茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【涙】についての連続ツイート

2011年8月27日 茂木健一郎氏による連続ツイート 「北の国から」「トイ・ストーリー3」「清原・桑田」「晩春」 【涙】について
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茂木健一郎 @kenichiromogi

「連続ツイート」をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています! 昨日はたくさん雨が降りましたね。一夜明けた今日は。。。

2011-08-27 09:20:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(1)人は、なぜ泣くのだろう。涙の生理的作用から離れて、泣くことには社会的な意味合いがある。子どもが転んで足をすりむく。一人でいる時にはだいじょうぶだったのに、母親の顔を見たとたんに泣き出す。大切な他者に見てもらって、初めて涙は完結するのである。

2011-08-27 09:22:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(2)人は真実に触れた時に、涙を流すことがある。『トイ・ストーリー3』。大学生になった子どもが、他の子におもちゃをあげる。置き去りにされ、子どもに遊ばれるおもちゃたちが、無表情のまま身体をだらんとしている。その時に何かの真実にカチンと触れて、人は泣く。

2011-08-27 09:24:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(3)涙は、つまり、自分が受け止められないくらい大きなものを受け止めている、というシグナル。処理しきれなくなって、あふれ出す。だから、そこには流れがある。今まで淀んで溜まっていたものが、さらさらと流れ出す。涙は、生命に至る潮流である。

2011-08-27 09:25:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(4)涙には、準備がいる。『北の国』からで、純くんが父親が必死になって用意してくれた泥だけの一万円札を見て涙するためには、その前に、トラックの運転手の青年がつっけんどんで冷たく見えた、という伏線がなければならない。「オレは受け取れん」。純情のどんでんがえし。

2011-08-27 09:27:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(5)すぐれた文学や映画に触れて流す涙も尊いが、一番価値があるのは、自分だけの涙。伏線が絡まり、展開が潜伏し、やがて、ジグソー・パズルの最後の一ピースがかちっとはまった瞬間のような涙。めったに来ないが、最も忘れがたい。自分だけの涙がいつか流れますように。

2011-08-27 09:29:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(6)西武対巨人の日本シリーズ。あと一勝で西武が優勝。最終回、巨人の攻撃もツーアウト。その時、突然、アナウンサーが「清原が泣いています。」一塁の守備に立っていた清原選手が号泣している。あれこそ、「自分だけの涙」。人生のジグソーパズルがかちっとはまった。

2011-08-27 09:31:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(7)巨人に入ることを熱望していた。ところが、PL学園の盟友、桑田選手が予想を覆して一位指名。清原は指名されなかった。西武に入り、その巨人との日本シリーズ。あと1アウトで勝つ、という時に、 感極まった。これこそが、自分の手でつかんだ、自分だけの涙。

2011-08-27 09:32:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(8)「泣ける」映画や小説で涙を流すのもいいが、本当に価値があるのは、自分だけの涙。そのためには、あがいていなければならない。傷つくこともある。裏切りもある。失意もどん底も。しかし、いろいろな流れが一緒になって、最後にきれいな涙が人生を報いてくれることもある。

2011-08-27 09:33:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

なだ(9)小津安二郎監督の『晩春』。結婚を前に、父親との最後の京都旅行で、せつせつと生きることを説かれて、娘役の原節子が最後にきらりと見せる涙。美しい顔に光った、ダイヤモンドの点。あの人の真情。人生の稲妻。本当に価値のある涙は、いつも不意打ち。

2011-08-27 09:36:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、涙についての連続ツイートでした。

2011-08-27 09:36:23