ヴェルヴェット・ソニック #8

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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2021-10-21 21:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【これまでのあらすじ】 ニンジャスレイヤーVSカリュドーンの狩人! ユメミル・ジツを操るニンジャ、サロウとの戦いは、彼の爆発四散の後も継続していた。昏睡したニンジャスレイヤーのニューロンに、肉体を捨てたサロウの精神が侵食する。このままマスラダ・カイは消えてしまうのか。否!

2021-10-21 21:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【これまでのあらすじ】 ナラク・ニンジャの作り上げた迷い路をも突き破ったサロウ。深層意識の奥底、そこにあらわれたのは「サツガイ」の記憶。サロウは歓喜に狼狽し、一方、マスラダは強固なる意志の力を呼び覚ました!ローカルコトダマ領域からKICKされたサロウを、ナンシー・リンが引きずり出す!

2021-10-21 21:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

超新星爆発めいた球状のノイズがコトダマ空間をどよもした。サロウはこめかみに指を当て、崩れかけた己の姿を電子粉塵から再形成した。「それで……実際ここで、あンたが俺を止めるつもりかよ。YCNAN……伝説のハッカーね。笑えるぜ」「フフ……」対峙する二者を、黄金立方体の輝きが、照らす! 0

2021-10-21 21:33:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

緑色の電子格子は遥か下方、全方位にどこまでも広がっている。地平線は平らではなく、沖から眺める遠い都市のビル群めいた凸凹のシルエットが見える。それらはたとえばKOLやヨロシサンのサーバーであったり、詳細不明の不気味な闇カネモチの個人資産台帳の類。近づけば脳を焼かれる質量のしるしだ。 1

2021-10-21 21:38:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人が後にしてきたマスラダのローカルコトダマ空間は難破船めいて小さい輝きを残している。グローバルなコトダマ空間に無防備に接続されてしまっているからだ。しかし、その輝きも01ノイズの霧に閉ざされて見えなくなってゆく。ナンシーがサロウを引きずり出せば、全開放の必要も、もはやない。 2

2021-10-21 21:41:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「隠してるのは他のハッカーだろ?あンたの他にも、手出ししてる奴がいるよな」ナンシーの眼前、サロウはマスラダを見下ろし、顔をしかめた。「俺と獣の一対一の戦いに、卑怯な真似しやがって」「貴方の保護者も中々やってくれたわよ」ナンシーは指摘した。コトダマの地平で超自然の気配が蠢いた。 3

2021-10-21 21:45:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だけど、直接的な手出しは、どうやら出来なくなったようね……」ナンシーは謎めいて微笑した。サロウは怒りに目を輝かせた。「あンた、ダーリンに妙な事したんじゃないだろうな?」「わたしは、何もしてないわ。物言いが入ったんじゃない?」「何か知っているよなあ。その様子」「どうかしら」 4

2021-10-21 21:48:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「かわいそうに。ダーリン」サロウは悲哀に口を歪めた。「彼女、強がっちゃいるけど、俺ナシじゃいられないんだ。俺を甘やかす事で、この世に対してバランスを取っているンだ。この狩りは愛を深める機会だ。そういう哲学的で……高次元の関係なんだ。俺たちはさ」「素敵なのね。多分」 5

2021-10-21 21:52:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まあ、いいよ。もうマスラダ=サンには興味ない」サロウは霧に閉ざされたローカルコトダマ空間への継続PINGを切った。彼の肩の上には無数のクリオネじみた光の粒が浮かびあがった。「あンたはどこに”在る”?紐付いてる身体はどこだい?……ああ、フジサンね」サロウは速かった。「経由地が多いな」 6

2021-10-21 21:56:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはサロウに集中しながら、蝶の電子羽根を形成する。彼女の額を電子汗が流れ落ちた。「ビビる事ないじゃん。これぐらい出来て当然だろ。俺はユメミル・ジツのマスターだ。あンたが必死こいてニューロン速度で論理タイピングする間に、俺はいわば"魂の速度"だ」真横。耳元で囁く。 7

2021-10-21 21:59:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「近いわよ!」ナンシーが回し蹴りを繰り出すと、サロウの身体はトーフめいて砕け、クリオネめいた光と混じり合って、四方八方に笑いながら飛翔した。「とりあえず、あンたの自我をファックし終えたら、フジサンに行って身体を貰ってみようかな。ネオサイタマに居るボディは機械でフツーだからね」 8

