「これは演習じゃないな」と実感を伴って感じた話。もうロシアを離れたのでしても良いだろう。

でんでん @313hakuihisyo

「これは演習じゃないな」と実感を伴って感じた話。もうロシアを離れたのでしても良いだろう。

でんでん @313hakuihisyo

今から1ヶ月少し前、開戦まで2週間すこしの時。モスクワの北500kmほどのところに位置する都市チェレポヴェツからモスクワに戻るために列車に乗り込んだ。 三等車に腰を下ろし荷物と就寝準備を整える。発車の直前、ふと窓の外(写真にある客車の裏手)を眺めると軍用列車が停まっていることに気がついた。 pic.twitter.com/gT9jFoxEyf

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でんでん @313hakuihisyo

その日は街で軍人の姿を見かけることが多かった。これは別に特段珍しいことではなく、ロシアでもウクライナでもベラルーシでも、制服軍人が街を歩き回っていることはよくあることだ。 ちょうど日曜日だったため、おそらく彼らは休暇を楽しんでいるのだろうと考えていた。

でんでん @313hakuihisyo

私がチェレポヴェツの駅に着いた時、ちょうど同時に脇の専用通路に軍の輸送車が入っていくのが見えた。通路のゲートには内務省のマークがあったような気がするが、詳しくは覚えていない。この時点では私は特段異様な状態であるとは捉えていなかった。

でんでん @313hakuihisyo

しかし、自分が乗り込んでいる客車の真横に並んでいる軍用列車の様子はどうにも異様である。勿論写真など撮れる訳もなく、また私に軍事知識は皆無であるため詳細は分からないが、貨車に戦車等の攻撃車両は積載されておらず、基本的には輸送車らしきもの、タンク車らしきもので占められていた。

でんでん @313hakuihisyo

列車は定刻で起動を開始した。自分が乗り込んでいる客車は先頭から10両ほど後ろにあり、軍用列車も先頭は同じくモスクワ方にあるようだった。 発車の時に追い越しながらざっと数えただけで作戦車両は30両ほど。編成の後ろにも貨車はまだ続いていたので、更に多くの車両が積載されていたはずだ。

でんでん @313hakuihisyo

連結されていたのは作戦車両だけではない。軍事輸送と関係あるのかどうかはわからないが、数両ほど有蓋貨車が連結されていた。 そして1番衝撃を受けたのは(観測できた)編成の中ほどにロシア鉄道の2等客車が3両連結されていたことだ。もちろんただの貨客混結ではない、乗り込んでいるのは全て軍人だ。

でんでん @313hakuihisyo

ゆっくりと自分が乗っている列車が加速していく中で、客車に乗り込んでいる若い兵士たちの様子はじつによく見えた。コンパートメントで仲間たちと窮屈そうに上着を着替え、乗車口では家族らしき人々が数人見送りに来ている。 機関車が付いていたのはやはりモスクワ方、すなわち国境を向いていた。

でんでん @313hakuihisyo

直感的に「これはとんでもないものを見てしまった」ということが分かった。ただの演習で、わざわざこの地方都市からこれだけの軍用列車を仕立てるだろうか？仕立てたとして、家族が見送りに来るだろうか？ やはりどうにも異様だった。

でんでん @313hakuihisyo

当時のロシア軍人は動きを隠すそぶりもなく、まるで見せつけるかのように部隊を移動させていた。だからこそ私が見てしてしまったものが「目撃自体が罪」と即座に見做されることはないだろうし、その点についてはあまり恐れてはいなかった。 問題は、「これは本当にただの演習なのか？」ということだ。

でんでん @313hakuihisyo

自分は前々から「ロシア軍は何かしらのアクションは起こすだろう」という専門家の意見を支持していた。一方で、当時のモスクワに流れていた呑気な空気感、そして軍事的行動によってロシアが得る利益を考えるとどうも現実的には信じ難い点もあった。

でんでん @313hakuihisyo

しかし目の前で見た30両編成以上にもなる列車の姿は、その疑念を確実に切り崩していった。 「これは多分、本当に何かが始まってしまうのだろう」ということを、実感を強く伴って私に感じさせた出来事である。

でんでん @313hakuihisyo

とはいえ実際にロシア政府が踏み出した軍事行動の莫大さ、無謀さ、残虐さ、悲惨さ、そして対抗するウクライナ国民の必死の抵抗、それに伴う西側の団結と過去に類を見ない強力な制裁は予想を遥かち超えるものだった。 この出来事を経てもなお、開戦で私が受けた衝撃は極めて苛烈だった。

でんでん @313hakuihisyo

現状ロシア軍に1万人、もしくはそれ以上の死者が出ているという報道さえある。 その犠牲者の中に、あの時見た彼らの誰かが数人含まれていても確率的には何らおかしな話ではない。 いかにもロシアの地方都市らしい長閑さがあったチェレポヴェツ。きっとその雰囲気自体は、今もほぼ変わらないだろう。

でんでん @313hakuihisyo

彼らの死が今後、街にどのような影響を与えるのかは全く分からない。新たな革命の火種になるのかもしれないし、街の博物館にあったような「大祖国戦争 この都市の英雄」として祀られるのかもしれない。ただ確実に言えることは、どちらに転ぼうと彼らが帰ってくることはないということだ。

でんでん @313hakuihisyo

敵と味方。様々な思惑はあるだろうし、彼らが戦地に望んで赴いたのかどうかはもはや分からない。どちらにせよ、我々にとっては1万分の1として処理される異国の兵士たちにも、名前と家族と友人と、そしてそれまで生きてきた人生が確実に存在していたということを忘れてはならない。

でんでん @313hakuihisyo

変わっていくロシアの片鱗をこのような形で目撃したことは「貴重な体験」なのかもしれないが、私は決してそのような軽々しい言葉であの日見たことを処理したくはない。その他の出来事も含めて、1ヶ月半のロシア生活の総括には相当の時間がかかるだろう。 (おわり)

でんでん @313hakuihisyo

インターネットユーザーが語る「ロシア」「ウクライナ」という主語があまりにもデカすぎるので、自分のチンポの大きさに自信を無くしてしまいました。

でんでん @313hakuihisyo

そろそろあの日のことを書かねばと思って書き始めたら落とし所がなかなかつかなくなり、所々悩みながら書いていたら書き始めから1時間以上経っていてびっくりした。よほど集中していたらしい。 twitter.com/313hakuihisyo/…

でんでん @313hakuihisyo

「歴史の目撃者」に確実におれはなってしまうのだろうけど、たったの二週間で「これがロシア連邦ver.1のオワリの瞬間だからよろしく」と言わんばかりの覚悟を決めさせられるのは吐き気がしますよ。こんなはずじゃない、おれはオワリを見にロシアに来たんじゃない。

でんでん @313hakuihisyo

そりゃ良いことだけが留学じゃないというのは当然ですけど、いくらなんでもこれは酷すぎる。自分はただ逃げることしかできなかった。

でんでん @313hakuihisyo

オンライン留学でいいわけないだろ！！！！！！俺はな！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！そこら辺の汚え食堂で安くて美味い飯食って！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！時々ロシアの国境や北京まで行って！！！！！！！！！！！そんな暮らしを考えてたんだ！！！！！！！！！！！