曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#1

再放送なのに勢力が増えたぞ!? 2:https://togetter.com/li/1791142
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劉度 @arther456

曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)

2021-10-18 21:01:01
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-10-18 21:02:00
劉度 @arther456

ネオホッカイドウ共和国。10年前までは日本国北海道と呼ばれた地域だ。数十年前の『魔法の再発見』によりこの地は活性化し、ネオヒグマやネオエゾシカといった魔法生物、極寒・酷暑・濃霧・降猫・降鮫などの異常気象、ニホンワーウルフやキタキュウビキツネなどの異界種などに遭遇した。1

2021-10-18 21:03:01
劉度 @arther456

混迷の最中、深海棲艦が出現。北海道は海洋封鎖によって孤立した。そこに手を差し伸べたのがロシア政府である。北海道はネオホッカイドウ共和国として日本より独立。暫定政府はロシアへ支援要請を行った。すぐさま連邦軍が物資輸送の名目でネオホッカイドウの大部分を占領してしまった。2

2021-10-18 21:06:01
劉度 @arther456

こうしてネオホッカイドウはロシアの傀儡国家になるかと思われたが、事態は更に捻じくれる。ネオホッカイドウ共和国を占領したロシア連邦極東軍が軍閥化、シベリア・樺太・千島列島・ネオホッカイドウを実効支配しようと動き始めた。傀儡のはずのネオホッカイドウは本物の独立国家になってしまった。3

2021-10-18 21:09:00
劉度 @arther456

この隙をついて日本軍も函館から進軍、極東軍と戦闘を繰り広げる。更に新型違法薬物ネオアヘンの原料となるネオケシを狙って、世界各国の犯罪組織が集結。そこに凶暴化した現地生物と、武装コンビニチェーン、魔法生物を狩るハンターまで加わって収拾がつかなくなった。3

2021-10-18 21:12:01
劉度 @arther456

そんな試されすぎた大地の一角、港湾都市オタル。この街には『ハタノ』という酒場がある。小さな店だが、市内では唯一ウォッカを扱っている店だ。「親父ぃ!邪魔するぞぅ!」そこにハンターたちがやってきた。「っとと!」「親父、勘定!」ハンターたちを見て、客が慌てて店を出て行く。4

2021-10-18 21:15:01
劉度 @arther456

「ガッハッハ!酒じゃ酒じゃあ!ネオヒグマを仕留めた祝いの酒じゃあ!どんどん持って来い!」「親父ぃー!焼き鳥もくれー!」ハンターたちは勝手に座敷席を占拠し、注文をし始める。「は、はい、ただいま……」それに対し店主は抗議の声を挙げることもできない。5

2021-10-18 21:18:00
劉度 @arther456

彼らハンターの力はネオヒグマに匹敵する。たかだか一個人が立ち向かえるわけがない。「早くしろヨォ?俺らは街を守ってる偉い戦士様たちなんだからヨォ!」「ハッハッハッハ!」故に、こうして増長する無法者たちも現れる。一般市民は頭を下げて去るのを待つしかない。6

2021-10-18 21:21:01
劉度 @arther456

ハンターたちが呑み始めてしばらく経つと、またしても酒場の扉が開いた。今度は1人だ。大きなメガネが特徴的な、目付きの悪いおかっぱの女だ。「あ゛ー、寒い」晩秋の冷えた空気に息を曇らせると、女はカウンター席に座った。隣にはウォッカを飲む金髪の白人男性が座っている。7

2021-10-18 21:24:01
劉度 @arther456

「焼酎、お湯割りでくれ」「ええ、でも今日はやめておいた方が……」店主はハンターたちに目をやるが、女は気にしない。「あ゛?いいからよこせ」女の声には有無を言わせぬ迫力があった。「は、はい、ただいま……」店主は怯えながらお通しとお湯割りを差し出した。8

2021-10-18 21:27:00
劉度 @arther456

女はお湯割りに口をつけ、ふう、と息を吐く。そして呟いた。「……わざわざアタシが横浜からこんなド田舎まで来てるんだ。挨拶ぐらいしたらどうなんだ、ダルス・エンゼルシー?」隣に座る金髪の男が、青い瞳を動かして女を見た。女も黒い瞳で金髪の男を睨みつける。9

