エンターテインメントロイヤー 四宮隆史弁護士が語る 映画と法律 著作権その2
8.昨日に引き続いて「映画と著作権」について、です。ちょっと前提の話が長くなってしまいますが、「原則を抑えること」は重要ですので、しばしお付き合いください。。。
2010-05-05 09:12:329.念のため、三沢市事件で「未編集フィルム」が「映画の著作物」ではないとされたことについて付言します。まず、大前提として著作物とは「思想又は感情の創作的表現」です。
2010-05-05 09:12:4910.そして、絵画や写真と異なり映画は「連続性」のある表現物ですので「全体として一個の思想の表現物」であることが著作物として認められる条件になります。
2010-05-05 09:13:0411.三沢市事件の対象は「NGフィルム選別、シナリオに従った粗編集、細編集、音づけ等の映画製作過程」を経ない未編集素材だったので、「全体として一個の思想」を表現したものと認められませんでした
2010-05-05 09:13:2212.ただ同時に、同事件で裁判所は、「製作が途中で打ち切られてもその時点までに製作されたものに創作性が認められれば、その限りで製作者は著作権を取得する」とも述べています。
2010-05-05 09:13:3813.ですので、未編集又は編集途中の映像であっても、「全体として一個の思想の表現物」と認められる内容のものであれば「映画の著作物」として認められる可能性は高いです。
2010-05-05 09:13:5114.後で詳述しますが、「映画の著作物」であれば、著作権は「映画製作者」という人又は団体に帰属しますが、「映画の著作物」でない場合は原則として「実際に撮影をした人又は団体」に著作権が帰属します。
2010-05-05 09:14:0815.「実際に撮影をした人又は団体」とは、監督や制作会社を意味します。皆さんも「制作委託契約」という名の契約書を締結した経験があると思いますが、、、
2010-05-05 09:14:2716.「素材の権利が誰にあるか」を定めた条項があるかを改めて見直してみてください。なぜ完成した映画の権利だけではなく素材の権利についても定める必要があるかは三沢市事件の影響があるからです。
2010-05-05 09:14:4317.長くなりましたが、「映画の著作物」は「全体として一個」の表現物である必要がある、だから未編集素材は「映画の著作物」と認められない可能性があること、そして、、、
2010-05-05 09:15:0018.未編集素材が「映画の著作物」に該当しない場合は、監督や、(製作委員会や出資者ではなく)ラインを仕切る制作会社に著作権が帰属する場合があること、を抑えてください・・・続きは次回
2010-05-05 09:16:00