ラファエル・サバチニのオスマン海賊復讐譚『The Sea Hawrk 海の鷹(1915年刊)』

ラファエル・サバチニの海洋歴史冒険小説『The Sea Hawrk 海の鷹(1915年刊)』とフランク・ロイド監督によるサイレント映画版『シー・ホーク(1924年)』
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海鷹 @SakrelBahr

(続き)キリグルーの船で拘禁されたオリバーは、彼より先に拘束されていたジャズパー・リーと顔を合わせる 英国兵が乗り込んできた際に起きた小競り合いでジャスパーはライオネルを殺害し、その報復で捕まったのだという twitter.com/SakrelBahr/sta…

2020-12-26 21:15:13
海鷹 @SakrelBahr

(続き)微風しかない夜、オスマンのガレー船は手漕ぎの有利によってイングランド船を引き離して逃げおおせそうになるが、その時、ロザムンドを伴ったオリバーがランタンを手にして火薬樽の置かれたメインマストに向かう twitter.com/SakrelBahr/sta…

2020-12-17 21:12:07
海鷹 @SakrelBahr

ライオネルは己の罪が裁判で明らかにされ絞首刑になるよりは、レディを救出する戦いで名誉の死をとげたいと望んで先頭に立って乗り込んできたのだろう 数奇なめぐりあわせだが、お前が手を下したのは神の思し召しにちがいない pic.twitter.com/UFfuuZsR5g

2020-12-26 21:19:01
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海鷹 @SakrelBahr

神様なんて信じてるのかい?といぶかしがられてシャハーダをとなえるオリバーに、ジャスパーは「そいつは異教徒のお題目だろうが」と嫌な顔をする 「そういう話じゃない、単なるお題目ではなく、神を信じ、信仰に従って生きるというのはそういうことだろうといっているんだ」

2020-12-26 21:19:52
海鷹 @SakrelBahr

「けどそいつは異教の神だ、本当の神じゃないだろ」 「本当の神以外に神はいない、人がそれをなんと呼ぶかは大した問題じゃない」 「神がいるって信じてるなら怖くないのかい?地獄とか天罰とかよ」

2020-12-26 21:20:38
海鷹 @SakrelBahr

「私は全知全能の創造主が私のために用意した運命をまっとうしたのだ。神が計画した通りに生きたことに対する罰を恐れる理由があるか?」

2020-12-26 21:21:21
海鷹 @SakrelBahr

国教会からカソリック、イスラム教と、生き延びるために次々と改宗した末に、今やその全ての宗教圏から死刑相当の罪人とされ行き場を失ったオリバーは、そうなって初めて信仰とは何か、この不完全な世界に生み出され理不尽な運命に翻弄されて尚、人が神を信じ祈るのは何故なのかを真剣に考える

2020-12-26 21:22:53
海鷹 @SakrelBahr

可能な限り筋を通して己の人生をまっとうしたオリバーとしては、もはや悔いも恐れもなく、ただ静かに運命に身をゆだねようという境地になっている pic.twitter.com/UQGBvhaUIp

2020-12-26 21:24:14
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海鷹 @SakrelBahr

さて、物語はいよいよ大詰め サバチニ作品名物「クライマックスは裁判で」という訳で、即時処刑を執行するつもりだったキリグルーをロザムンドが必死に説得し、簡易船上法廷が開かれることになる pic.twitter.com/fD56iW10sg

2020-12-26 21:25:45
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海鷹 @SakrelBahr

※海賊行為 ※ピーター・ゴドルフィン殺害 ※英国領に侵入し身分ある男女を拉致して異国に連れ去った罪 どれひとつとっても死刑に値する重犯罪なのだが、はたしてオリバーの運命や如何に? …という訳で流石に大オチまで書くのは控えますが、ここからちゃんと理にかなった見事な結末を迎えるのですよ

