ワクチン関連心筋炎の特徴とその発生機序の仮説について

@influenzer3 先生の2022年2月18日の連続ツイートをまとめてみました。
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influenzer @influenzer3

●ワクチン関連心筋炎の特徴とその発生機序の仮説について →Radiology誌のeditorialです。 心臓MRIを用いてワクチン関連心筋炎と他の心筋炎の所見を比較した、同誌掲載の論文の概要を紹介しています。

2022-02-18 20:25:47
influenzer @influenzer3

結果は、重症度に関わらずMRIで異常所見を認めるものの、所見は他の原因の心筋炎と違いはなく、所見は軽度であり、その臨床的予後も良好だったというものでした。

2022-02-18 20:25:47
influenzer @influenzer3

ただし本検討には限界も多く、知見を結論づけるためには、大規模かつ同一のMRI撮像プロトコルによる前向き検討が必要であると結論しています。

2022-02-18 20:25:47
influenzer @influenzer3

本文中に、ワクチン関連心筋炎の発症機序として3つの仮説が挙げられています。 3つのどれかというよりは、いずれも複合的に関連して発症すると考えるのが、一番理解しやすいように個人的には思いました。 Post-Vaccine Myocarditis: A Risk Worth the Reward? pubs.rsna.org/doi/full/10.11…

2022-02-18 20:25:48
influenzer @influenzer3

---- ・ワクチン集団接種のメリットについては疑いようがない。国家規模のワクチンプログラムの成功により、これまでに全年齢層において、何百万人もの死亡や入院・ICU入室が回避できた。最終的にはいくつかの国々において、感染による死亡例をなくす事が出来るかもしれない。

2022-02-18 20:25:48
influenzer @influenzer3

通常の生活へ戻ることで、経済成長もパンデミック前のレベルに戻る事が期待されている。衰退しつづけたメンタルヘルスも改善の方向へ向かうと予想される。医療機関もその機能を他の治療を必要とする患者の医療へ向ける事が出来るようになるだろう。

2022-02-18 20:25:48
influenzer @influenzer3

・ワクチン接種義務化を通じた集団免疫の獲得を目指す国々には、ついにゴールが見えてきたと言える。しかし、このパンデミックの最終段階において障害となるものはないだろうか?その答えは複雑で多くの要素を含んでいる。特にワクチン接種に対する抵抗感(hesitancy)が重要な問題点だろう。

2022-02-18 20:25:49
influenzer @influenzer3

・多くのワクチンの中でも、比較的的新しい免疫誘導技術であるmRNAワクチンは、ウイルスの新規変異株に対しても強い防御能を示し続けている。mRNAワクチンの他のワクチンと比較した優位性は、特にオミクロン株において顕著に示されていた。

2022-02-18 20:25:49
influenzer @influenzer3

本変異株は自然免疫と獲得免疫の両者をうまく回避する能力を持っており、感染性が非常に高い。しかしながら、mRNAワクチンの問題点は心筋炎のリスクなのだ。この有害事象は社会の懸念を呼び、ワクチン拒否やワクチン接種の躊躇にも関連している。

2022-02-18 20:25:49
influenzer @influenzer3

・心強いのは、多くの疫学研究によりmRNAワクチン接種後の心筋炎の頻度は稀(rare)である事が分かってきた事だ。デンマークからの最近の検討では、350万人にファイザーワクチンを接種した場合の心筋炎の発生率は10万接種あたり1.4件、モデルナワクチンでは4.2件だった。

2022-02-18 20:25:50
influenzer @influenzer3

920万人を対象としたイスラエルの報告では、ファイザーワクチンを2回接種した10万人あたりの心筋炎発生率は2.35人だった。

2022-02-18 20:25:50
influenzer @influenzer3

・一方で、COVID-19罹患者の心筋炎のリスクは、2つの検討により少なくとも4-5倍に上昇する事が示されている。

2022-02-18 20:25:50
influenzer @influenzer3

加えて、他の合併症である心外膜炎、不整脈、深部静脈血栓、肺塞栓、心筋梗塞、脳内出血、血小板減少症は、ワクチン接種後と比較してもCOVID-19罹患後のリスクのほうが圧倒的に高い(substantially higher)。

