きかかえる。そして部屋の端から助走をつけ、「イヤーッ!」頭から跳んで窓ガラスを粉砕!落下しながらニンジャスレイヤーは問う、「ナンシー=サン、何階だったか?ここは?」「11階……」
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「問題ない」ニンジャスレイヤーは力強く言い、ナンシーを抱えてくるくると回転、高速落下した後、はるか下のアスファルトに流麗に着地した。ゴウランガ!驚くべき事に落下の衝撃は地面に拡散し、ニンジャスレイヤーは勿論ナンシーもノーダメージだ!ただアスファルトが蜘蛛の巣状にひび割れたのみ!
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「ザ……ザッケンナコラー!?」「スッゾオラー!」黒塗りの装甲バンに待機していたクローンヤクザ達が慌てて車内から飛び出しアサルトライフルを構える。「「「グワーッ!」」」当然、遅すぎる!クローンヤクザ達の脳天にはニンジャスレイヤーの投擲したスリケンが突き刺さり全滅!
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「ナンシー=サン。さっき言っていた『手配』とは?」「ええ……ええ」ニンジャスレイヤーに抱えられたナンシーは朦朧と相槌を打つ。「逃走経路……デッドムーン……さっきの接続時、ヘマを踏んだ……気づいた……だからあの場所を捨てる事に決めた、手配はした、でも私、今、こんなでしょ、だから」
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「承知した」ニンジャスレイヤーは深刻なザゼン状態にあるナンシーから聞き出せる内容はこれが限度と諦めた。ニンジャが現れる気配は無い。少なくとも今のところ。
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ナンシーはハッキングの最中になんらかのトラップを踏んだ。ザゼン症状のせいで立ち回りが甘かったに違いない。今のクローンヤクザは機密保持の為に派遣された掃除屋の類いだ。まさか踏み込んだその場にニンジャが待っているとは想定しなかったであろう。しかしここから先は……そうも行くまい。
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ニンジャスレイヤーは区画内に他のクローンヤクザが存在しない事を確かめたのち、高層賃貸マンションの地下駐車場へ滑り込み、停められていたインテリジェントモーターサイクル「アイアンオトメ」を起動した。オーバーホールしたばかりの美しいボディだ。仕事をしたバイク鍛冶屋は死んだ。
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ニンジャスレイヤーは既に、為すべき事を己の心の中で明らかにしていた。じきにナンシーが手配したデッドムーンが到着するだろう。彼にナンシーを預けたのち、送られてくるであろうザイバツの増援を撃退し、拷問する。パンチシートの情報とあわせ、敵のハラワタを明らかにするべし。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011年8月16日
オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ホイール・オブ・ブルータル・フェイト #2 http://togetter.com/li/175064
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