曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#2

ファッキンジャップぐらいわか……え、ロシア語?わからん……。 1:https://togetter.com/li/1790274 3:https://togetter.com/li/1791986
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-10-20 21:01:00
劉度 @arther456

曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#2

2021-10-20 21:02:00
劉度 @arther456

タクシーを降りたダルスは、まず周囲を確かめた。路上の車に2人。監視役のようだ。それから階段を登り、部屋に入る。「おかえりなさい」リビングのソファに座るエメラルドグリーンの髪の女性が振り返った。アイスブルーの瞳を細めて、ダルスに笑いかける。「ただいま、コリウス」1

2021-10-20 21:03:00
劉度 @arther456

コリウスは十数年前、ダルスと共に北海道へ渡ってきた。ダルスは追われる身で、コリウスは彼に着いてきた。お互いに離れがたいと思っていた。危険な時は何度もあったが、それでもダルスはコリウスを守り続け、コリウスはダルスの側に居続けた。2

2021-10-20 21:06:00
劉度 @arther456

洗面所で手を洗い、ダルスはコリウスの隣に腰掛ける。「何かあったの?」彼女は勘が鋭い。ダルスがどれだけ平静を装っても、かすかな違和感から状況を察してしまう。「……コンゴウから、仕事が入った」「会ったの?」「いや。代理を名乗る人間が来た」「本物?」「……わからん」3

2021-10-20 21:09:00
劉度 @arther456

ダルスは疑っていた。キリシマは本当にコンゴウの命令を受けているのかと。コンゴウからの仕事は何度か引き受けているが、護衛や密偵の仕事が主で、今日のような暗殺を頼まれることはなかった。そもそも殺したい相手がいればコンゴウは自分で殺しにいく。彼女にはそれだけの強さがある。4

2021-10-20 21:12:00
劉度 @arther456

だが、そうした命令が出る理由もある。地下闘技場を脱出したコンゴウは、地下に身を潜めてほとぼりが冷めるのを待っている。しかし彼女は、自分を陥れた人間を決して許さない。柚木への復讐のチャンスを知り、ダルスに緊急で仕事を依頼した可能性は十分に有り得る。5

2021-10-20 21:15:00
劉度 @arther456

偽の依頼であれば罠だ。しかし本物の可能性もある以上、無視はできない。「……すまない、コリウス」そこでダルスは折衷案を取った。「今度の仕事のバックアップを頼む」「ここを出るのね」「ああ。仕事を終えたらそのまま車で逃げる。そこでコンゴウからの連絡を待つ」6

2021-10-20 21:18:00
劉度 @arther456

罠ならそれで回避できる。本物なら説明を聞いてから戻ればいい。「危険な目に遭わせるが……」「平気よ」コリウスはダルスの言葉を遮って、彼の手をとった。「だって、貴方と一緒にいるんだもの」ダルスは頷いた。その通りだ。自分がいる限り、もう二度と彼女を危険には晒さない。7

2021-10-20 21:21:00
劉度 @arther456

ルモイ市、ホテル『ウースタ・クラリエーバ』。ロシア系の外資企業によって建設された高層ホテルだ。その正面玄関に1台の高級車が停まった。降りてきたのは、タイトなスーツに身を包んだボサボサ髪の人物と、スカートを履いた2人の少女である。9

2021-10-20 21:24:00
劉度 @arther456

スーツの人物は柚木律。食品輸入会社の社長、というのは表向きの経歴だ。その正体は横須賀鎮守府第33艦隊提督、東郷優月。それに従う2人の少女の名前は不知火と舞風。いずれも艦娘だ。表向きには裏ルートで手に入れた脱走艦娘ということになっている。10

2021-10-20 21:27:00
劉度 @arther456

「ユズキ様、お荷物をお預かりいたします」「どうも」手荷物をホテルマンに預け、提督たちはホテルに入った。きらびやかに飾り付けられたロビーが、提督たちを出迎えた。エレベーターの前で談笑していた白いスーツの男たちが、提督たちに気付いて近づいてくる。11

