曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#3

戦いに飛び込んで(物理)くる熊野 2:https://togetter.com/li/1791142 4:https://togetter.com/li/1792457
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-10-22 21:01:00
劉度 @arther456

曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#3

2021-10-22 21:02:00
劉度 @arther456

34階、ドロフェイと柚木がいるレストランの階でダルスはエレベーターを降りた。怪しまれることはない。清掃員の制服に着替えている。34階に着くと、清掃カートを押して廊下を進み、スタッフルームに入った。ここはレストランの厨房に繋がっている。いわば搦手口だ。1

2021-10-22 21:03:00
劉度 @arther456

制服を脱ぎ、シャツとズボンを履き替える。清掃カートの中から各種武装を取り出し、身に付ける。ホルスターに拳銃。ベルトにナイフと手榴弾。更にくたびれた黒いコートを羽織る。腕を捻ると、コートの袖口から鋭く研がれた金属のアームが飛び出した。その先に拳銃の予備マガジンを差し込む。2

2021-10-22 21:06:00
劉度 @arther456

このコートは拳銃弾程度なら防ぐし、今のように特殊機構を使って一瞬で弾倉交換ができる。今はもう無い、ある特殊部隊で使用されていたものだ。最後にダルスは、カートの底から軍用ライフルを取り出した。マガジンを差し込み、安全装置を解除すると、彼は厨房に踏み込んだ。3

2021-10-22 21:09:00
劉度 @arther456

厨房では料理人たちが鬼気迫る勢いで料理の準備をしている。一種の戦場だ。ダルスが堂々と歩いても、気付く者は少ない。「おい、アンタ……」たまに気付いた料理人が声をかけてくるが、ダルスに気圧されて止められない。何の問題もなく厨房を通り抜け、ホールへ出ることができた。4

2021-10-22 21:12:00
劉度 @arther456

ホールの中には警備が4人。奥のVIPルームの中に2人。いずれも油断しきっている。厨房から出てきたダルスに驚き、慌てて銃をホルスターから抜こうとする始末だ。遅い。ダルスは立て続けに引き金を引き、瞬く間に4人を射殺する。更にVIPルームのドアに銃撃しながら近付き、蹴り開ける。5

2021-10-22 21:15:00
劉度 @arther456

ドアを蹴り開けたダルスは、まず椅子に座って血を吐いているドロフェイを撃った。数発の銃弾がドロフェイを抉り絶命させる。続いて、両脇の護衛を撃ちつつ部屋の中を確認する。もう1人のターゲット、柚木が床に倒れている。更に艦娘が2人、こちらに銃を向けていた。6

2021-10-22 21:18:00
劉度 @arther456

「ッシャラアアア!」左から雄叫び。ダルスはその場を飛び退いた。刃が煌めき、手にしていたライフルが真っ二つになった。刀を手にしたニコライだ。既に間合いに踏み込まれている。鎖骨を狙った太刀筋を、身を捩って回避する。使い物にならなくなったライフルをニコライに向かって投げつける。7

2021-10-22 21:21:00
劉度 @arther456

ニコライがライフルの残骸を避けた隙に、ダルスは腰のナイフを抜き放った。一閃。喉を斬り裂かれたニコライは、声を上げることもできず、その場に力なく倒れた。ダルスは止まらず、攻撃の勢いのまま前転する。頭上を銃弾が通り抜けた。薄紫色の髪の艦娘が撃ったものだった。8

2021-10-22 21:24:00
劉度 @arther456

前転で間合いを詰めたダルスは、立ち上がりながら少女の銃を弾いた。ターゲットの柚木がもう1人の艦娘に伴われて部屋を逃げていく。追わなくては。目の前の少女が殴りかかってきた。その腕を掴み、捻り上げる。しかし少女は腕ごと側宙、舞い上がった足をダルスの頭にぶつけた。9

2021-10-22 21:27:00
劉度 @arther456

視界がブレる。一瞬怯むが、ダルスは倒れず後ろに下がる。鋭い剣閃が一瞬前にいた所を通り抜けた。いつの間に抜き放ったのか、少女の手にナイフが握られていた。青い瞳と目が合う。不知火。以前、地下闘技場で狙撃しようとして失敗した艦娘だ。10

2021-10-22 21:30:01
劉度 @arther456

「……教官?」不知火が呟いた。その一言に、ダルスは心臓を鷲掴みされたかのような錯覚に陥った。「……何の話だ」努めて平静を装い、ダルスはナイフを構える。「いえ、間違いありません。ハザエル教官、ですよね?」ダルスの切っ先は乱れない。だが、心は動揺していた。11

