リビア作戦における多国籍軍の過ちについて

リビア情勢が反体制派のトリポリ進撃でひと段落だが、これは空爆を実施した多国籍軍の力によるものではない。軍事行動の中心を担った米英仏は軍事行動への参加を拒否した独を非難しているが、彼らとて紛争終結のために十分な努力を行ったとはいえなかった。リビアにおける多国籍軍の活動から浮かび上がる今後の教訓について言及する。
3
fj197099 @fj197099

リビア:トリポリ制圧 欧州外交に新たな不協和音も(http://t.co/wXB66VX)…カダフィが拘束されていない以上、反体制派の勝利で終わりだと断定する訳にはいかないが、この紛争は実に難しい教訓を欧米諸国に残したと思う。簡単に誰が正しく誰が間違いとは決め付けられない。

2011-08-23 20:18:00
fj197099 @fj197099

私自身の考えとしては、そもそもベンガジの虐殺を阻止するために3/19、米英仏を中心とする多国籍軍が国連安保理決議に基づき武力行使=人道的干渉に着手したことは非難されるべきでないと考える。あそこで干渉しなければ多数の市民が虐殺されてカダフィの恐怖政治が更に数十年続いた可能性がある。

2011-08-23 20:19:49
fj197099 @fj197099

そして独がこの作戦への軍事的参加を拒んだことは明らかに誤りであった。軍事行動は国連安保理決議で正式に認められた正統かつ合法な行為であって、独はそれへの参加を拒否したことで欧州内で孤立したばかりかNATOの軍事同盟としての結束を損ねた。独善的単独主義と言われても仕方がなかった。

2011-08-23 20:22:20
fj197099 @fj197099

独はそも国連安保理決議の採択それ自体でも棄権という選択を行った。これも欧州には極めてショッキングな出来事であった。独はこの選択によって自らの立場を英米仏より中ロやインド、ブラジルなどの新興国と近いものとしたからである。事実上の先進民主主義国陣営からの離脱宣言であったといってよい。

2011-08-23 20:26:27
fj197099 @fj197099

独の立場は冷戦後に定着してきた人道的干渉という西欧の民主主義的価値観からは極めて異質なものであって、今後欧州内での独の孤立化は益々進むと考えられる。独は最近かつてのようにEUに自らの利益を従属させる伝統姿勢を転換したと受け止められる所もある。独の選択は失敗だったといえるだろう。

2011-08-23 20:29:00
fj197099 @fj197099

他方で米英仏がこの紛争における「勝者」かといえばそんなことは全くない。米英仏はこの紛争で余りにも過少な軍事力投入しか行わなかった。3月当初こそは大規模な空爆を実施したものの、その後は米国は直ぐに前線から退き、英仏も十分な軍事行動を実施しなかった。軍事行動の目標さえ支離滅裂だった。

2011-08-23 20:32:05
fj197099 @fj197099

特に紛争のエンドゲームが明瞭に意識されていなかったのは極めて大きな問題であった。虐殺阻止の行動であるから迅速介入の必要性から当初はやむを得ないとしても、直ぐに紛争の最終的な行き着く先についてきちんと同盟内で議論をし必要な資源を迅速苛烈に投入すべきであった。それができていなかった。

2011-08-23 20:34:18
fj197099 @fj197099

武力行使のあり方が国連安保理決議の狭い解釈に縛られすぎたのはとりわけ問題であった。武力行使を正統化する安保理決議1973号は飛行禁止区域の設定と市民保護のためのあらゆる措置を認めていたが、外国の占領軍の投入は認めていなかった。決議にリビアの政体変更を禁じるという規定はないのだ。

2011-08-23 20:37:31
fj197099 @fj197099

状況を考えれば、リビアにおいては独裁政権が続く限りは市民の弾圧は続く訳であり、市民保護の為のあらゆる手段とは当然ながらカダフィ政権転覆=政体変更をも目的として含むべきものであった。事実、米英仏は紛争当初から一貫してカダフィ退陣を求めていたのである。それを軍事目標とすべきであった。

2011-08-23 20:39:07
fj197099 @fj197099

しかしこのような解釈は中ロの激しい反発にあい、また軍事行動が安保理決議の規定に厳格に沿った限定的なものであることを求める国内の反対勢力(その背景には法的又は財政的な様々な事情)の前に屈した。結局多国籍軍の行動は広範囲な地上空爆を伴わない極めて限定的なものにならざるを得なかった。

2011-08-23 20:42:01
fj197099 @fj197099

多国籍軍は飛行禁止区域の設定で必要なリビア地上施設(空港や管制施設など)への有る程度の空爆は実施したが、カダフィ軍に対してはそれが市民を直接保護する目的でない限り、空爆を実施できなくなった。カダフィ暗殺の是非も英国であれこれ議論された挙句、着手できなかった。

2011-08-23 20:44:15
fj197099 @fj197099

地上軍は派遣できないということになったので、多国籍軍は反体制派である暫定国民評議会に軍事顧問を送ることさえ満足にできなかった。それどころか軍事物資を直接供給することさえ決議違反と非難される有様だったのである。結果、反体制派との軍事的連携は極めて未熟な形に留まらざるを得なかった。