2021-10-20 21:30:00
劉度 @arther456

「リヴィエス・トゥオーヴァジ!日本の皆さん!アレクサンドル・マカロフだ。ボスの身辺警護を任されている」ロシア人の1人が挨拶をしてきた。「柚木律です。よろしく」挨拶を返しつつ、提督は相手を吟味する。首の後ろで束ねた黒髪と、左頬に走る刀傷が目立つ。カタギには見えない。12

2021-10-20 21:33:00
劉度 @arther456

実際、マカロフはロシアンマフィア『ドロフェイ・ファミリー』の幹部である。『ドロフェイ・ファミリー』はルモイを根城にするマフィアだ。主なシノギはホテル経営、不動産売買、そしてネオアヘンの密売。日本軍や極東軍閥でもうかつに手を出せないほど強力だ。提督は彼らに用があった。13

2021-10-20 21:36:00
劉度 @arther456

切欠は先日のこと。憲兵隊と警察が協力して、脱走艦娘の地下闘技場を摘発した。その縁で提督は警察とコネができたのだが、そこからある情報がもたらされた。新型麻薬ネオアヘンが新日本海軍で蔓延している可能性があると。それも提督の主導によって。14

2021-10-20 21:39:00
劉度 @arther456

話を聞いた提督は上層部には持ち込まず、独自にドロフェイ・ファミリーへ諜報をかけることにした。流石に鎮守府単独で乗り込むのは無謀なので、同じくルモイへ密航を希望していた銃器犯罪対策課のチームと組んで、このホテルを訪れることになったのだ。15

2021-10-20 21:42:00
劉度 @arther456

「それじゃあ、ボディチェックさせてもらうぜ」マカロフたちは提督たちの体を調べる。「艦娘ってのは初めて見るが、ホントにガキだな。あんなので戦えるのか」「もちろんです」「はー。あんなのに頼るなんて、日本の軍人は恥ずかしくないのかねえ」「……悔しいです」16

2021-10-20 21:45:00
劉度 @arther456

「あん?」マカロフの手が止まる。「悔しいですよ。子供に武器を持たせなくちゃならないなんて」「お、おう……?」マカロフは困惑しながらもボディチェックを終えた。「オーケー。ボスは34階でお待ちだ。ついてきな」マカロフの案内で、提督たちはエレベーターに乗り込んだ。17

2021-10-20 21:48:00
劉度 @arther456

「ねえねえ、おじさん」エレベーターのドアが閉まると、舞風がマカロフに尋ねた。「なんだ?」「どうして刀なんて持ってるの?」マカロフは腰に日本刀を差していた。「そりゃお前、武器だよ武器」「えー。銃じゃないの?」「こっちの方が速いんだよ。なんたって、俺の居合は0.3秒だからな!」18

2021-10-20 21:51:00
劉度 @arther456

「おおーぅ、すっごーい!社長の早撃ちと同じじゃん!」「ちょっと、舞風!」提督は慌てて舞風をたしなめる。煽られていると思われたら大変なことになる。「カカカ、いいぞ。もっと褒めろ褒めろ」だが、マカロフは気にした風ではなさそうだった。提督はほっと胸を撫で下ろした。19

2021-10-20 21:54:00
劉度 @arther456

ベルが鳴り、エレベーターが止まった。「よっしゃあ、こっちだ」マカロフの後についていくとレストランに着いた。他の客はいない。貸し切りのようだ。一番奥の個室に案内される。ここからは油断できない。提督は気を引き締め、不知火と舞風を引き連れてドアを潜った。20

2021-10-20 21:57:00
劉度 @arther456

ホテル『ウースタ・クラリエーバ』は、35階から33階までがドロフェイ・ファミリーによって貸し切られている。各階に10人ほどのマフィアが配置され、1階には有事に備えて50人ほどのマフィアが控えている。更に警備室で監視カメラによる哨戒も行っている。万全の防御態勢だ。22

2021-10-20 22:00:02