Letters～手紙のある風景～

夕凪奏恵 @k_you_nagi

Letters～手紙のある風景～

夕凪奏恵 @k_you_nagi

area #twnovel 君が住む町。君が歩く道。君が好きな公園。君が立ち止まる交差点。他愛ない景色ばかりだけれど、君が見た世界が切り取られている。それは確かに君のいる場所。僕のいない場所。僕の知らない世界。白い封筒に入れられた写真が、便箋には書かれていない君の心を伝えてくる。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

book #twnovel 古びた本の、かさついたページを捲る手が止まる。黄ばんだ封筒の宛名は自分の名前。戦時中に恋人がくれた最初で最後の手紙には、生きて帰れたら一緒になろう、と力強い筆跡で綴られている。懐かしさに頬を緩め、庭へ向かう。手紙の主と思い出話に花を咲かせるために。

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cafe #twnovel 座るのはいつも窓際の、一番奥の席。時折、外の風景に視線を向けながら、彼女は手紙を書く。ごく丁寧に、言葉を選んで慎重に。綺麗にたたんだ便箋を純白の封筒に入れる。大好きな人の名前に、手紙を受け取る時のはにかんだ笑顔を思い出して彼女は僅かに笑みを浮かべた。

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dear #twnovel 書き出しどころか宛名に困ってる。様とか堅苦しいし、呼び捨てじゃ怒られそうだし、親愛なる～とか恥ずかしくて使えるかっ！盛大な遅刻へのお仕置きはラブレターを書け、だ。反省文の方がよっぽど楽なのに。あいつ俺の性格、把握しすぎ。これは一生一緒にいるしかないな。

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eden #twnovel 高い空を目指し鳥達は羽ばたく。熱い日差しの中も冷たい風の中も、穏やかな昼も荒れた夜も、ひたすら飛ぶ。やがて虹の橋を越え、天に広がる花園に辿り着く。酷使した翼が痛んでも、目的を果たした鳥達はまた地上に戻る。遺された誰かの手紙を運べるのは自分達だけだから。

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face #twnovel おれは字が下手くそだから手紙も嫌いでなぁ。近況報告も渋々だった。家に帰ったら、おれの字は読み難いってなぁ、かーちゃんが嬉しそうに言うんよ。単身赴任が終わるまでかーちゃんの顔を思い浮かべてたくさん書いたもんよ。かーちゃんが笑うとおれも嬉しかったからなぁ。

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gift #twnovel 暦の上では秋でもまだ暑いから、朝顔の便箋を選んだ。夏のイメージだけど、季語としては秋だから丁度いい。封は開けやすいよう、シールで。可愛いのは子供っぽくなりがちだから程々に。インクの色は落ち着いた紺色、一字一字丁寧に綴る。大切な人への手紙になっていく。

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help #twnovel 郵便ポストから手紙の声が聞こえる。見知らぬ町へ旅立つ張り切った声、想いを託され緊張した声、仕事を任され引き締まった声。わりと多い、暗い狭い怖い助けて～という悲痛な声。手紙だからポストに入れないことには始まらない。助けてあげられなくて、ごめんね。頑張れ。

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iffy #twnovel 別に読みたくて読んでんじゃない。添削してくれって言うから目を通してるだけ。誰が好き好んで他人宛のラブレターなんか読むか。俺はなんとも思ってないし。目の前で照れてる幼馴染みのことなんて、なんとも。誰を好きになろうと、関係ないっての。気になんか、してない。

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just #twnovel 彼はTwitterが大好き。私との連絡も殆どそれで済む。だけどちゃんと向き合いたいから、と毎月手紙をくれる。季節を意識した便箋と封筒、丁寧に綴られる厳選された言葉たち。すごく気持ちが伝わってきて嬉しい。でも毎回140文字ぴったりってのはどうなのよ!?