2020-12-26 21:27:50
海鷹 @SakrelBahr

原作版のラストシーンは、晴れやかで勇壮な『海賊ブラッド』や、人を食ったような『スカラムーシュ』とも違う、しみじみとした結びなのですが、映画版はいかにも大衆娯楽作品らしい大団円になっております(本編完) pic.twitter.com/u4SUhVCut7

2020-12-26 21:32:41
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まとめ

海鷹 @SakrelBahr

(まとめ) 1898年、23歳の時にに短編小説が雑誌掲載され 1902年に雑誌連載を単行本化した"The Lovers of Yvonne"が刊行されて以降、劇作ふくめて概ね筆一本で食えてたサバチニ先生でしたが、国際的大ベストセラーは1915年の"The Sea Hawk"が初めて twitter.com/SakrelBahr/sta…

2020-12-26 22:04:06
海鷹 @SakrelBahr

長々と紹介してきた通り、古典冒険物語の黄金パターンを踏襲しているだけでなく、後のエンタメで多用される展開の源流にもなっている娯楽性の塊みたいな作品で、「そりゃ売れるわ」という感じ

2020-12-26 22:07:13
海鷹 @SakrelBahr

*有能なのに周囲からは認められない主人公が「異世界」に行って英雄になる *苦労人の主人公が外面のいい弟に陥れられ、無実の罪で故郷を追放される …「なろう系」と馬鹿にされる物語パターンですが、こういうのは大昔からある王道だし

2020-12-26 22:09:30
海鷹 @SakrelBahr

*誤解や陰謀で破局した元カノに復讐しようとするヒーローとの復縁もの *西洋娘がイスラム圏にさらわれて、最終的にさらった当人と結ばれる「シークもの」の原型 *危機を乗り切るために一時的な形式結婚をする男女のすれ違いロマンス …このあたりは後のハーレクイン系であるあるネタ化する作劇

2020-12-26 22:13:03
海鷹 @SakrelBahr

不満点はオスマン海賊としての活躍があまり描かれていない所ですが、そこガッチリ書き込むと英国人読者的には同情できない主人公になっちゃうからかもしれない……そのあたりは後々"The Sword of Islam"でリベンジしてますし

2020-12-26 22:14:16
海鷹 @SakrelBahr

あとブラッド船長やアンドレ・ルイに比べると主人公オリバーの魅力が薄いのは難点ですが、その分、フェンジーレ様とジャスパー・リーが輝いてるので…

2020-12-26 22:15:59
海鷹 @SakrelBahr

復讐譚というジャンル上、主要キャラの多くが過去を向いている中で、未来を勝ち取るために戦っているフェンジーレ様は輝いていらっしゃる

2020-12-26 22:18:57
海鷹 @SakrelBahr

『シー・ホーク』というとエロール・フリンの魔改造バージョンの方が有名になっちゃってるんですが、ここらで原作忠実バージョンをネット配信ドラマ化とかしてくれませんかねぇ……そしてどっかで原作の完訳版を

2020-12-26 22:20:24
海鷹 @SakrelBahr

"The Sea Hawk"は『海の鷹』の訳題で昭和14年に改造社の世界大衆文学全集の一冊として出版されていますが(訳:小田律)、どうもこれ、完訳じゃないっぽいんですよね

2020-12-26 22:21:05
海鷹 @SakrelBahr

その後も小田訳ベースで児童向け翻案した中山光義の『海のたか』が、講談社の世界名作全集(昭和31年)と小学館の少年少女世界の名作イギリス編(昭和49年)に収録されて、そちらは割と手に入りやすいんですが……端折りすぎてオリジナル版の味がなくなってます

2020-12-26 22:22:09
海鷹 @SakrelBahr

私はリア小の頃に講談社版を読んだんですが「主人公の復讐心がコワイ」という印象しか残ってません……でも『スカラムーシュ』のジュブナイル版は読んだことすら忘れてるくらいなので、インパクトがあったのは確かなんだよなぁ(一応終わり) pic.twitter.com/EO1bun93w1

2020-12-26 22:24:16
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