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田中さんご確認用 タワマン文学大賞

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R.Ninomiya @1r_mitsuryo

@ebimank @c___i___b @pakopakoazarash 「地主さん、わがまま言わないでください。これは"高層"米です。気圧の変化も計算して品種改良して作られたものだ。そんなはずはないんです」「まずいものはまずいんだ!昔のあの米を食いたい。」

2021-11-24 15:19:48
R.Ninomiya @1r_mitsuryo

@ebimank @c___i___b @pakopakoazarash 「地主さん、高層米は美味しいんです。現にみんな高層で生活している人間は満足しているでしょ?」「やっぱり人は地に足をつけて生きなきゃだめなんだ。あれを見ろ」地主は窓を指さした。そこには甲府を一望できる絶景というに相応しい眺望が広がっていた。

2021-11-24 15:19:58
R.Ninomiya @1r_mitsuryo

@ebimank @c___i___b @pakopakoazarash 「富士の山があんな小さくみえる。子供のころから見てた富士はもっと大きく立派に見えた。こんな高いところから見るものじゃないんだ」「付き合ってられませんね。失礼します」この会話を機に飢野と地主は疎遠になっていった。

2021-11-24 15:20:10
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 「…さん。飢野さん!」 ハッとして振り返るとピッケルをついてサングラスをかけた男が立っていた。飢野と一緒に土地をまとめていたAKUNOだった。 「さすがですね〜あの地主さんよくまとまりましたね〜」嫌味のない素直な賞賛に飢野は再び意識を現代に向けた。

2021-11-24 15:21:12
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 飢野の目的はVVIEN TOWER KOFUを建設だけに止まらなかった。真の目的は地主が持て余している地権者住戸のリーシング及び売却にあった。 もう梅の木の世話をする必要もないし、山に入ってどこだかわからない境界杭を探す必要もない。自分が一段ずつ不動産業界の天に上っていることを実感していた。

2021-11-24 15:21:28
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 「今日もいっちょやりますか!」 自分に喝を入れるように愛人のレーズンをきゅっとつまむと飢野はパーティーラウンジを後にし地主の元へと向かった。この仕事が終われば人権を取り戻せる。成功者へ近づいている高揚感を抑えるように大丈夫、大丈夫と心の中で唱えているうちに地主の部屋の前に到着した

2021-11-24 15:22:07
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 「地主さーん?飢野です。地主さーん?」フルオーダーのスリーピースにピカピカに磨き上げられたオールデンを履いた飢野が地主の家の梅の木を加工して作った特注の扉を叩く。今日もいつものように誰に見せるでもないコントを地主と繰り広げてから本題に入るのは多少億劫だが仕方がない。

2021-11-24 15:22:26
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 再び扉を叩こうとするとガチャっと鍵の開く時間がした。瞬間オールデンをわずかな隙間に差し込む。こんな靴、いくら傷んでも構わないほどの額を地主と始まる最後の取引で飢野は見込んでいた。 「あ、地主さん!」見知った顔をみて思わず飢野の頬が綻ぶ。 「誰だぁ?おめえ」

2021-11-24 15:22:47
峰 不二夫 @ebimank

@1r_mitsuryo @c___i___b @pakopakoazarash 次の瞬間ダーン、と乾いた音がソープランドピンクの内廊下に響き渡った。 地主が倒れ込んだ飢野の顔を覗き込む。 「誰だぁおめえ」 長きに渡る等価交換、そこからの建築年数、その全ては地主の意思判断能力を失わせるのに十分な時間だったのだ。薄れゆく意識の中で飢野は梅の花の匂いを嗅いだ気がした

2021-11-24 15:23:11
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash ーー数時間後 (…眩しい) 瞼の上から刺す強烈な光で目が覚めた。どうやらここは天国では無いようだ。 「意識を取り戻したようだな」 聞き覚えのある声が耳に届く。 「…AKUNOか?」 「まだ死んでもらっちゃ困るんだよ、飢野さん。彼のペントハウス、あれに食い込めるの、飢野さんだけなんだよ。」

2021-11-24 15:24:27
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash 声の方を振り向こうとして、視界の右半分が塞がれている事に気づいた。 「…??」 「ああそれね。ゴメンゴメン、吹っ飛んじゃってて、修復不可能だったから。」 ピッ AKUNOのピッケルから電子音が響くと ヴォン と起動音がして右眼にビジョンが現れた。 「カッコいいでしょ。特注よ。特別に…」

2021-11-24 15:25:09
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash 訊いていられなかった。その必要がなかった。フラつきながら部屋を飛び出す。 ここはVVIEN TOWER 042階の秘密改造室だ。サイボーグ空気嫁を開発し、闇ルートで流通させる為に作った部屋。 まさか自分がその手術台に乗るとは思っていなかったが。 飢野は死んだ。死んだ筈だが蘇った。することは1つだ。