2021-10-18 21:30:00
劉度 @arther456

「誰だ」「ヴァジュダラ・ニオー・ヤクザクラン直系サウザン・ゴールド・ヤクザクラン組長、キリシマだ」「コンゴウの仲間か」「ああ。姐さんから命令を預かってる」「命令だと?」キリシマは懐から封筒と2枚の写真を取り出した。「来週、この2人がルモイのホテルに来る。ブッ殺せ」10

2021-10-18 21:33:00
劉度 @arther456

ダルスは写真を確認した。1枚にはロシア人男性が写っている。ヴァシリ・ドロフェイ。ルモイを拠点とするマフィアのボスだ。もう1枚には性別が曖昧な日本人が映っている。柚木律。食品会社の社長で、先日、地下闘技場に憲兵隊と警官隊を引き入れた主犯でもある。11

2021-10-18 21:36:01
劉度 @arther456

「姐さんのビジネスを邪魔するドロフェイの所に、地下闘技場をタレコんで姐さんを傷つけた柚木が来る。纏めて殺れって話だよ」「コンゴウからは何も聞いていないが」「当たり前だ。姐さんは地下に潜ってんだよ。だからアタシがわざわざ代わりに出向いてやったんだ」12

2021-10-18 21:39:01
劉度 @arther456

先日コンゴウが地下闘技場を観戦した際、憲兵隊と警官隊による摘発に巻き込まれた。コンゴウは何とか逃亡したものの、負傷したため身を隠している。「姐さんはお怒りだ。敵討ちだぞ、しっかり働けよ」「部下になった覚えは無いんだがな」「あ゛?」13

2021-10-18 21:42:00
劉度 @arther456

凄むキリシマを無視して、ダルスは封筒の中身を確認する。ホテルの図面、バックアップ要員への連絡先、ヴァシリと柚木の行動スケジュールなど、暗殺に必要な情報が揃っている。そして、厚みのある札束。「そいつは前金だ。成功報酬は500万」「そうか」「しくじったら命はねえぞ」14

2021-10-18 21:45:01
劉度 @arther456

ダルスは封筒を懐にしまい、グラスに残ったウォッカを呷った。キリシマも無言で焼酎を飲む。「よお……よおよおよおよお嬢ちゃん」そこに、酔ったハンターが近寄ってきた。「一晩付き合ってやるよ。いくらだ?」「あ゛?」キリシマはハンターを睨みつけた。「テメェ、今なんつった?」15

2021-10-18 21:59:34
劉度 @arther456

「おーおー、そんな怖いカオしないでくれよ? 美人が台無しだぜぇ……へへへぶらっ!?」嗤うハンターの顔に、キリシマの拳が突き刺さった。ハンターの鼻から血が吹き出した。「……ッ、何すんじゃこのクソアマァ!」ハンターが殴りかかろうとするが、その腕をダルスが掴んで止めた。16

2021-10-18 22:05:49
劉度 @arther456

「やめておけ」「あ゛!?」その声はキリシマに向けられていた。「それは使うな。店に迷惑だ」「……チッ」キリシマは懐に伸ばしていた手を元に戻した。「テメエ、放せやゴラァ!」一方、掴まれたハンターはもう一方の手でダルスに殴りかかった。ダルスは身を屈めて拳を避け、同時に正拳を放つ。17

2021-10-18 22:05:57
劉度 @arther456

ダルスの左拳が無防備なハンターの鳩尾に突き刺った。ハンターの体が僅かに浮き、悲鳴も上げずに倒れ伏した。「……おい、何してんだテメェ!?」ようやく事態を把握した他のハンターたちが、慌てて立ち上がった。ダルスはそれらを気にせず、店を出る。18

2021-10-18 22:06:08
劉度 @arther456

「だっ、待ちやがれこの野郎!」当然、他のハンターたちも追いかけた。店のすぐ前の路上で、ダルスは十数人のハンターたちに取り囲まれた。酒瓶や灰皿を握っているものもいれば、ナイフや銃を抜いている者もいる。「テメエ、俺らの仲間に手を出してタダで済むと思ってんのか!?」19

2021-10-18 22:08:08
劉度 @arther456

ダルスは答えず、悠然とハンターたちを見回している。その態度がハンターたちの逆鱗に触れた。「スカしてんじゃねえぞクソが!」「ナメやがって……」「覚悟しやがれ、クソロシア人が!」「ぶっ殺してやる!」溢れる殺気を一身に受けて、ダルスは冷徹に呟いた。「なら、上手く殺してみろ」20

2021-10-18 22:14:02