エマニュエル・トッドと家族類型

面白いけどわかりにくいトッドの思想について憶測と妄想を交えながらつぶやきます
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孫二郎 @344syuri

支配的な慣習となる(エイベックス・ファミリー)。絶対核家族のもとでは人間を不平等な存在と見ることに躊躇いはなく、ネイティブアメリカンの土地を奪うことや黒人奴隷を鞭打つことに良心の呵責はない。異なる人種間での婚姻も少なく、人種は混ざり合うことなくエスニックグループを形成する。

2022-01-06 03:02:14
孫二郎 @344syuri

平等は理念としては存在するが、それは「白人の中での平等」として現れてしまう。アメリカに根強い人種差別感情は家族類型からも説明できるのだ。 政治としては民主主義の総本山であり、労働社会主義・国際協調主義の民主党と自由主義・自由孤立主義の共和党の安定した二大政党制である。

2022-01-06 03:02:14
孫二郎 @344syuri

ラテンアメリカ全般 ポルトガル植民地だったブラジルはポルトガル中部の家族形態を反映して平等主義家族、他のイスパノアメリカはスペイン中部の平等主義核家族を母体とし両者とも全般的に平等主義核家族

2022-01-08 09:25:18
孫二郎 @344syuri

クーデターと軍事独裁、暴力的デモはどの国でも珍しくない現象である。処刑や殺人事件も多く攻撃性の高さを感じられる。個人主義的でもある。 平等主義の要素がどこにあるかというと、混血児の多さである。アメリカでは白人と黒人のカップルはまだ少ないが、中南米では混血児が普通にいる。

2022-01-08 09:25:18
孫二郎 @344syuri

目の前の異性が同じ人間であるとの確信がなければ結婚・出産にはなかなか踏み切れないものだが、中南米人はそのためらいを軽々と超えていく。

2022-01-08 09:25:18
孫二郎 @344syuri

政治的には右派がピノチェトらに代表される自由軍国主義、左派がカストロやチャベスの無政府共産主義。 宗教的にはカトリック・キリスト教が信仰されているが、政治面では存在感が薄い。

2022-01-08 09:25:19
孫二郎 @344syuri

カナダ 「家族システムの起源」はまだユーラシア編しか刊行されていないので、「移民の運命」に取り上げられていないサブサハラ諸国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドについては「世界の多様性」まで遡る必要がある。その巻末の分布図を見ると、カナダは絶対核家族に振り分けられているが、

2022-01-16 17:47:46
孫二郎 @344syuri

東部ケベック州だけは直系家族の色で塗られている。政治的には新自由主義の保守党と再分配重視・多文化主義の自由党が二大政党として屹立している。一方フランス語を話す直系家族のケベックではケベック人のナショナリズムを代表するブロック・ケベコワが無視できない勢力を持ち、左派新民主党の勢力も

2022-01-16 17:47:46
孫二郎 @344syuri

強い。 社会民主主義に加え、地域政党とはいえ自民族中心民族主義が登場するので、なんとなく直系家族の影を感じるように思われる。

2022-01-16 17:47:47
孫二郎 @344syuri

オーストラリア 『世界の多様性』では絶対核家族。政治的には保守連合と労働党による二大政党だが、保守連合は政局によっては解消されることがある。 保守連合のうち国民党は伝統的に農村部を代表し、自由党は新自由主義経済を政策の柱とする。労働党は社会民主主義を基盤とする。

2022-01-17 20:48:18
孫二郎 @344syuri

保守連合の解消可能性をどう見るかだが、むしろ産業の二本の柱である畜産業と鉱業の対立の接点に自由貿易主義が浸透していると見る方がいいのかもしれない。家族型から説明することは難しいように思える。

2022-01-17 20:48:18
孫二郎 @344syuri

ニュージーランド 「世界の多様性」によると絶対核家族。社会民主主義の労働党と自由経済主義の国民党が強いが、小選挙区比例代表併用制を採用しているため中小さまざまな政党が存在感を発揮している。 基本的には絶対核家族らしい政党構成だが、女性の地位が高い点は興味深い。

2022-01-18 19:09:42
孫二郎 @344syuri

南アフリカ 『第三惑星』でサハラ以南のアフリカは一緒くたにされアフリカ・システムと名付けられているが、当然この広大なエリアを一つの類型で括るのは無理がある。これは今後刊行されるであろう『家族システムの起源』アフリカ篇で修正されるであろう。

2022-01-22 17:11:02
孫二郎 @344syuri

ところで、サブサハラ諸国の中で唯一絶対核家族が含まれているのが南アフリカである。このエリアは当初オランダに、後にイギリスに支配されており、絶対家族的な平等主義への無関心が特徴である。アメリカやオーストラリアと同様、かつては人種差別が公的に認められていた。

2022-01-22 17:11:03
孫二郎 @344syuri

現在はアフリカ随一の安定した政治と経済を誇り、民主主義が浸透している。アフリカ民族会議が主導する一党優位制であるが、多民族国家であることを反映してか厳格な比例代表制でもあり、中道左派のアフリカ民族会議の他に中道の民主同盟、マルクス・レーニン主義の経済的解放の闘士などの中小政党が

2022-01-22 17:11:03
孫二郎 @344syuri

議席を有する。コモンウェルス同士で比べると保守が弱いように思われる。

2022-01-22 17:11:04
孫二郎 @344syuri

一段の終わり ここまで見てきた国ごとの家族と政治のあり方について、トッドは家族を4種類、イデオロギーを3種類に分けて把握している。(新ヨーロッパ大全p258) しかし家族制度から政治制度まで等号で結べるほどの精度ではないこと、ただし傾向としてはやはり存在することは分かった。

2022-01-29 06:37:33
孫二郎 @344syuri

トッドは『新ヨーロッパ大全』を上梓した後も旺盛に研究を続けており、中にはかつてと異なる評価をするに至った要素が少なからず含まれている。『シャルリとは誰か?』ではゾンビ・カトリシズムという形骸化した宗教の残照にスポットを当てるなど、道具立て自体も変化している。

2022-01-29 06:37:33
孫二郎 @344syuri

また単純に筆者の浅学非才によって把握しそびれている内容も多いだろうと思う。そういうわけで、内容がひと段落したこのタイミングをもっていったん筆を置き、新刊を待ちつつ既刊を読み直すこととしたい。ここまでお付き合いいただいた奇特な皆さま、どうもありがとうございました。

2022-01-29 06:37:34
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