2021-10-22 21:33:00
劉度 @arther456

確かに彼は教官であった。ロシア南西部のトゥエリスタンという地域で、反政府ゲリラを訓練していたことがある。その時はハザエル・ディマスカと名乗っていた。不知火の言葉は情報としては正しい。だが、10年以上も前の話だ。年端も行かない少女に教官と呼ばれる筋合いはない。12

2021-10-22 21:36:00
劉度 @arther456

「人違いだ」そう告げて、ダルスは踏み込んだ。不知火の手首にナイフを振り下ろす。不知火は腕を引いて避けた。更に踏み込み、左拳を放つ。不知火は上体を反らせてこれも回避、そこからサイドステップで彼の側面に回りこむ。追って旋回する彼の足に、不知火は足払いをかけた。13

2021-10-22 21:39:00
劉度 @arther456

ダルスは重心をずらして足払いを受ける。しかしその時不知火は、ダルスの服の裾を掴んでいた。「ッ!?」投げられた。乱れた重心では対応できなかった。床に転ばされる。ダルスが起き上がる前に不知火にマウントを取られた。首を狙った刃を、ダルスは自分のナイフで受け止めた。14

2021-10-22 21:42:00
劉度 @arther456

「……なるほど」気を緩めれば喉を抉られる状態でも、ダルスの声は平静だった。「納得しましたか」「ああ。俺が教えた技だ」足払いを囮にした投げ。体得できたのは、ひとりだけだった。「お前、リュミエラか」「はい。お久しぶりです、教官」決死の思いで逃した少女が、ダルスに刃を向けていた。15

2021-10-22 21:45:00
劉度 @arther456

「なぜ、まだ戦場にいる。逃げろと言っただろう……!」生き残る術として戦いを教えたものの、彼女たちのような子どもに戦ってほしくなかった。トゥエリスタンが焼けたあの日、何とか逃せたごく僅かな子どもたちには、特に。「提督をお守りするためです」ハザエルの問いに、不知火が答えた。16

2021-10-22 21:48:00
劉度 @arther456

「提督だと?」柚木の顔が頭をよぎる。「まさか、アイツが……」「一度だけお伺いします」ナイフに体重がかかる。支える腕が震え始めた。「狙いは提督ですか?」「……そうだ」「わかりました。申し訳ありませんが、ここで止めさせていただきます」不知火はナイフを渾身の力で押し込んだ。17

2021-10-22 21:51:00
劉度 @arther456

それを待っていた。首をひねって刃を避け、膝と太腿で不知火の体を押し退ける!「ッ!?」体重を前に傾けすぎていた少女は、ダルスの上から転げ落ちた。ダルスは立ち上がり、不知火もすぐに体勢を立て直す。双方同時にナイフを構えた。仕切りなおしである。18

2021-10-22 21:54:00
劉度 @arther456

ダルスが先に動いた。順手に持ったナイフで鋭い突きを繰り出す。不知火はそれをナイフで受け流す。更にダルスは連続で突きを放つ。不知火はいずれも危なげなく避ける。数度の防御の後、不知火が反撃に出た。逆手のナイフから縦横無尽の斬撃が繰り出される。19

2021-10-22 21:57:00
劉度 @arther456

ダルスは少しずつ後ろに下がり、ナイフを避ける。時々ナイフで受け流し、鋭い金属音が部屋に響き渡る。数度の交錯の後、ダルスの腕が大きく弾かれた。こじ開けた防御が閉じる前に、不知火はダルスの首目掛けてナイフを突き出す。だが、ダルスは左手でナイフを握る腕を掴んだ。20

2021-10-22 22:00:01
劉度 @arther456

「ッ!」刃が彼の首筋数cm前で止まる。同時にダルスは右手のナイフを不知火の左肩へ突き出した。しかし、不知火もナイフを握るダルスの手を抑えた。互いに両手が塞がる。即座にダルスは不知火に足払いをかけた。「くっ!?」今度は不知火が倒れた。追い打ちで踏みつける。21

2021-10-22 22:03:00
劉度 @arther456

不知火は床を転がって足を避ける。更に、回転の勢いを利用してブレイクダンスめいた蹴りを放ち牽制、全身のバネを器用に使って、隙なく膝立ちになる。ダルスは追撃しようとしたが、その足が止まった。ナイフで斬りつけるには、不知火の位置が低すぎる。相手の高さにはうかつに飛び込めない。22

2021-10-22 22:06:00