#twnovel Boys Of Summer 2011

Variations Of "Boy Meets Boy" 最後の曲は、BLとリアル・セクシュアリティを同列に考えて良いものかどうかという日頃の疑問を感じつつ追加しました。 ついのべと音楽のミックスはやってはみたいけど文章スキーとしては邪道と言う思いもあるので、私的に宿題ですね。
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Prologue

♍≠様♍ @XavierCohen

カチリ! 短刀と長剣が絡み合い、火花を散らす。盗賊の少年は満足そうにニヤリと微笑むと、挑発する様に言った。「貴族の番犬にしちゃあ、やるじゃねえか。どうだい、俺と組まねえか?」「だッ、誰が盗賊になど!」若き騎士はそう言いながらも、既に少年の翠の瞳に魅せられている。 #twnovel

2011-08-19 13:33:46
♍≠様♍ @XavierCohen

タカラヅカの萌えポイントは、王子様とお姫様のラヴシーンでは無く、男同士の友情とか対立にあるワケで(実際そっちのが描写が濃厚だし)、無双とかBASARAのアラレも…いや臆面も無いそういう表現があらぬ妄想を喚起するのももごもごもご…。

2011-08-29 15:31:52

Episode 1

♍≠様♍ @XavierCohen

三日後に懲罰房から戻って来た湧泉坊を、空蝉坊は遣る瀬無い思いに駆り立てられて犯した。事のあと、空蝉坊は宥める様に言った。「二人で山を下りよう。あの程度のおなご、里には幾らでもおる」ぶつぶつと意味を無さぬ湧泉坊の呟きは、只一言、明瞭と空蝉坊の耳を衝いた。「月子…」 #twnovel

2011-08-19 16:55:30
♍≠様♍ @XavierCohen

「つわあああああ」喪失の痛みに空蝉坊は震え、そして仰け反る。背の皮膚がびりびりと裂けた。噴き出す鮮血はどす黒く凝り固まり、みるみると翼の態を成してゆく。「俺に湧泉坊を返しやがれえ」ばりばりと轟音を立てて御堂が崩れ、燃え上がる。空蝉坊はばさりと暗い闇に羽ばたいた。 #twnovel

2011-08-19 16:58:00
♍≠様♍ @XavierCohen

訳の判らない怒りが湧泉坊を駆動する。もう組敷かれている月子には目も呉れない。掌が、ぎりりと天狗のつらを締め上げる。「ようやっと還ったか、湧泉坊や」湧泉坊が声の主に思い当った其時には、天狗のつらは割れ脳漿が歪んだ指の間から、柘榴の実の様にだらだらと零れ落ちていた。 #twnovel

2011-08-19 16:59:55

『天狗と鬼の物語り』
湧泉坊と空蝉坊の生い立ちと出会い、湧泉坊は如何に鬼に成り果てたかやらを考えてはいたが、ばっさり割愛。

Episode 2

♍≠様♍ @XavierCohen

「お前は拘束された俺が好きなのだ。愛を知らぬのだ。信じる事が無いのだ」少年は吐き捨てる様に言った。「安っぽい挑発だな。愛も自由も望むと言うのか。全く奴隷の子とは欲深いものだ。だがいいだろう。望みを叶えてやる」若者は剣を抜くと、少年の足枷を左肢もろとも断ち切った。 #twnovel

2011-08-22 17:08:15
♍≠様♍ @XavierCohen

「そうして完璧に均整のとれた珠にさえ己の印を刻まねば気が済まぬのだ。実に貴族的な性質だ」苦痛に脂汗を滲ませながら少年は言う。「自惚も大概にするのだな。とは言え私も償いをせねばならぬ。私は私の拘束を断とう」若者は少年の血に染まる剣を掲げ、父の書斎へと足早に向かう。 #twnovel

