未完成の理想郷2話「もこもこぱにっく!」

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未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

広大な森林エリアの探索は、当然草原エリアとは比べ物にならない程過酷なものであった。 草原エリアは見渡しもよく、生活するための資材も簡単に見つけることができた。 そして、何より自分達を害する者の存在がなかった。 森林エリアには魔物という、転生者を攻撃してくる存在が生息している。

2022-04-29 21:01:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

超人的な身体能力を手にした転生者たちだが、心の問題は別。自分達の命を狙う存在が近くに存在する、それだけで、命のやり取りに慣れていないものは恐縮してしまう。

2022-04-29 21:02:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

実際に、魔物の攻撃に対して回避も防御も容易にできる状況、にもかかわらず身体が動かず、攻撃をそのまま受けてしまったという転生者もいた。 まあ、超人的な身体能力によって大きな怪我を負う者はいなかったが。

2022-04-29 21:03:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

だが、そんな生活も一カ月続けば慣れる。最初の頃は恐怖に動けなかった者も、今は逃げることくらいはできるようになっていた。

2022-04-29 21:04:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「そろそろ、森林エリアも浅いところばかりでなく、さらに奥まで探索しようと思います。魔物との戦闘もまだ様になってきたとは言い切れないところは重々承知ですが、今のところわたくし達の命を脅かす程の危険を持つ魔物は見受けられません。もちろん油断は大敵ですが。」

2022-04-29 21:05:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「ふむ、一理あるな。自分の身体とは思えんほどの身体能力があることが、此度の探索で十分理解できたからな。それに、いつまでもここで燻っていても先には進めん。」 「そうだね、パッチ様の依頼を早く達成すれば特別ボーナスとか出るかもしれないしね。」

2022-04-29 21:06:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

毎日恒例の夜の活動報告中。やはりというべきか、★兎が皆の中心となり課題や指針を決める。こういったことに前世での経験があるのか、それとも転生されて才能が開花したのかはわからないが、転生者の中で不満があがることはなかった。

2022-04-29 21:07:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

そして、★兎に対して最も意見を述べるのが、ネフェルとルナの二人である。 転生してからこの三人が基本的に、指針、計画、課題を考え、★兎がそれを夜の活動報告で他の転生者に拡散するという役目を担っている。

2022-04-29 21:08:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

しかし、それはあまり他の転生者には知られていない。 自分達が考えた策を自分達で肯定して活動報告の場を支配するという自作自演でスムーズに議題を可決させるためである。

2022-04-29 21:09:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

つまり、先程ネフェルとルナが自分達で考えた指針であるにも関わらず、★兎の意見に間髪入れずに賛同したのは駄々を捏ねるであろう者への牽制である。 事実、憲史、マルガリィタあたりは「うっ」と口を挟むタイミングを失っている。

2022-04-29 21:10:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

森林エリアを探索する前日の活動報告の際に出た不満。あの時は後を引くことはなかったが、一歩間違えれば全員が草原エリアから出なくなっていた可能性もあった。 その可能性を防ぐために三人が共同したのである。

2022-04-29 21:11:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

ぶっちゃけ言うと、草原エリアに留まるのが一番安全で堅実。わざわざパッチの言うことを聞いて他のエリアを探索する必要はない。最低でも、もっと準備を入念にして次のエリアを探索する方が無難である。しかし、その選択を取ることはとある事件により不可能となってしまった。 時は少し遡る。

2022-04-29 21:12:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「やあ、皆さんお久しぶりですね!」 「あ、神様だ!」 「そうです、皆さんの神様パッチ様ですよー。」 「何しに来やがったごみ。」 「いやいや、様子見に行くって言いましたよ、俺。そんな殺気飛ばさないでくださいよ、スターラビットちゃん!」

2022-04-29 21:14:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

この場にいるのは、かがみ、カナタ、ルナ、ネフェル、★兎の五人。 日中、これから皆で森林エリアの探索に行くぞっという時に、自称人材派遣の神であるパッチが現れたのだ。

2022-04-29 21:15:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「様子見もそうなんですが実は皆さんに残念なお知らせがあるんですよねー。」 「帰れ。」 「★兎君落ち着いて、それでお知らせとは?」 今にも殴りかかりそうな★兎を、ルナが止める。 「おお、ルナティッ君よ、よくぞ聞いてくれました。そして、よくぞスターラビットちゃんを押さえました。」

2022-04-29 21:16:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「る、ルナティッ君?」 「とっとと話せ、そしてとっとと消えろ。」 「こわー、わかりましたよー。実はですね、皆さんの探索に期限が付きましたー!!」 「はあ!?」 いきなりの依頼内容変更に声を上げる五人。

2022-04-29 21:17:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「いやはや、天界のじじい共がNO NAMEの調査が遅いだのなんだの言ってましてねえ、俺達神がやってるんじゃないからそりゃ遅いでしょって俺も反対はしたんですよ?でも、俺の意見なんて完全無視。くそ上司ですね。結局会議の結果、今から二年以内に調査を終わらせなければいけなくなりました。」

2022-04-29 21:18:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「に、二年……もし、二年以内に調査が終わらなかった場合どうなるんですか?」 「その時は世界を滅ぼしまーす!」 「はあ!?!?」 先程よりも大きい声を上げる五人になんのこともないようにパッチは追い打ちをかける。

2022-04-29 21:19:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「そして、言っていなかったんですが皆さんの身体はNO NAMEにしか適応できないように作られているんですよね、つまり、NO NAMEが滅亡したら、皆さんも一緒にどかーんです!」 「ッッッッざけんな、いきなりなんだよこのゴミカスがああああ!テメェ、神名乗ってんだろお!責任もって全員助けろよ!」

2022-04-29 21:20:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「落ち着いて、★兎さん。パッチさん、その時はアタシ達を別の身体にして別世界へ飛ばすっていうことはできないのかしら。」 激怒する★兎を落ち着かせながら、カナタは冷静に問う。

2022-04-29 21:21:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「うん、俺も流石に可哀そうだと思って、カナータ嬢の言う通りの内容で稟議は上げたんですけど決済貰えなかったんですよね、経費削減って書いてある付箋と一緒に戻ってきちゃいました。」 「そんな理由で!?」 「天界も世知辛いね……。」

2022-04-29 21:22:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「そもそも、何故世界を滅ぼさねばならないの?」 「天界の人手不足は前言いましたよね、世界には最低神様一人、そして天使を複数人つけることが決まっているんですよ。しかし、今このNO NAMEには人手不足の中、人材を配置する程の価値が見出せていない状態です。」

2022-04-29 21:23:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「今は皆さんを配置することで特例という措置を取ってはいるんですが、グレーゾーンでもあるんですよね。普通に監査に見つかったらコンプライアンス違反判定されてもおかしくないのです。」 「「………。」」

2022-04-29 21:24:00
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