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2022年1月2日

息子が小さかった頃、「は」に点々をつけると「ば」になるということが理解できなかったが、音声学的には正解だったという話

大人は様々なルールに縛られて物事の本質を見失っているかもしれない
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Ippei Oshida @ippei_oshida

子供の発言に論理の飛躍があったとき、ただ笑って終わらせず、きちんと丁寧にヒアリングしていくと、実はしっかりと推論を重ねた、子供なりの合理性に基づいた発言であることがわかる。彼は彼にとっての意味の世界を生きている。

2022-01-01 21:14:50
Ippei Oshida @ippei_oshida

「かににさされてちががでた」や「これ食べたら死む?」といった子供によくある言い間違いも、言語学の視点でみると、間違いではなく合理的な推論に基づいた妥当な表現であるらしい。子供は我々大人が考えている以上に合理的な思考を駆使している。 amazon.co.jp/dp/4000296590/…

2022-01-01 22:20:58
Ippei Oshida @ippei_oshida

息子が小さかった頃、「は」に点々をつけると「ば」になるということが、何度教えても理解できなかった。「か→が」や「た→だ」の対応関係はきちんと理解しているのに、なぜか「は→ば」だけが理解できない。「『は』に点々をつけると何になるかな?」「う〜ん、わかんない」の繰り返しだった。

2022-01-01 22:58:02
Ippei Oshida @ippei_oshida

数年後、たまたま読んでいた言語学の本に、この謎の答えがすべて書いてあった。結論から言うと、間違っているのは大人の方だったのだ。

2022-01-01 22:59:22
Ippei Oshida @ippei_oshida

これはぜひ自分で順番に発音しながら口の中の動きを確かめてもらいたいんだけど、「か→が」「さ→ざ」「た→だ」と発音する時に口の中で起こっている動きと、「は→ば」と発音する時に口の中で起こっている動きが、まったく異なることがわかると思う。

2022-01-01 23:00:06
Ippei Oshida @ippei_oshida

音声学的には、点々をつけることは「濁音化」と呼ばれており、「無声音(喉の奥を震わせずにする発音)」を「有声音(喉の奥を震わせながらする発音)」に切り替えることを言うらしい。つまり、「か→が」「さ→ざ」「た→だ」はそれぞれ「無声音→有声音」という同じ対応関係が成立している。

2022-01-01 23:01:05
Ippei Oshida @ippei_oshida

しかし、「は→ば」だけは、「無声音→有声音」という対応関係が成立しない。ここはまた発音しながら確かめて欲しいんだけど、「は→ば」の切り替えは、喉の奥の震えの有無ではなく、唇の動かし方の変化によって行われている。つまり音声学的には、「は→ば」の発音だけまったくルールが異なるのだ!

2022-01-01 23:03:11
Ippei Oshida @ippei_oshida

よって、音声学的な観点で言えば、「『は』に点々をつけると何になるかな?」という質問の答えは、「わからない(そんな音は存在しない)」が正解になる。つまり息子の答えは正しかったのだ。

2022-01-01 23:09:38
Ippei Oshida @ippei_oshida

息子はきっと「か→が」や「さ→ざ」の時に使った「無声音→有声音」の切り替えの法則をきちんと理解しており、その法則を「は」にも当てはめた。しかし、「は」を濁音化することができなかったため、「わからない」と答える、という推論の仕方をしたのだろう。そう考えると完璧に合理的な回答である。

2022-01-01 23:12:24
Ippei Oshida @ippei_oshida

我々大人は、子供の合理的思考能力をあまりに甘く見すぎているのかもしれない。彼らは彼らの意味の世界で、彼らなりの合理性を駆使して生きている。「子供だから間違えたのだろう」と大人はすぐに判断してしまうが、今回のケースのように、大人の世界の矛盾に子供だけが気づいていることも多い。

2022-01-01 23:35:21
Ippei Oshida @ippei_oshida

大人達は「は→ば」という日本語のルールを前提として生きているため、そこに発音的な差異があるなんてことにもう気づくことができない。知識を習得するということを、我々はなんとなく知が増えることだと信じているが、一つのルールに順応することは、同時に何か別の知を失うことなのかもしれない。

2022-01-01 23:35:31
Ippei Oshida @ippei_oshida

ちなみに「ば」と対応関係にあるのは「ぱ」らしいです。つまり音声学的には「ぱ→ば」が正しい対応関係になるということ。こんなのたぶんほとんどの大人が知らないし、気づけないですよね。

2022-01-01 23:38:09
Ippei Oshida @ippei_oshida

今回の話はこちらの本から学ばせて頂きました。他にも、「かににさされてちががでた」や「これ食べたら死む?」といった子供によくある言い間違いが分析の対象になっています。むちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでみてください。 amazon.co.jp/dp/4000296590/…

2022-01-01 23:42:34
菜々氏 @nomoriha_mizuya

@ippei_oshida ハングルはそうですね 바は語頭では「ぱ」 語中では「ば」なのはそういう事ですね

2022-01-02 14:05:50
multilingual father @bright_satoshi

フィリピンから来た妻は、「はし」が「さいばし」とか「とりばし」とかで連濁ば起こすとhがbになるとがなかなか分からんやった。調音位置がそのまま無声音ば有声音に変えるだけで済む他の清濁の差とはハ行だけは違う。 twitter.com/ippei_oshida/s…

2022-01-02 14:25:22
moritatsu @moritatsu

奈良時代以前はハ行をp音で発音していたので、清音=無声音、濁音=有声音の対応が取れていたんだよね。その後、表記は変わらないのに発音がパ→ファ→ハに変わってしまったので対応関係がおかしくなった。だから、この話の息子くんはすごく正しい nihongonosensei.net/?p=26484 twitter.com/ippei_oshida/s…

2022-01-02 14:21:50
とらぴっぴ/首都(埼玉) @saws_skmdrt

すごく面白い指摘だなと。は行は古代では“ぱぴぷぺぽ”に近い音だったので、元来しっかりと“ば”に対応してたんだけど、奈良時代には“ふぁふぃふふぇふぉ”に近い音に推移したのね。そして“はひふへほ”に更に推移したという流れ。つまり本来しっかり対応していていたのが、→ twitter.com/ippei_oshida/s…

2022-01-02 14:31:38
とらぴっぴ/首都(埼玉) @saws_skmdrt

音が変化してしまった結果、このような表記と音に開きが生まれたというね。“はひひゅへほ”ではなく“はひふへほ”とHとFが混在しているのは、“ふぁふぃふふぇふぉ”の名残だと思ってる。

2022-01-02 14:31:38
Nikov @NyoVh7fiap

ものすごく面白いツリーです。 既存のルールに対する子どもの自然な問いから、「そういうものだから」で流さず、大人の「当たり前」に疑いを持つ、そして、その解を一冊の本から学ぶ、「問い、学ぶ」姿勢のすべてが詰まってる。 twitter.com/ippei_oshida/s…

2022-01-02 12:24:13

コメント

✢ℍ𝕒𝕔𝕙𝕚✢ @Hachi_no_E 2022年1月2日
この本すごく面白かった。日頃子供いらないと思ってる私がちょっと子供欲しくなった。
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しろうし @himaginebreak 2022年1月2日
子供の方が先入観なく本質を見ている場合があると言うのはそうだと思う。ただ、生きた言葉が先にあってそれを分析するのが音声学だと思うので、「『は』に濁点をつけると『ば』」が間違っているというのも見方が逆じゃなかろうか。
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