【R-18】アップルパイとシガーなキス

深海さかな @dzurablk_kai

ご注意 ・テキサス×エクシアの百合妄想の書き散らしになります ・十中八九濡れ場に突入しますがどの程度まで深入りするかは私にもわかりません ・弊社にはまだテキサスが着任していないので妄想、ないし公式との相違点がおそらくは過分に含まれます ＃突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

その日は珍しく平和的に仕事が終わり、ペンギン急便の二人は日の暮れた龍門郊外で帰路に就いていた。 車窓を流れる廃ビル群が規則的に星空を遮る様を、ぼんやりと眺めるエクシアと、無言でハンドルを握るテキサス。 4人乗りのミニクーパーの車内に、会話は無い。 #突発アークナイツSS

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「あ、一本ちょうだい」 おもむろに口を開いたエクシアの視線の先には、フロントガラスから視線を落とすことなくテキサスが取り出した、チョコレート菓子の袋があった。 エクシアは差し出された袋を開けるとチョコでコーティングされたプレッツェルをまずはテキサスの口に一本、 #突発アークナイツSS

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次いで自らも一本口にする。 「二人きりなんだからタバコくらい吸ってもいいのに」 「…車に臭いがつくだろ」 そう言いつつもテキサスはガリガリと代用タバコをかみ砕くと、今度は緑色のタバコの箱を取り出した。 #突発アークナイツSS

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「なんかこうして二人で仕事するのも、久しぶりだね」 「そうだな」 「いつもは後ろの席が騒がしいから、なんか変な感じ」 そう言って笑うエクシアを横目に、テキサスはカクテルの香りの紙巻にマッチで火を点す。 #突発アークナイツSS

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車内に立ち込めた紫煙が、すぐさま薄く開けられた窓から吹き込む夜風に希釈され、後方へ流れていく。 ボヘームのダブルモヒート。 テキサスはタバコこそ吸わないが、相棒が好んで口にするこの銘柄のカクテルを模した香りは嫌いではなかった。 #突発アークナイツSS

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「それで、これからどうするのー？」 テキサスが所有権を放棄したスナック菓子を独り占めしたエクシアが、相も変わらず能天気な声音で問いかける。 「ボスの話ではレユニオンの残党がまた活動を再開したらしい。事務所付近の道は龍門側が封鎖していて戻れない」 #突発アークナイツSS

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「ロドスは？」 「作戦行動中で出航したと。今はどこにいるのかがわからない」 どうやらこのままでは二人は、今夜の宿に辿り着けそうになかった。 「この近くには隠れ家もないし…困ったなぁ」 #突発アークナイツSS

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食べきったスナックの袋を窓から捨てるエクシアの声音には、言葉とは裏腹に深刻さは微塵も感じられない。 まあ、ペンギン急便に来てからは車中泊になることも少なくはなかったし、寒さと突発的な敵の襲撃さえなんとかできれば車中泊も大した問題ではなかった。 #突発アークナイツSS

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幸い後ろの席は空いているからシートを最大まで倒して眠れるし、ミニクーパーの手狭な車内も二人の体温を逃しにくいという意味では利点ではある。あとは夜襲に対する見張りを交代で立てれば…そう一人試案していたエクシアに、唐突にテキサスが声をかけた。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

「この先の倉庫街に、泊まれる場所がある」 「え？　この辺に隠れ家なんてあったっけ…」 「私の個人的な隠れ家だ」 意味深な言葉の意味をエクシアが問い返すより早く、テキサスはハンドルを繰って廃墟の裏路地へと進路を変えていた。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

龍門のダウンタウンに地図は無い。あるのは各地区の住民が幾度も建築物の上に更なる違法建築を重ねていった結果、迷路と化した立体的構造物と、それを取り締まる当局が区画整理の名のもとに残した空き地だけだ。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