2022-02-18 20:25:50
influenzer @influenzer3

・mRNAワクチンによる心筋炎の頻度は現時点でほぼ明らかになってきているが、他の心筋炎と比較した場合の心筋障害のパターンや程度については、まだ十分に解明されていない。

2022-02-18 20:25:51
influenzer @influenzer3

これを解明するため、Radiology誌の今号において、Fronza氏らはワクチン関連心筋炎で見られる心筋傷害の程度を評価し、COVID-19および非COVID-19/非ワクチン関連心筋炎との比較を行っている。

2022-02-18 20:25:51
influenzer @influenzer3

連続する心筋炎疑い症例92例の心臓MRI所見をレトロスペクティブに検討したのだ。61%が非COVID-19/非ワクチン関連心筋炎、23%がmRNAワクチン関連心筋炎、11%がCOVID-19関連心筋炎だった。mRNAワクチン関連症例は半数以上がモデルナワクチン、43%がファイザーワクチン接種後だった。

2022-02-18 20:25:51
influenzer @influenzer3

・先行研究と同様、ワクチン関連心筋炎は男性(81%)および若年者(平均31± 14歳)が多かった。心筋炎の発症は81%が2回接種後から中央値で3日後であり、12%が1回目の接種後だった。

2022-02-18 20:25:52
influenzer @influenzer3

ワクチン関連心筋炎は入院例も非入院例も対象に含んでいたが、著者らはワクチン関連心筋炎では、入院例と非入院例で心臓MRI所見に違いがないことを見出した。

2022-02-18 20:25:52
influenzer @influenzer3

・ワクチン関連心筋炎では心膜下の線維化がしばしば見られたが、これはCOVID-19後や他の原因の心筋炎と同様の所見であった。しかし、心室中隔の線維化所見は少なく(less frequent)、左室機能障害の頻度も少なかった(less common)。

2022-02-18 20:25:52
influenzer @influenzer3

後期ガドリニウム増強所見(線維化を示す)の程度もワクチン関連心筋炎症例で低く、心筋組織内のT1, T2 mappingによる異常所見は高頻度に見られた(67- 79%)が、他の群と比べるとその程度は重篤ではなかった(less severe)。

2022-02-18 20:25:53
influenzer @influenzer3

・短期的予後ではワクチン関連心筋炎(追跡の中央値22日、77-49)では主要なイベントを認めなかった。一方でCOVID-19関連心筋炎では3例(中央値211日)、他の心筋炎では5例(中央値195日)で、主要有害心血管イベント(MACE)を発症していた。

2022-02-18 20:25:53
influenzer @influenzer3

・著者らの強調する主要な知見は以下である。1) ワクチン関連心筋炎は臨床的および画像所見での障害の範囲の上でも軽症である、2) ワクチン関連心筋炎の繊維化は主に心膜下に起こっており、これは予後良好の心筋炎と同一所見である、

2022-02-18 20:25:53
influenzer @influenzer3

3) ワクチン関連心筋炎では入院不要の軽症例でもMRIで異常が検出できた、4) ワクチン関連心筋炎症例では短期間の追跡調査では大きな問題は発生しなかった。ただし、これについては、他の群と追跡期間が全く異なっているため、この結論には限界があると考えるべきである。

2022-02-18 20:25:54
influenzer @influenzer3

・他にもサンプル数が少ないこと、レトロスペクティブ研究である事、患者集団の不均一性も限界として挙げられる。T1およびT2 mappingの所見は発症からの検査のタイミングも含めて各種要因で影響を受けるため、症状出現からMRI実施までの感覚がグループ間で異なっている点も問題である

2022-02-18 20:25:54
influenzer @influenzer3

。したがって、これらの知見を検証するためには、より大きな集団で、一貫したプロトコルで検査を行い、より長い追跡期間を設けた前向きコホート研究が必要であると言える。 (続く)

2022-02-18 20:25:54