【R-18】アップルパイとシガーなキス

深海さかな @dzurablk_kai

ただラップランドが数日姿を眩ましたことでテキサスが（表向きはそんな様子は見せないにせよ）情緒不安定になったことは一度や二度ではないし、何より今回のラップランドの不在期間は長かった。故にテキサスの内心がどうあろうが、決して平穏なものではないことは明白だった。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

エクシアはしかしながら、そんな相棒に対して「何かあったのか」「仲間なんだから話してくれ」などという有り体な言葉を口にはしない。そんな表面的な言葉で飾るような仲ではないことは、二人が誰よりもよく知っている。 #突発アークナイツSS

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「…言いたいことがあるなら言え」 俄かに低くなったテキサスの声音にも、エクシアは動じない。 「それはテキサスの方なんじゃないの？　私に聞いてほしいことがあるのは」 テキサスは今だエクシアと目を合わせようとはしない。だが殺気じみた圧迫感はやや密度を増した気がする。 #突発アークナイツSS

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しばし、沈黙が二人の間を支配した。 最後に問いかけたのはエクシアだが、テキサスにはそれを答える気が端から無い。あればもっと早くにエクシアに告げていたのだから。親友にして相棒のエクシアにはその自負がある。だから沈黙を打破する機会をただ待った。 #突発アークナイツSS

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エクシアが空のビール缶を置くのと、テキサスがピザを放り出して席を立ったのはほとんど同時だった。 「あ、私のも…」 「もう次が最後の一本だ」 エクシアの気のせいだろうか、ほんの少しだけ言葉尻から剣呑さが消えた気もする。 #突発アークナイツSS

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そうして最後のビールを手に戻ってきたテキサスは、先ほどまでの席とは違いエクシアの隣に腰を下ろした。 「一緒に、飲んでくれ」 そう零したテキサスの声は、酷く心細そうだった。 さっきまでは誰彼問わず牙をむいていたのが、今では捨てられた犬のように頼りない。 #突発アークナイツSS

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まったくこれではまるで借りて来た小型犬ではないか。いや、確かに狼もイヌ科の獣ではあるが。 群れを嫌いつつもその実寂しがり屋で、人の心を読むことに長ける。テキサスのそんな性格は確かに、犬よりも狼のそれ。舐めて掛かると痛い目に遭うのは火を見るより明らかだ。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

だが、そこまで相棒の胸裏を読めたエクシアにも、その後のテキサスの行動は想定外だった。 「ああ、もちろん…」 そう言い終わらないうちにエクシアの口元は、テキサスの唇で塞がれていた。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

永遠にも感じられる沈黙。 エクシアを求めるテキサスからの圧はゆっくりと重みを増し、唇から胸元、やがて上半身全体をエクシアに委ねていく。 「て、テキサス…？」 ソファーに半分押し倒される形になりながら辛うじて呼吸と言葉を継いだエクシアが目にしたのは、 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

これまで見たことの無いほど上気したテキサスの相貌。 「頼む、もう少しだけ…」 まだプルタブも開けられていないビール缶がチェス版柄の絨毯に落ちるや否や、テキサスの手がエクシアの両手首を押さえつける。今度の接吻はむしゃぶりつく以外に相応な言葉が無いほど激しかった。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

エクシアはせめて抵抗の意思だけは示そうと、未だ自由な下半身でテキサスを押し返そうと試みたが、テキサスはしなやかな動作でエクシアに馬乗りになってしまう。 彼女の身体能力の高さは相棒のエクシアが一番よく知っている筈だったが、これには驚きを禁じえなかった。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

細身で華奢に見えながらしなやかな体捌きはまさに捕食者のそれ。抵抗の手段は万策尽きた。 別にエクシアも唐突な同性からの性行為が嫌なわけではない。そういった行為には興味こそあれど嫌悪感はないし、ましてや一番の相棒であるテキサスから求められたことは嬉しくさえある。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

