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Kyoichi Nanatsuki。漫画原作家。東京工芸大学芸術学部マンガ学科にて「マンガ原作論」を担当。「サンデーうぇぶり」にて「ツキモノガカリ」「ドラゴン奉行」連載中。
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昨年、スマホの縦スクロール漫画について「市場を独占するほど日本人の心を捉えた理由を聞かせて欲しい」と経済誌の編集部からコンタクトが来たが「そちらが期待してる答えにならないと思いますがいいですか?」と言ったら丁寧にとりやめの連絡が来た。とても良心的だと思った。
2022-01-10 00:05:53これに対して色々推測している人が多かったですが…
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「縦スクロール漫画」を取り巻く状況について詳しく解説
そもそもジャンルが違うので比較できないもの、ということのようです。
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昨夜ぼそっとつぶやいたものがバズってたみたいなので、ちょっと縦スクロール漫画をめぐる状況について補足しておきます。私の知る範囲の話なので、あちこち抜けてる視点もあるとは思いますがご容赦を。
2022-01-10 20:00:37![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
縦スクロール漫画は安易に日本の漫画市場と比較して優劣を論じても意味がないものなのです。そもそも成立の背景や市場の性格、そしてビジネスとしての勝利条件からして違うのです。
2022-01-10 20:01:27![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
10年くらい前まで韓国の漫画市場は壊滅的な状態にありました。レンタル漫画店が主体だったためで、漫画は買うものじゃなく借りるものと刷り込まれた若年層が大多数となったためでもあります。更にネットの海賊版が猛威を振るっていました。
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この辺については11年前の私のツイートをまとめてくれたこれを参照頂きたい。当時「今は新しいビジネスモデルが生まれる時期」と私が言った言葉からつながっている流れの中にあるのです。 togetter.com/li/94888
2022-01-10 20:02:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
この状況から、韓国の国策としてのITへの傾注とコンテンツ事業への肩入れが合わさって誕生したのが縦スクロール漫画です。スマホの時代が来たことが何よりも大きかった。もともとレンタル漫画主体だった読者に抵抗なく普及しました。
2022-01-10 20:02:53![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
韓国の政府事業だったため予算が潤沢で、作家への原稿料も良かった。作家たちには福音です。自分の国で食べていける市場が出現したわけです。ある時期から日本に進出する韓国漫画家が減ったのはこのためです。(皆無になったわけじゃない)
2022-01-10 20:03:14![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかし国のプロジェクトにはだいたい期限があります。それが何年続くかが当初の懸念材料でした。しかしこの数年で海外展開が成功して収益化が拡大しました。ヒット作を見ると無国籍な作りにしているのが分かります。キャラの名前を日本人に変えてそのまま日本で通用しているものもあります。
2022-01-10 20:03:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ところで縦スクロール漫画が現在の日本の漫画市場を打倒してしまったりするのかというとそれはあり得ません。市場としてはまったく別物。別の土俵だからです。
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縦スクロール漫画はいわばアーケードゲームや家庭用ゲームに対するスマホゲームのポジションです。昔どこかだかのスマホゲーの会社の人が「任天堂の倒し方知ってます」と言ったことあるけど、別に任天堂は倒れていません。土俵が別だからです。
2022-01-10 20:05:02![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ところで今は大手ゲーム会社がスマホゲーに参入して収益をあげるようにもなっています。その流れを辿るように、いま日本の出版社も縦スクロール漫画に参入する動きを見せてます。もし「勝負」があるとすればそれはこれから始まるものだと思います。
2022-01-10 20:05:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
余談ながらガラケー時代にコマ割り漫画を1コマずつ表示するアプリがありました。拙作「JESUS砂塵航路」などがこれで連載されてました。スマホ時代になって消えてしまったけど、あのアプリがスマホに対応して進化していれば、これの対抗馬になれたんじゃないかなと私はちょっと惜しんでいます。
2022-01-10 20:07:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
縦スク漫画はスマホという新しいメディアに対応した表現や発表のかたちと言えます。もちろん懸念もあります。20年前に今のスマホが想像できなかったように、今から20年後にスマホがどうなっているか分からない。縦スク漫画はまだ若い表現形式なのです。
2022-01-10 20:19:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ただ、漫画という表現は形を変えても生き残る力を持っている。メディアの変遷に対応して変化することが出来る。そういう可能性を実証したのが縦スク漫画だと私は思っています。
2022-01-10 20:20:42![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
漫画制作者・シナリオライター他です。 漫画家ではありません。どこでもヤングチャンピオンでマンガ版「攻撃力極振りの最強魔術師」 連載中。単行本化は「まんが地域学習シリーズ 守ろう! みんなの東北」「コミック版 ザ・ゴール」「鉄板少女アカネ!!」「まんがで語りつぐ広島の復興」「球世主!!」「もんれす」「肉食女子!!」など。
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「売れてるから縦スクロールマンガはマンガの『進化形』」という考え方は違うとは思います。ユーザーが特に使っている媒体にしっかり対応して作られたマンガということだと。ゲームでいうと例えは古いですが、ファミコンのあとにゲームボーイが生まれたみたいな。進化、とは違うと思います。
2022-01-10 08:46:48![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
でも今の「縦スクロールマンガがらみの市場・需要の拡大」は、漫画家さんやシナリオ・ストーリーの作家さんにとっては大チャンスだと思います。いくらでもプロになるチャンスがあります。他のマンガ・創作媒体との特性などを考えすぎたりせずに、時間と余力あるかたはさっさと挑戦すべきだと。
2022-01-10 08:55:38