@orionis23が数学を志すまで

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森田 真生 @orionis23

いまでも鮮明にあの日を覚えているが、僕がはじめて鈴木健(@kensuzuki)さんと出会ったのは、ちょうど6年前、2005年の9月だったと思う。

2011-08-29 20:29:05
森田 真生 @orionis23

僕は当時、会社を立ち上げようと思っていて、その年の春頃からシリコンバレーのスタートアップをあちこちまわっては話しを聞いて回っていて、とあるベンチャーキャピタリストの方に「鈴木くんというとても面白い人がいるから、会った方がいい」とすすめられるがまま、会いに出かけたのである。

2011-08-29 20:31:11
森田 真生 @orionis23

16号館の前で待ち合わせをして、Tシャツを着て爽やかな笑顔で登場した健さんをいまでも鮮明に覚えている。そのまま健さんが当時所属していた研究室に移動して、数時間話しを聞かせてもらった。

2011-08-29 20:33:02
森田 真生 @orionis23

ヴィトゲンシュタイン、フレーゲ、チューリングの話しから、貨幣の話、PICSYやSTN、Galapagosの話。荒川修作の話もあった。当時、パソコンと言ったらメーラーくらいしか使ったことなかった僕にとってはちんぷんかんぷんな話を、必死でメモしながら聞いた。

2011-08-29 20:36:11
森田 真生 @orionis23

「森田くんは言葉の力はどれくらい信じてる?僕は、言葉というのはとても力があると思っているけど、社会を動かそうと思うなら、システムの蝶番を見つけるのが一番だと思うんだ。システムには蝶番があって、そこをポンとおさえてやると、全体がガラっと変わる。そういうポイントが必ずあると思うんだ」

2011-08-29 20:38:52
森田 真生 @orionis23

その言葉がとても印象的だった。僕は大学は文系で入学していたのだが、実は健さんと出会う前日に、ちょうど理系への転向を決意したばかりだった。なんだか背中を押されてるような気がした。

2011-08-29 20:40:00
森田 真生 @orionis23

僕は健さんが語る言葉にすっかり夢中になってしまった。翌日は、興奮して同級生や先輩たちに、健さんに聞いた話を語ってまわった。「社会制度はそもそも誰かが発明したものだから、つくりかえることができるんだ!システムの蝶番を見つけて、そこにアプローチしていくんだ!」

2011-08-29 20:45:10
森田 真生 @orionis23

すぐに僕は、鞄持ちとしてサルガッソーの立ち上げメンバーとして手伝いをさせてもらえることになった。楽しかった。何よりも営業の合間や、休憩時間に、健さんが教えてくれる研究の話や物理の話がエキサイティングだった。

2011-08-29 20:49:05
森田 真生 @orionis23

その年のクリスマスに、営業が終わった後、小さなバーに入って、そこで健さんがノートを使って僕に集合論のレクチャーをしてくれた。最後にノートの切れ端に、「自然数の集合と実数の集合の間に全単射はつくれるか?」と書いて渡してくれた。そう、それ程当時の僕は数学を知らなかったのである。

2011-08-29 20:53:30
森田 真生 @orionis23

はじめて、数学は面白いのかもしれない、と思った。高校一年の頃に学校の数学に失望して以来、ほとんど数学には触れてなかった。だけど、その年の正月は、なんとか自然数の集合と実数の集合の間に全単射をつくれないものか、もんもんと「数学」をして過ごした。

2011-08-29 21:00:51
森田 真生 @orionis23

年明けにカントールの対角線論法による証明を教えてもらって、戦慄した。と言いたいところだが、はじめて聞いたその日には、正直いまいち納得がいかなかった。

2011-08-29 21:06:06
森田 真生 @orionis23

そんな状況だったから、数学科に学士入学をしようと決意したときには、崖から飛び降りるような気持ちがした。才能もないし、知識もない上に、スタートがまわりより何年も出遅れているだから、ただでさえ厳しい世界で、数学をしながら食えるようになる見込みはほとんどない。

2011-08-29 21:12:05
森田 真生 @orionis23

未来はほんとに真っ暗だった。一年後が不安で、毎日胸が締め付けられるような痛みを感じて目覚めた。それでも数学は最高に楽しかった。一年後は暗闇だけど、その日その日は、日々発見の喜びの連続だった。

2011-08-29 21:17:01
森田 真生 @orionis23

とにかく、あのとき暗闇の方へ進んでよかったと、心から思う。進んで行けば、なんとかなる。いまは見えない道も、必ず開ける。一つの身体では、一つの道しか歩めない。此の道が、我が道。

2011-08-29 21:20:40