2021-11-24 15:25:41
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash ピンポーン 「地主さーん?飢野です。地主さーん?!」 ピンポーン 「居るなら開けてくださいよ!俺、気にしていませんから!大丈夫!大丈夫!」 ガチャ 返事が無いので扉を開ける。部屋は案の定も抜けの殻だった。現場検証の跡がある。彼は逮捕されたのだ。そして恐らくもう、戻っては来れない。

2021-11-24 15:26:14
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash どこだ。あれはどこだ。機械の右眼が飢野の思考にリンクしてスキャンをはじめる。 ゔぃ〜〜〜ん ゔぃ〜〜〜ん あった。やはり。仏壇の位牌の裏。そこにこの部屋の権利書データが入った純金のSDが保管されていた。 ゔぃ〜〜〜ん 端末に差しもせず、光線により外からデータを書き換える。 完全だ。

2021-11-24 15:26:53
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash そこからは順調だった。首都圏最高峰のペントハウスは信じられないような高値で売れた。 幾重にもアンコを挟んだ真の買主は、T国の富豪とも研究期間と聞いたが、もはや関係のないことだ。 有り余る程の金と、鈍色の義眼。 ゔぃ〜〜〜ん ゲルマ光線による超振動で、愛人も液状化して湾岸した。

2021-11-24 15:27:26
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash ペントハウスの転売を祝し、祝勝会が開催された。場所はいつもの072階のパーティールームだ。 ダイレクトスカイビューパノラマビッグウインドウから、かつて梅園だったあたりを眺める。 そうだ、あそこでバイオレーズンを培養しよう。きっと儲かるぞ。 ニンマリとしながら高層米寿司を口に放り込む。

2021-11-24 15:27:58
なめ茸 @c___i___b

@ebimank @1r_mitsuryo @pakopakoazarash すると、そのシャリの一粒が、しかしこの時、飢野の喉にピタリと貼り付いた。 いくら咳込んでも退かない。そう、まるで粘り腰の地主のように。 まさか、俺が、こんな所で。 「誰だ、おめえ?」 ふと尋ねられた気がした。そして目の前が暗くなる。 そのまま遠のいた意識は、2度と戻ることはなかった。

2021-11-24 15:28:35
かうぴー120円 @pakopakoazarash

@c___i___b @ebimank @1r_mitsuryo 飢野の葬式は河辺(かべ)にある火葬場でひっそりと行われた。 愛人とブローカー仲間だけが参列した。 轟々と音を立てながら飢野と梅の枝の入った棺が燃え始める。 「あいつの財産って...てる?」 「あの愛人さんが...よ」 「媒介もら..」 静かな会場にブローカーのひそひそ声だけが広がった。

2021-11-24 15:29:00
かうぴー120円 @pakopakoazarash

@c___i___b @ebimank @1r_mitsuryo ビーッビーッビーッ 突然のサイレンに会場が騒然とした。 飢野の入った火葬炉の火が落ち棺が表に飛び出した。 「ヒィッ!」 恐る恐る愛人が棺を覗き込むとそこには鈍色のボディを晒した飢野だったと思われる躯体があり愛人は思わず悲鳴を上げた。

2021-11-24 15:29:26
かうぴー120円 @pakopakoazarash

@c___i___b @ebimank @1r_mitsuryo 愛人は飢野の右眼が義眼ということは聞いていたがサイボーグだということは知らなかった。 「あれ...?ボタンがある...。」 愛人は義眼の燃え落ちた飢野の右眼に金色のボタンを見つけてしまった。 そこにボタンがあれば押したくなるのが人間の性だ。 愛人は恐る恐るそのボタンを押し込んだ。

2021-11-24 15:29:51
かうぴー120円 @pakopakoazarash

@c___i___b @ebimank @1r_mitsuryo プシューーーッ!!! 「「「!!!???」」」 飢野の鈍色のボディの関節という関節から蒸気が噴き上がる。 フォン 軽快な電子音と共に会場が少し明るくなる。 ブローカー仲間のニヤリと笑うAKUNOが持つピッケルの先からでたホログラム概要書のせいだ。 「海喜館 40億(税別) 引渡相談」 Fin

2021-11-24 15:30:22

No.12

リンク note(ノート) 全権代理戦争|峰不二夫(ツーブロちゃん)|note ※PDFダウンロード ☆ 「それでは賛成多数により、ヤマダモミジくんを我がタワマン全権代理人と認める」 割れんばかりの拍手の渦の中、モミジの頭は冷めていた。 日本人はどこで選択を間違ってしまったのだろう。地上60階建の最上階にあるスカイビューラウンジはモミジの頭とは逆に熱気に沸いていた。全権代理戦争が始まる。 先の大戦で地上にコロナウィルス擬態型ナノマシンが散布されてから早50年。当時まだ15歳だったモミジの父は長く続いた戦争がようやく終わったことを嬉しいと感じる感受性は持ち合わせておらず、この世界の行く
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