2011-08-22 17:22:57
♍≠様♍ @XavierCohen

主従関係を下敷きにしながら明白に『主』に感情移入させる構成のオフィス物には全っ然ファンタジーの培地は存在しないけど、『従』に感情移入させつつ『主』を翻弄する物語りは実に自由主義的ファンタジーなのよね。 #世界一初恋

2011-08-29 15:45:46

Episode 3

♍≠様♍ @XavierCohen

私は蜻蛉を追いながら知らぬ間に墓地の中を彷徨つていた。不意に左足に激しい痛みを感じる。程無く其の儘意識を失つた様だ。意識が戻ると見知らぬ少年に脹脛を吸われていた。もぞもぞする私に気付いた少年は、きつくぴしやりと言った。「動くな。毒が回る」また意識が遠のいてゆく。 #twnovel

2011-08-24 14:48:08
♍≠様♍ @XavierCohen

私はお堂の床で汗びつしよりになつて眠つていた。隣でさつきの少年が団扇をあおいで呉れている。「お父に薬もろうてきた。吐き気がするが我慢すれ。熱は出ていないやう…」私は頭がふらふらしたが居た堪れぬ気分が勝つた。少年が止めるのも聞かず、そのままお堂を飛出してしまつた。 #twnovel

2011-08-24 15:44:27
♍≠様♍ @XavierCohen

夏の間あの寺と墓地を避けて暮らした。兎に角気恥ずかしく気拙い思いでいつぱいだつた。夏休みの終わるころ空襲は隣町にまで及び、私は親から離れて母方の実家に預けられる事となつた。級友にお別れを言う間も無い慌ただしい疎開だつた。あの少年にはとうとう礼を言えず終いだつた。 #twnovel

2011-08-24 16:11:46
♍≠様♍ @XavierCohen

私が再び斉藤君に会った時、彼は小さな骨壷に収められて居た。彼が斉藤と云う名で在る事をお骨を携えて来た御両親から初めて知った。遠い島で深い傷を負い送還されてきたのだが、程無く高熱を患い亡くなったのだそうだ。生れ故郷に埋葬して呉れとの御遺志で此の寺に運ばれて来た。 #twnovel

2011-08-24 16:21:38
♍≠様♍ @XavierCohen

ひぐらしの音の合間から小さな子供の泣いているのが聞こえる。やれやれと境内を覗いて私は息を呑んだ。似ている。「斉藤君」不意に名を呼ばれ驚いた子供が顔を挙げる。「こら浩次、勝手に走るから転ぶんや」子供を追ってきた父親らしき青年と私が、今度は驚いた声を上げた。「え?」 #twnovel

2011-08-24 16:51:45
♍≠様♍ @XavierCohen

「へえ、親父も此処で泣いとったんですか」青年は屈託無く笑う。「蝮に咬まれた様子でしたね」子供の膝を手当てし乍ら私は応える。「母の妊娠中に亡くなったんで全然親父の記憶が無いんですわ。母も関西へ再婚して御無沙汰やったんですが、まあ親父に孫の顔でも見せたろかと思て」 #twnovel

2011-08-24 17:02:33
♍≠様♍ @XavierCohen

「そうですか」誰に聞かせるでも無く私は呟く。「縁とは妙なものですな」斉藤君の墓前で経を上げると、また来ますと言って帰ってしまった。「ええ、何時でも」私の声はもう彼らには届かない。かなかなとひぐらしが鳴いている。夏も終わりだ。私の恋もまた呆気無く終わってしまった。 #twnovel

2011-08-24 17:22:22

Epilogue

♍≠様♍ @XavierCohen

「今日はどんな感じにされます?」「長友みたく」「髪、長い方がカッコイイのに」「俺、ストレートだし」「えっ、あっ、あの、ボク、そんなつもりで」「い、いや、俺は髪質の話を」「で、ですよね」「じゃ、毛先揃える位にしとこうかな」「ご、ごめんなさい」「涼しくなったからね」 #twnovel

2011-08-22 12:49:10