【この世のもの】福間健二 #k2fact328
乱れる列の上の曇天にも抗議したいことあって、忘れられた求愛の箱とともに発達する溝に落とすのはなんの皮か。保湿。それ以上に望むこと。リズムからでもイメージからでも動けばいい。来るかな、本当に来るかなと心配した人が来た。雨のように。でも、マッシュポテト。(この世のもの1) #k2fact328
2022-04-20 17:24:14マッシュポテトにタラとタマネギを入れて炒めたのをグラタンにする。やさしくしたことのない幽霊になぜかモテる、でも起きあがる体しか相手にしない彼女の得意料理。少しでいいから、と夜風に吹かれながら乾いた距離を修正する彼は言う。ジャガイモの皮、とっておいて。(この世のもの2) #k2fact328
2022-04-21 12:18:27バナナの皮でもよかったけど。風の叫び、怖くないよと無邪気に踊る子どもの出てくる詩。イエーツか。どちらかが思い出し、この世の二人。不運、不遇も、気にしすぎないようにできて。雨のあがった朝、ウクライナのニュースも希望の樹も二人で見た。カラスが鳴いている。(この世のもの3) #k2fact328
2022-04-22 11:22:41波の音。砂利を運ぶトラックが通っていく。遠い影が手で合図しておじぎもした。行っちゃだめ、と肩を捕まえられる。感謝しそこなうが、だれの手なのか。人をつよく叩いたりはしない手だ。このへんには砂利で大儲けした連中がいる。だれかの義理の姉さんから聞いた話だ。(この世のもの4) #k2fact328
2022-04-23 13:49:59息をしているぼくたち。気づくべきこと。描かれる前から存在する線。それで人生はこうだとかアジアの階段は降り方に気をつけろとか泣く石にはなにか被せろとか言う暗い目をどうするか。自転車に乗って入っていく。目的別に、この世の怪物。始末しなくていいやつもいる。(この世のもの5) #k2fact328
2022-04-24 19:15:10よく眠る。だれができている。また見てしまう。黒い犬になにか持っていかれてしかたないとあきらめる者たちに腹を立てる夢。可動性わるくないのに方向を見失ったり名前が変わったりする骨。複雑、そっと撫でるしかない。そいつはスタジオのそばを偶然歩いていただけ。(この世のもの6) #k2fact328
2022-04-25 11:39:59だれの手も借りないで、と思うが、他人の曲で目ざめて夕方までそのリフレインを引きずる。三人か四人。ひとりが得意そうに情報を語ってあとは黙り気味でそれぞれの態度のときの、最悪の役は。複数の心臓が滑りおちる光不足の現実。知らなくていいことばかり耳に入る。(この世のもの7) #k2fact328
2022-04-26 11:38:17人と人が触れあう音。聞いて落ち着いていられることは滅多になく、ぼくは信じなかった。小さな花がずっと遠くまで咲いていて、夜に出発した者たちの秘密を握る手がその先に待っているなんて。巻きつく。抱きしめる。包みこむ。幸福を主語にできるなら、どれがいい?(この世のもの8) #k2fact328
2022-04-27 11:28:51うるさいひとりにならないこと。わかってはいるが、なって、同時に奥の赤い扉に体当たりする。何を救いだしたいのか。人生という終身刑から、物質と運動を結びつけて、自由な魂。なにか手伝うことありませんか、と気どらない歩き方で近づき、きみの内面を理解する。(この世のもの9) #k2fact328
2022-04-28 13:56:46二十四時間のよじのぼりがここに生みだすもの。風が通って、枝や葉の影が揺れて、だれのだとしても個人的な理由のすわる場所が動き、なつかしい。こんにちは、口で見て目で語る人。不安の消えない午後だが、折りたたまれた紙を広げてみると生きのびろと書いてある。(この世のもの10) #k2fact328
2022-04-29 13:59:24