だがその空き地もすぐさまバラックに置き換えられ、屋台が立ち、やがては簡易的なプレハブ建築に、といった具合に街そのものが生物のように絶えず変化していく。 だからこの街の道を正確に把握しているのは、日夜を問わず迷路を駆け抜けるペンギン急便をおいて他にいなかった。 #突発アークナイツSS

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テキサスが車を止めたのはそんな街の代謝が絶えて久しい、人のほとんどいない街区だった。 テキサスは廃ビルの一つ、半地下になったガレージにミニクーパーを停め、シャッターを下ろす。直後、明かりが灯った。 「こっちだ」 #突発アークナイツSS

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一瞬、明かりに目を眩ませていたエクシアがテキサスの声の方を見やると、薄暗がりの奥に上階への階段があるのがわかった。 「すごいね、ここ」 「そうか」 それだけ返すとテキサスはさっさと歩きだしてしまう。 #突発アークナイツSS

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そのぶっきらぼうな口調は、彼女とは長い付き合いになるエクシアでも見たことがない素っ気なさだった。 「待ってよテキサスー！」 そこら中に転がるコンクリート片に足を取られながら後を追うエクシアは、相棒の態度に微かな違和感を覚えながらも、それを言葉には出せなかった。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

通された部屋は予想に反して、綺麗だった。 廃墟の一部屋でありながら、床や壁、天井は綺麗に補修され、白を基調とした壁紙と暖色系の間接照明が明るくも眩しすぎない、良い塩梅の光量を湛えている。 備え付けの棚やダイニングカウンター、 #突発アークナイツSS

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置かれたソファーやテーブルは黒を基調として色が揃えられており、さながら高級マンションの一室と言っても過言ではない洒落っ気である。 それを見たエクシアの第一印象は「チェス盤の上みたい」だった。 #突発アークナイツSS

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「何か食うか？　冷凍食品しか無いが」 「テキサスに任せるよー。あ、あとお酒も！」 言い終わる前にハイネケンの缶を投げて寄越された。 「ここって前からあったの？」 「別にそういうわけではない。ただ、事務所やボスの隠れ家以外にも拠点を用意しておきたかっただけだ」 #突発アークナイツSS

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「ふーん…」 そこで会話は途絶えてしまった。 エクシアは何も言わずにビールを口に運ぶ仕草で間を持たせ、テキサスは二箱目のタバコのフィルムを乱雑に開けながらオイルライターのマッチロックを擦っている。 部屋に染み付いた紫煙の香りは濃かった。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

テキサスがこの部屋をかなり前から使っていたのは自ずと明白だったが、エクシアは何も咎めずに黙って冷凍ピザが運ばれてくるのを待った。 「ロドスにはいつ戻れるんだろうね」 「さあな」 「あたしたちがいなかったら戦力が足りないから、案外早く逃げかえってきたりして！」 #突発アークナイツSS

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「そうかもな」 中心部が生温い冷凍ピザを口に運ぶ二人の会話は、口にしているもの以上に薄っぺらだ。 思い返せばテキサスのこういう態度は今日の仕事に始まったことではない。数日前にロドスにいた頃からその片鱗は見せていた。 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

そんなテキサスの不安定な情緒は、付き合いが長く唯一無二の親友たるエクシア以外には簡単に見破れるものではない。そしてそれを招く原因にも、エクシアは心当たりがあった。 「ラップランド、まだ帰ってこないんだっけ？」 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

その名前を口にした途端、味気なさそうにピザを齧っていたテキサスの動きが止まった。 「…なんでアイツの名前がそこで出るんだ」 「だってもう何日も前から行方不明なんでしょ？　って言っても、どうせまた怪しげな仕事に行ってるだけだろうけど」 #突発アークナイツSS

深海さかな @dzurablk_kai

怪しげな仕事なら私たちも同じか、と笑って見せたエクシアに、テキサスは敢えて無言で応えた。それは明らかに図星を突かれた証拠でもあり、その沈黙には怒りにも似た何かがあった。 テキサスとラップランドの過去については、エクシアでさえも詳しくは知らない。 #突発アークナイツSS