だが、それでも心の片隅に居座る違和感のような、このまま流されてはいけないという危機感が拭い切れなかった。 「…サス！　テキサスってば！」 何度か試みてようやく、背筋をバネに全身を使ってテキサスの上体を跳ね返すことに成功した。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

「…イヤだったか？」 潤んだ瞳でテキサスが問う。口元を粗野に手の甲で拭いながら。 「イヤじゃない、けど…なんでなのかを聞かせてよ」 敢えて問うまでもなく、エクシアにはその理由はわかっているし、受け入れる準備だってある。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

だがそれを自分の口から言わずに、なし崩し的に行為に持ち込む今のテキサスは卑怯だ。 「お前が欲しいからだ」 「だから、どうしてさ」 「それは…」 言い淀むテキサス。まるで悪戯がばれた子供のような、バツの悪そうな表情だ。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

「私は…私だってテキサスのことは好きだよ。色んな意味で…でも、テキサスの方はどうなのさ？」 「私もエクシアが好きだ」 その言葉を聞いた瞬間、エクシアは下腹部が熱く燃えるのを感じた。 「本当に？」 「本当…だ」 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

今にも泣き出しそうな顔で、縋るように見詰めてくるテキサス。その返答にあった僅かな間の意味も、彼女が泣き出しそうなほど心細い理由も、エクシアは知っている。それでもなお、テキサスがエクシアに卑怯な頼みごとを彼女らしからぬ強引さで持ちかけてくる心情も。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

だからエクシアは、テキサスを抱きしめた。 「…じゃあ、仕方ないよね。お互いに好きなんだから」 腕の中でうなずくテキサス。それ以上の理由は要らなかった。 テキサスの太腿がエクシアの鼠経部に割り込む。膝を使った強引な愛撫にエクシアがくぐもった声を漏らす。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

秘所は既にしとどに濡れているが、テキサスの責め苦は止まない。 「なあテキサス…もっと、優しく…」 消え入りそうな声で懇願しながら、エクシアは自らの顔が紅潮するのを感じずにはいられなかった。好きな相手に甘えることが、こんなにも恥ずかしいことだとは知らなかった。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

「優しくか…？」 それを知ってか知らずかテキサスは、エクシアの耳元に口を寄せると吐息混じりに囁いてみせた。エクシアの後頸部が甘く痺れた。テキサスはそのままエクシアの耳の後ろやうなじを、まるで本物の狼がじゃれるように鼻先でくすぐってみせる。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

その甘く蕩けるような愛撫に、エクシアの脳裏は既にホワイトアウトしかけていた。 テキサスは愉しんでいるのだ。エクシアを責め立て、追い込むことで。本当にずるいとエクシアは思った。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

テキサスが本当は誰を求めていて、エクシアの帰らぬ思い人が本当は誰なのか。それを知っていながら、ウサ晴らしのように身体を求めてくるその身勝手さも。 頭ではそれをわかっていながらも、テキサスのことを拒絶できない自分の心情も。どちらも酷く身勝手で、卑怯だ。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

お互い長い付き合いだ、相手の考えていることなど手に取るように分かる。同じだ、テキサスも私も。同様に卑怯で身勝手で、その上酷く寂しがり屋で。だから目の前にある快楽から逃れることなどできはしないのだ。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

しかしたらこの酷く不道徳で倫理にもとる行為は、エクシアを堕天させる類のものなのかもしれない。明日、朝起きたら頭上の光輪や背中の羽根が黒く染まっていたらどうしよう。そんな考えが一瞬頭をよぎったが、テキサスの手でそうさせられるのなら、それも悪くない気がした。 ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

もしそうなったら、いっそ髪色もテキサスのように黒く染めよう。 「テキ…サスぅ…」 テキサスの丹念な愛撫はエクシアの内腿から背筋、首元にも及び、既にエクシアは言の葉を継ぐことも困難になりつつあった。 ＃突発アークナイツSS