ロンドン・コーリング #2
【あらすじ】 国際探偵サツバツナイトとドラゴン・ニンジャ。二人のリアルニンジャは、岡山のドージョーから一路ロンドンを目指す。ロンドンは邪悪なるリアルニンジャ「ケイムショ」が支配する死都であり、大英博物館に眠るゴダ・ニンジャのもとに辿り着くには、命を賭けた冒険をせねばならない……!
2021-12-13 21:07:53(セルフ協賛)【合本版】ニンジャスレイヤー 全21巻 (ホビー書籍部) が現在Kindleで半額です。この合本版を購入すれば君も今日からフジキド・ケンジだ! amazon.co.jp/dp/B081TTLJ61/… @amazonJPより
2021-12-13 21:11:55ニンジャスレイヤー 師走特別更新【ロンドン・コーリング】#2 pic.twitter.com/P3tWW8mQPl
2021-12-13 21:15:42『クソッタレ!こっちはダメだ!ズンビーども……ズンビーどもが俺の足を!アイエエエ!アイエーエエエエ!』通信機から漏れ出た悲鳴は、南側に逃げた同僚のものだった。生きたまま骨を噛み砕かれる音にメイは悲鳴をあげ、通信チャネルを閉じた。「なんてこと。ロブまで……!もう終わりだわ……!」 1
2021-12-13 21:19:14ロンドン。ネクロポリス。その、中心部。異色の空の下、刺々しい屋根の古式の家々の狭間を、血みどろのメイは足を引きずって独り進んでいた。彼女の属するカタナ・オブ・リバプール社の機械化小隊は偵察任務中に本隊からはぐれ、壊滅。もはや技術官である彼女一人を残すだけとなっていた。 2
2021-12-13 21:22:38不気味な呻き声や咆哮が全ての方角から聴こえてきた。そのどれもが生きた人間や獣の声ではない。この地はまるごと呪われている。彼女は恐怖と戦いながら霧の中を彷徨い、ケンジントン付近の無人民家に滑り込んだ。扉を締めると力が尽きた。メイは玄関に座り込み、トランシーバーをONにした。 3
2021-12-13 21:26:07「本隊、応答願います。直ちに現在座標へニンジャを派遣してください。直ちに現在座標へ……」応答無し。電子ノイズ音すら聴こえぬ程に、家の外が騒がしい。秋の蛙のようにけたたましい……そしてずっと恐ろしい、ズンビー達の低い唸り声の群れだ。奴らは血の匂いを追う。他でもないメイの血を。 4
2021-12-13 21:29:12鍵は壊れている。メイは自重だけで扉を押さえた。ドン、ドン。ズンビーが体をぶつけてくる衝撃が扉一枚を隔てて伝わって来る。そのたびメイは激しく揺れ、嗚咽した。「ウウーッ」メイは涙を啜り、サブマシンガンの弾倉を確かめた。もう弾がない。気休めの電磁パルスナイフを抜き、刃先を己に向けた。5
2021-12-13 21:32:43生きたまま貪り食われるくらいならば、ここで腹を切った方がマシだ。メイはナイフを握る手に力を込め……「セイ!」外で鋭いカラテシャウトが響いた。ストロボ光めいた白い連続発光と衝撃音。そして凄まじい肉の破裂音が続いた。メイは困惑し、手を止めた。「セイヤッサー!」カラテシャウト!光! 6
2021-12-13 21:36:16「アバーッ!」KRAAAH!黒炭と化したズンビーの肉と思しきものが、白い玄関扉のアーチガラス窓に叩きつけられた。メイは身を竦ませた。やがて、外から女の声が聞こえた。「開けてください。もう大丈夫です」「……」メイは電磁パルスナイフを握りしめ、苦痛に顔を歪めて、恐る恐る立ち上がった。 7
2021-12-13 21:39:47玄関扉の窓の向こうに立っていたのは、風変わりな尼僧装束の女であった。尼僧の両腕には鋼鉄の鎖が巻かれ、両腿のホルスターには大型の聖職者拳銃が備わっていた。「あ、あなたは」メイが問うた。尼僧は両手を合わせ、礼儀正しくオジギした。「ドーモ。拙僧はスマイターと申します。ニンジャです」 8
2021-12-13 21:42:27ロンドン・ネクロポリス最外縁部、ブライトン。……雨が降っている。海辺の遊園地の屋根の上、鉄のカラカサを立てて雨を除けている男がいた。謎めいたニンジャの男は、地上で蠢く者共を見渡し、無感情に「寒い」と呟いた。「おう。待たせてすまんな。寒いよな」傍らにもう一人のニンジャが立った。 10