2011-08-23 20:45:54
fj197099 @fj197099

軍事的見地から見れば、多国籍軍がやっていることはカダフィ軍を叩くことでは全くなかった。それは本当に飛行禁止区域の設定と市民保護の為の限定介入以上のものではなく、要するにカダフィ軍に航空優勢だけは取らせませんから、後は当事者間で勝手にやって下さい、という以上のものではなかった。

2011-08-23 20:48:59
fj197099 @fj197099

要するに米英仏は反体制派に勝利の前提条件たる軍事支援さえ実施せずに地上戦同士でどちらが勝つかを様子見していただけ、とさえ言える。反体制派が追い詰められれば市民保護を理由にカダフィ軍を空爆するのだが、積極的に反体制派を助けることはしなかった。それが紛争がここまで長引いた理由である。

2011-08-23 20:51:19
fj197099 @fj197099

このような軍事的にバカげた作戦は過去に例を見ない。他の欧州諸国の貢献が不十分であることも非難されたが、米英仏の国内でも批判が強くあった。反体制派が地上戦で盛りかえさない限り10年でも20年でも飛行禁止区域の設定を維持し続ける必要性さえあっただろう。それも最近はもう息切れしていた。

2011-08-23 20:54:23
fj197099 @fj197099

戦費の増大で九月以降、NATO諸国では空爆への参加を縮小せざるを得ない国が出始めていた。NATOは惨めに敗北しようとしていたのだ。そこで英仏を中心に地上ヘリの投入ややや決議の解釈を拡大したと思える地上攻撃なども実施されたが、NATOが追い詰められていたことに変わりはなかった。

2011-08-23 20:56:28
fj197099 @fj197099

イスラムの断食月・ラマダンへの突入と共にイスラム勢力を攻撃することの是非が議論されるようになり、つい最近には英仏はカダフィのリビアからの追放を求めるという当初の目的さえ転換していた。つまりカダフィは退陣してもリビア国内にいてよいというのだ。カダフィと取引しようとしていたのだ。

2011-08-23 20:58:48
fj197099 @fj197099

カダフィは国際刑事裁判所から逮捕状の出ている国際的な刑事被告人であって、カダフィに退陣後もリビア滞在を認めることは市民の虐殺に関与した犯罪人は国際法廷で裁かれるべきという国際社会の原則さえ譲歩した呆れるべき弱腰姿勢であった。反体制派もこのような条件を容認するとは思われなかった。

2011-08-23 21:01:27
fj197099 @fj197099

つまり米英仏を中心とする多国籍軍はつい最近までこの軍事作戦においてカダフィとの取引という惨めな敗北を覚悟すべき立場にあったのだ。それゆえ、反体制派のトリポリ進撃は正に戦況の急転直下の大転換である。その背後にどんな事情が存在したかは今はまだ明らかではない。将来解明されるだろう。

2011-08-23 21:03:55
fj197099 @fj197099

私自身は現時点では反体制派のザーウィヤへの攻撃とその後のトリポリ進撃は多国籍軍のふがいなさを見ての短期決戦の発想を強く有するかなりリスキーなものであった可能性が高かったのではと思うのだが、その真偽はともかく状況は反体制派に有利に展開したようだ。そのことが多国籍軍を救った面が強い。

2011-08-23 21:05:53
fj197099 @fj197099

つまりはこの紛争の「勝者」は決して米英仏とは言えないと考えるのである。むしろ彼ら主導の多国籍軍はつい最近までカダフィ派に譲歩せざるをえない立場におかれていた。反体制派の勝利は多国籍軍の力あってのものではない。反体制派自身が相当にリスクテイクした結果の勝利であったと言えるだろう。

2011-08-23 21:07:50
fj197099 @fj197099

そしてこのことが将来の人道的干渉や同種の軍事行動に対する重大な教訓を残しているのである。国連安保理決議の厳格な解釈を理由とする限定的な介入は、結局紛争を長期化させる結果となり、決して望ましいものではない。今回はたまたま反体制派が有利に戦況を変化できた幸運な事例であったとも言える。

2011-08-23 21:09:44
fj197099 @fj197099

米英仏は一度紛争に干渉した以上、財政の問題があろうとも初期にもっと大規模な軍事力を集中して投入すべきであった。そして安保理決議の厳格な解釈に拘り過ぎるべきではなかった。地上軍の投入はともかく、作戦の目的は政体変更とすべきであったし、カダフィ暗殺も積極的に試みられるべきであった。

2011-08-23 21:11:41
fj197099 @fj197099

反体制派にはもっと大規模に軍事支援を行い、軍事顧問も送って地上戦の教練を施すべきであった。国内の異論は説得し、中ロの反発は無視すべきであった。今回の米英仏にはそれが出来ていなかった。特に欧州に作戦を丸投げした米の責任は大きいが、このようなことは二度と繰りかえされるべきではない。

2011-08-23 21:13:29
fj197099 @fj197099

リビアではどうやら最終的に反体制派の勝利という形で終わりそうで、多国籍軍にとっては幸運であった。しかしそれは多国籍軍の勝利ではない。独の決定は愚かなものであったが米英仏もそれを決して笑えない。彼らには紛争を悪戯に長期化させた責任がある。稚拙な軍事行動だったことを反省すべきだろう。

2011-08-23 21:17:17