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kiss #twnovel すごく不器用。何を伝えようとしてるのか、すぐ理解できない。すごく奥手。ちょっと手が触れただけで動揺してる、こっちが困惑するくらい。遠距離恋愛なんて大丈夫かと思ったけれど、文章で気持ちを伝えるのが得意みたい。手紙が届く度に、彼の心が私の心にキスをする。

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last #twnovel 最後の手紙は短く、そっけないものだった。急いで書いたのだろう、いつもより雑な筆跡でもあった。これで終わりにしよう。心を決めて部屋を出る。鍵をポケットに押し込んで向かうのは駅。おかえり、と、一緒に暮らそう。二つの言葉を久し振りに会う君に向けて用意してる。

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miss #twnovel 郵便屋さんは困ってた。いくら手紙を大切に運んで届けても、白ヤギさんも黒ヤギさんも読まずに食べちゃう。仕方がないのでわさびとからしを塗ってみた。郵便屋さん、人生最大のミスだった。ヤギさんたち、互いがしたと思って大喧嘩。事情説明に謝罪で仕事が増えちゃった。

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note #twnovel 教科書の上に小さく折り畳まれたノートの切れ端が落ちてきた。誰が飛ばしたのか知らないけど配達先が間違ってんぞ。宛名を見て隣の女子に渡す。相手が唇だけで、声は出さずに礼を言う。机の下で手紙を読む横顔から目が離せなくなる。意識するより先に、鼓動が反応してる。

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over #twnovel ひらりひらり。秋色のグラデーションに染まった桜の葉が舞い降りる。見上げると、孫の使い魔が慌てて空を飛んでいった。あれの身を隠せれば完璧なのだが。杖の先で葉をつつくと文字が浮かび上がった。白髭の長老は覚えたての魔法で届けられた手紙を読むことに没頭した。

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past #twnovel 隣の席から柔らかい声が響く。大人になった自分へ手紙を書くんだって。顔を見ずに頷くのが精一杯だった。頭がいっぱいになった俺は彼女の事を書いた。「笑いすぎ！」「だって可愛いんだもん」過去からの手紙はなぜか妻の手に渡り、二人の新居に彼女の笑い声が響いてる。

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quiz #twnovel ピンクばかり使うから何度も買い足したクレヨン。覚えたてのひらがなで簡単な質問を書いて、たくさん手紙をくれた。なのに僕の知らない男にラブレターを書いてたなんて。許せない。「相手は誰だ、嫁にはやらんぞ！」「幼稚園児に何言ってるの、パパ」笑うな、僕は真剣だ！

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room #twnovel 運び出した荷物はしれてるのに何もないと広いな。日に焼けて色褪せた畳もコツを知らないと開閉出来ない窓も見納め。駆け落ち同然で始まった二人暮らしも楽しかった。新しい住所が記された手紙をポケットに入れて部屋を出る。今夜からは小さな命と僕と彼女の三人暮らしだ。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

same #twnovel 表情が乏しいし口数も少ない。何を考えてるのかわかんなくて、もっと自己主張して！って一方的に怒ったこともある。喧嘩するたび十数枚にもなる手紙をくれる。今日も、また。同じ人が書いたとは思えないくらい甘ったるい言葉が並んでいる。これで絆されちゃう私も私よね。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

tear #twnovel また手紙だ。遠くにいるあの子の大好きな人からの手紙。嬉しそうに読み始めて、終わったら悲しそうにしてる。ぽとぽと雫が落ちてくる。ねぇ、散歩行こう！元気出してよ！って言えたらいいのに。僕はリードを自分で取りに行ってぱたぱた尻尾を振る。それが僕に出来ること。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

undo #twnovel ああん、また失敗！もう便箋なくなっちゃう。気をつけて丁寧に書いてるのになんで間違っちゃうかなぁ。どうしてもパパの万年筆で書きたい。修正液とかカッコ悪いし、下書きなんて論外！なんて言ってたらまた間違えるしっ。パソコンみたいにやり直し出来たらいいのに～。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

view #twnovel 漆黒のインクが純白の便箋に様々な景色を綴る。旅人は自分の目に映ったものを、耳に聞こえたものを、肌に感じたものを、心に響いたものを、詳細に言葉で表現する。手紙を受け取った恋人は写真よりも映像よりも鮮明に、旅人の見た景色を窓のない部屋で同じように見ている。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

wave #twnovel ゆらゆら波に揺られ風に流され目指すは見知らぬ浜辺。ぷかぷか硝子の船に守られ手紙は眠る。いつか誰かに出逢って想いを届けられますように。祈りに似た夢を、目覚めるその日まで見続ける。嵐の海も凪の海も越えて虹の彼方より遠くて近い場所へ、手紙はゆるゆる旅をする。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

xmas #twnovel 子供達が一生懸命書いたサンタさんへのお手紙を前にして、彼も両親も義両親も複雑な表情をしてる。欲しい物を書いたらしいけど高額な物かしら。ひょいと覗き込んでみる。あらま、高額どころかお金じゃ買えないじゃない。困ったわね。でも優しい子に育ってくれて嬉しいわ。