2021-10-21 22:02:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「TAKE!」ナンシーは螺旋飛翔した。飛び散る鱗粉は01ノイズの棘を残像めいて、それぞれが歪んだ飛行軌道を描き、無数のクリオネに襲いかかった。「THIS!」「ハ!ハ!ハ!ハハハハ……」サロウの分裂体は笑いながら棘に貫かれ、砕かれてゆく。破片からグリッド椅子が生じ、そこに腰掛ける。 9

2021-10-21 22:06:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「すごい」サロウは手を叩いた。ナンシーは大きく羽ばたき、弾丸めいた軌道で飛び蹴りを繰り出した。「TAKE THIS!」椅子が砕け、少し離れた地点に新たな椅子とサロウを形成した。「ほんとうに」「TAKE THIS!」「伝説のハッカーって感じだよ」「TAKE THIS!」「あんなに遠くからなのに、この速度」10

2021-10-21 22:08:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「TAKE THIS!」ナンシーは新たな椅子とサロウを砕きながら、それを上回る速度で分身アカウントを作り出し、再生成されるサロウに個別に襲いかかった。「ン!」サロウは椅子を掴んで盾めいて掲げ、ナンシーの多重攻撃を防御した。背後頭上からナンシーが降ってきた。サロウは瞬きした。「マ……?」 11

2021-10-21 22:13:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「TAKE」ナンシーは電子両腿でサロウの首を挟み込み、弧を描いて飛翔、生成した電子コンクリートのイメージに脳天から叩きつけた。「THIS!」「グワーッ!」サロウはバラバラに砕けて飛び散り、横向きに倒れた姿で再出現した。ナンシーは両手で構えた改造デッカーガンのイメージの引き金を引いた。 12

2021-10-21 22:16:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAMBLAMBLAM!弾丸と化した負荷がサロウに複数、撃ち込まれる。サロウの身体がさざなみを打ち、負荷によってその苦悶のフレームレートが低下する。ナンシーは巨大な電子鎌を横薙ぎにした。当然、猶予など与えはしない。「TAKE THIS!」「011!」凍りついたサロウの背からサロウが生まれる! 13

2021-10-21 22:20:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

赤ん坊のサロウはバック転を打ち、ナンシーの連続鎌攻撃をかわす。幼児、少年のイメージを経て、元通りの姿となって着地すると、ワイヤフレーム再現された腿を肩に絡ませ、撫でながら囁いた。「もう一度投げてくれ。次はうまく受け身をとってやる」「コンティニューのチャンスは無くなっていくわよ」14

2021-10-21 22:23:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうかも……そうかな?」サロウは腿イメージをマフラーに変えて巻きつけ、首を傾げてみせた。「リセットしたりコンティニューできないなんて、物理世界でしょ。くだらないよね、低次元で。肉の枷ッてやつだ。俺、ニンジャになってから、そういうの無いんだよね!」「それは錯覚よ、残念だけど!」15

2021-10-21 22:29:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え?嘘だろ、YCNAN」サロウは驚いて見せた。「伝説のハッカーが、そんな物理に軸足置いた事言うワケ?ガッカリしちゃうな……」「むしろ、伝説のハッカーが至った実感を、貴方の知見に加えてみたら?」「だって、リスペクト出来ないもの」サロウは言った。「遅すぎるから」ナンシーの目の前だ。 16

2021-10-21 22:32:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは首を横に振った。「あ」サロウは苦笑した。彼の左右にシアンとマゼンダのナンシーが立ち、それぞれの腕に腕を絡めていた。「タイピング速度は確かな指標。だけど、それに方向を与えるのが、自我」イエローと化したナンシーは踵を返す。連行されるサロウを先導して、殿堂の電子扉を開く。 17

2021-10-21 22:40:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「ウォアー!」」」群衆めいたトラフィックの叫び。カジノじみた電子イメージの中、両腕を掴んだ二色のナンシーがサロウを放り込むと、彼はルーレットの回転盤の中で呆然と口を開けていた。「あ」サロウの足元が動き出した。回転盤が高速で駆動しはじめたのだ。「ヤバ……」サロウは走り出した。18

2021-10-21 22:46:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

必死で走る彼の身体は白い輝きを帯び、ボールめいて、仕切りをハードルめいて飛び越えながら、速度を増していった。ディーラーの衣装を着たナンシーがサロウを見下ろした。「そうね。確かに貴方は"魂の速度"なのかも知れない」「ちょっと……これ……」サロウは電子汗を散らし、必死で走る。 19

2021-10-21 22:51:25