ヴェルヴェット・ソニック #6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「狩人は適宜、身の回りのフーリンカザンを利用する。前回、KOLの存在は狩人マークスリーにとって有利に働いたであろうが、それは……」「今回の状況もフーリンカザンの範疇と言えるのか？親たるリアルニンジャが過剰に干渉を行った場合にも？」「状況を注視する」「待て」アヴァリスが口を挟んだ。22

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「確かに、ここまであからさまな横紙破りを黙って見過ごしてやる道理はない事だ」アヴァリスはウーガダルの肩を持った。「狩りがどう転ぼうとも、俺の知った事ではなし。だが、余興は余興らしく、よな」「フン……確かにな」メイヘムも同意した。「注視とは節穴の意か？」　23

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ブラックティアーズの目がギラリと光った。「言葉が過ぎるぞ」「さてな」メイヘムは挑発的に肩をすくめた。ウーガダルは立ち上がった。「ブラックティアーズ＝サン。オヌシは狩りの進行を管理する責務を負う。看過と保留は、死んでいった狩人の名誉、ひいては進行中の狩りをも愚弄する行動となろう」24

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KA-BOOOM！二者の視線が衝突し、遠雷が轟いた。「我、シャン・ロアの代理戦士ウーガダルは、狩人からの異議申し立てを申請する。アヴァリス＝サン。メイヘム＝サン。オヌシらは如何に」「知れた事」「乗るぞ」「……」ブラックティアーズもアグラを解き、立ち上がった。「全会一致だ」水晶が輝いた。25

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◆◆◆ 26

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『ザリザリザリ……ッた！戻ったぞ！』コトダマ空間のタキの図像が再び明瞭化し、ナンシーに語りかけた。『ハッカークソオバケの攻撃がひどくてな。こっちまでフラットラインするかと思ったぜ！とにかく嵐は去った。なあ、ニンジャスレイヤー＝サンはどうなった！』ナンシーは答える。「命はある！」27

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ナンシーはシグルーンの内蔵UNIXデッキと自らをLAN直結させている。彼女の物理視界では、コトブキが出力を低下させたAEDパンチを再びニンジャスレイヤーに見舞っている。「遊園地に接近する際、強烈な電子揺らぎを感じた」『オレもだ』「十中八九、サロウの力よ。爆発四散した時」『どういう事だ！』28

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「私に訊くのじゃなくて、考えるのよ、一緒にね！」ナンシーは力強く言った。「貴方はテンサイ・ハッカーでしょう。ここまで戦ったのも私の独力ではないわ」『……！』タキはハッとした。『……かん……考えるさ。考えろ。考えろ！』電子オーディンの影が黄金立方体の光を受けて濃く伸びた。　29

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『電子揺らぎ、爆発四散。ああそうだ。サロウは居なくなったぜ。コトダマ空間に奴のアカウントは無いじゃねえか』「そしてニンジャスレイヤー＝サンが心停止しフラットラインした」『居なくなった』タキは繰り返した。『居なくなった、ちょっと待てよ。消えちまった、は普通だ。普通じゃねえなら？』30

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「サロウは普通ではない」『ああそうだ。サロウはよォ、人間の頭を掻き回して、おかしくしちまう野郎だったぜ。アイツの行く先、行く先で、どいつもこいつも気が狂ってめちゃくちゃにニンジャスレイヤー＝サンを襲ったンだ。頭を掻き回す……頭！奴が、ニンジャスレイヤー＝サンの……！』　31

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「頭に……入る」ナンシーは数電子秒の間、沈思黙考した。そして思い至った。「ニューロンをハックする……私達も！」彼女は直結したまま、シグルーンの音声を通してコトブキに語りかけた。「コトブキ＝サン！ニンジャスレイヤー＝サンにLANソケットはある？」「ありません！生身です！」　32

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『ふ、普段ならよォ、奴には意味不明のIPアドレスで、繋がるンだ……！』タキは頭を掻きむしった。『だけど今回はハッカーを相手してッから……塞いでッから……！』「万事休す……」ナンシーは呟き、打ち消すように首を振った。「何か方法がある。なにか……」『待て。一個ある。ポートは、ある！』33

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「何処に！」『ある！正確には、エット、作るんだよ！オレ、アンタに持たせたろ。シグルーンがイッちまった時の予備の策でよ』「……！」ナンシーは思い至った。今回の作戦行動時、タキがナンシーに持たせた奇妙な粉末。「……ブラックベルト……！」『ああ、そうだ！』　34