2021-12-13 21:48:49「まずチャを飲め」差し出された魔法瓶を受け取り、鉄のカラカサのニンジャ、アンブレラは尋ねた。「どこでこれを?」「そこらへんでな」「……」アンブレラは瓶を傾け、熱いチャを飲んだ。そして眉根を寄せた。「……マッチャをか」「ああ。マッチャだ。ここには何でもある。探せばな。天国よ」 11
2021-12-13 21:52:15ニンジャは付け加えた。「俺はこのロンドンで、随分長くやってる」「……そうか」「だから俺を雇うがいいぜ。何だって用立ててやる。正しく安全に案内できるのは俺だけだ。この糞溜めの天国をな」「わかった。いいだろう」アンブレラは頷いた。相手は平然と、「契約料はさっきの二割増しだ」「何?」12
2021-12-13 21:56:20「そりゃそうだ。決断をモタモタしているからだよ、お客人」「クズだな」アンブレラは毒づいたが、携帯端末を取り出し、入金処理を行った。このニンジャの名はデッドアイズ。この地に似合った名ではある。地上の厭わしい者達を睨み、大げさな準備運動を始める。「ではカラテの時間だ、お客人」 13
2021-12-13 21:59:25デッドアイズはほとんど恭しく、促すように、下の者らを指し示した。「さ、どうぞ」「正しく、安全にという話だな」「うむ。正しく安全なルートを全力で案内申し上げる。無論、道中に障害無しとはいかぬよ。そこはカラテで切り拓き給え、お客人」「ありがたいな」アンブレラは吐き捨て、跳んだ。 14
2021-12-13 22:05:07「イヤーッ!」空中へ身を躍らせたアンブレラの着地地点を狙うように、ズンビー達がよたよたと集まり始めた。アンブレラは空中でカラカサを高速回転させた。「イヤーッ!」ヘリコプターめいて、彼の身体は浮揚し、空中に留まる!「ハッハア!」デッドアイズは屋根を走り、続いて跳んだ! 15
2021-12-13 22:06:27「頼むぞお客人!イヤーッ!」手足をばたつかせて跳んできたデッドアイズの腕をアンブレラは掴んだ。デッドアイズはぶら下がり、マシンピストルを小脇に抱えるようにして、下のズンビーの群れを掃射する!「ハッハア!」BRATATATATATATAT!「アバー」「アババーッ!」弾丸!肉片!汁!ナムサン! 16
2021-12-13 22:09:40デッドアイズが掃射を終えると、アンブレラはカラカサ浮揚を打ち切り、真下に落下した。遠巻きになったズンビー達が向かってくる!「ハハァ!」デッドアイズは素早くマガジン交換し、ズンビーの足元を薙ぎ払った。BRATATATATA!「イヤーッ!」崩れ立つズンビーのもとへアンブレラは突進! 17
2021-12-13 22:12:08「アバーッ!」槍めいて突き出したカサに、数体のズンビーが貫通!そのままカサを開き、肉塊を撒き散らし、刃車輪じみてカサを回転させながら、アンブレラは血道を切り開いた。すぐ後ろを走るデッドアイズが叫んだ。「然り然り!そのまま北へ突っ切るぞ。市街地に入り、目指すはブライトン駅だ!」 18
2021-12-13 22:16:28「「アバーッ!」」大小のズンビー、街灯の残骸を振り回すスモトリズンビーすらも軽々と破壊し、二人のニンジャは遊園地敷地を突破した。ズンビーの気配がない場所まで進むと、デッドアイズが言った。「このまま走るのも億劫だろう、お客人。少し待て……」デッドアイズは手首のデバイスを操作。19
2021-12-13 22:21:33キュルキュル。道路脇に乗り捨てられたまま放置されているモーターサイクルが歌うように反応し、順にUNIXライトを光らせた。「ご覧の通り、たいてい動く。宝の山よ。ケイムショの制圧はあまりに圧倒的で、持ち出す余裕など無かったワケだ。好きなバイクを選べ。黒か?青か?そこの緑色もポップだぞ」20
2021-12-13 22:24:45ドルルッ。アンブレラはすぐそばの黒いバイクに跨った。デッドアイズは自ら言及した緑のバイクを選ぶ。「ロンドン市街、一番の近道は幽霊列車だ。無論、俺のとっておきの隠し道を辿って北上するルートもある」「正しく、安全にか」「その通り。ところが幽霊列車も俺の手にかかれば大安全なのだ」 21
2021-12-13 22:28:29