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タキは拳を握った。『アンタが寝ていた10年でよォ、ネオサイタマのハック魔術も進歩してンだぜ。天才的ハッカーのユカノが編み出した神秘的なワザで……オレが独自に進化させたと言えなくもない！』「ユカノ？」『奥義の名前は……そう……エート……言うなれば……。ヴェルヴェット・ソニックだ！』35

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「コトブキ＝サン、私のツールパックから、爪ぐらいのシリンダーを」ナンシーはシグルーンを通して指示した。コトブキはすぐにそれを見つけた。小瓶に詰まった黒い粉末を。『それだ！それがブラックベルト。ZBRとエメツの粉末だ。それを吸うと、ブッ跳ぶ！』「吸う。奥義ね。……名前は貴方が今？」36

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『こ、こんな時にオレは冗談言わねえ。マジで臨んでる』タキは凄んだ。『そいつを吸うンだ。それでブッ跳……あのな、そうすりゃ、コトダマ空間に無理矢理ニューロンが、繋がるンだよ。原理はわかんねえけどマジなんだ。わかるか！？』「エメツ……」『奴に、吸わせろ！吸わせて、ネットに繋ぐ！』　37

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「……やるしかないわね」ナンシーは直結解除しようとして……留まった。監視カメラ映像を通し、廃遊園地に侵入してきた奇妙なモータルを確認した。モータルは三人組。オンラインで、電子アカウントが確認できる。「TAKESHI_SOC」「YUKO_SOC」「RUITO_SOC」。銃武装！　38

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（オイ、マジかよ、本当だったぜ）（いる、いる）（どうすんの？）（作戦変更だってよ）（直接やるの？SoCカルマポイント1000くれンの、マ？）（ドイツ支部のト・キコが署名してる……）（マジ、儲けたな！）コトブキが身構える。彼らは笑いながら銃を向ける。「DAMN！」ナンシーは意識を飛ばす！ 39

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ナムサン。彼らが電子カルト集団、サンズ・オブ・ケオスの構成員であることは明白だ。おそらくはこの戦闘地点をめがけ予め集められていた者達……！BRATATATATATA！BRATATATATATA！TATATATATA！銃口が閃き、コトブキは咄嗟にナンシーを庇った。ナンシーは痙攣し、シグルーンの車体に倒れ込んだ。　40

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BRATATATATATA！TATATATA！シグルーンがドリフトし、コトブキとナンシーの盾になる。コトブキは歯を食いしばった。両腕に、ボディに数発食らった。「ナンシー＝サン！」彼女は痙攣するナンシーを揺さぶった。「ヒイヤハア！」「ケオス！」SoCカルト達は銃をリロード……そこへ、大質量が落下した。41

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KRAAAASH！「「「アバーッ！」」」悲鳴と砂塵。ナムアミダブツ。それはレールを走り来て脱線し、そのままSoCカルトをまとめて叩き潰した廃ジェットコースターであった。「ナンシー＝サンが……！？」コトブキは周囲を振り仰いだ。『そうよ。園をハックした。急いで！』シグルーンが答えた。　42

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その傍らではナンシーが痙攣を続けていた。彼女のオイランドロイドボディにも複数の銃創。火花をあげている。『それをスニッフさせて！ニンジャスレイヤー＝サンに！』コトブキは握りしめていた小瓶の黒い粉末を見た。「……！」そしてニンジャスレイヤーを！「ハイヤーッ！」メンポを剥がす！　43

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「ハイヤーッ！」そして手のひらにこぼした黒い粉末をニンジャスレイヤーの鼻孔にグイグイと押し込んだ。「こうですか！」『その筈！』コトブキは居ても立っても居られず、ニンジャスレイヤーの心臓を再びプッシュした。反応がない。彼女は悔しげに表情を歪めた。決断的に、残りの粉末を口に含んだ。44

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（シツレイします！）コトブキはニンジャスレイヤーの顎を掴んで口を開かせ、人工呼吸めいて、マウス・トゥ・マウスした。そのまま彼女はキアイで、上咽頭にむかってブラックベルトを吹き込んだのである！「ーッ！」ヴェルヴェット・ソニック！ニンジャスレイヤーの身体が強く震えた！　45

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ブラックベルトに含まれるZBRはニンジャスレイヤーの粘膜に速やかに吸収され、脳をキックし、血管をめぐって心臓をキックした。跳ね上がったニンジャスレイヤーの上半身をコトブキはあやうく受け止め、再び横たえて、心臓に耳をつけた。ドクン！ドクン！ドクン！鼓動が戻った！　46