デザ古河・覚醒編

なんか彷徨ってる感じ。 覚醒、できるといいね……(やさしいかお
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0.発端編

古河切夏 @psyka_dz

@null なお作中にて「八神くんと古河が寮の同室」、「学校から最寄りのカラオケは寮の先」と設定しております。何らかの齟齬が起きました場合はお教え願えると助かります。では、御笑覧を。 #dezasure

2011-09-01 15:19:55

古河切夏 @psyka_dz

@null 「……おい、セイ。どうしたんだよ」 帰り道、ふと足が止まった。 「……いや、別に」 怪訝そうな顔に言葉を返し、けれど歩みは進めない。 前を歩く五人、親しい友人――楽しげな笑い声。その輪から一歩はみ出したままでいる。その中に、入れないでいる。 #dezasure

2011-09-01 15:20:36
古河切夏 @psyka_dz

@null 自分の前に大気の壁があるイメージ。それは透明な…… 「……」 そんなものがないことは分かっている。 それでも目の前がフィルタでもかけたみたいに歪んでいるのは何故だろう。キラキラと輝くそれは、自分と輪の間に必ずあって、ずっと取り除けないままだ。 #dezasure

2011-09-01 15:21:19
古河切夏 @psyka_dz

@null 「古河くん……どうしたの?」 いつの間にかすぐ目の前に差し出されていたハンカチに、 「え、な、何が?」 間の抜けた応えしか返せない。 「……涙、出てるよ」 目元を優しく拭っていった真っ白な布地、その端は水気を含んで鈍い灰色に染まっていた。 #dezasure

2011-09-01 15:21:34
古河切夏 @psyka_dz

@null 「……眠いんだ。さっきから欠伸が出て」 誤魔化して視線を逸らす。気持ちも逸らす。 「……それならいいんだけど」 納得なんかしてない声で君は言った。僕を見ながら。 「うん、それだけだから」 嘘にもならない言葉で僕は言った。君を見ないまま。 #dezasure

2011-09-01 15:22:22
古河切夏 @psyka_dz

@null ――寮の前で皆と別れる。カラオケに向かう皆を見送って、部屋に戻る。 ベッドに腰掛けて息をつく。夕陽で赤く染まる窓の外が、すぐに薄暗い夜に変わっていく。電灯も着けずに、それを見ていた。 「……俺は、何を」 やっているのか。視線が揺れ、流れる。 #dezasure

2011-09-01 15:23:07
古河切夏 @psyka_dz

@null この部屋のもう一人の主は今頃何をしているだろう。 こんなことで悩んではいないだろう。こんな下らないことで。 楽しくやっているだろう。みんなとまっすぐ視線を合わせて。 「ああ……」 だからそれが眩しくて、悔しくて……羨ましくて、堪らないんだ。 #dezasure

2011-09-01 15:23:38
古河切夏 @psyka_dz

@null ――急に電気がついて、もやがかかった意識が引き戻された。 #dezasure

2011-09-01 15:23:45
古河切夏 @psyka_dz

@null 「……おいセイ、大丈夫か?」 揺さぶられて目を覚ます。視線の先にいつもの顔。 「……大丈夫だって」 身体を起こして見上げる。大きな体躯、まっすぐ見据えてくる瞳。 「寝てただけだ」 またか、と苦笑する声。視線を逸らす。俺はまた逸らしている。 #dezasure

2011-09-01 15:24:19
古河切夏 @psyka_dz

@null コイツの視線は、たぶん誰だって見据えるだろう。正面から、まっすぐに。 誤魔化して、嘘を吐いて、きっと嫌われてしまうようなことを考えて、それを恐れて言葉を濁して、同じところを延々と回り続けるような……こんな愚劣な後悔には陥らない。 #dezasure

2011-09-01 15:24:32
古河切夏 @psyka_dz

@null 無防備な背中を見る。不意を討ったってそう簡単にやられるようなヤツじゃないが……多分信頼されている。ここでは何も起きないと。 「あのさ、」 「んー?」 言葉を発しかけて、気のない返事に我に返る。 「……なんでもない」 「意味わかんねえ」 #dezasure

2011-09-01 15:25:05
古河切夏 @psyka_dz

@null そりゃあそうだ、意味なんかわからない。俺だって、わからない。 でも急に言いたくなったんだ。こみ上げてきた、突き上げてきたんだ。肺腑の底から、言葉が。 飲み下した言葉が胸の中に酷く突き刺さって、痛い。それでも、今言うわけにはいかないんだ。 #dezasure

2011-09-01 15:25:18
古河切夏 @psyka_dz

@null ――「俺はお前と『友達』になりたい」なんて! #dezasure

2011-09-01 15:25:23

1.松木編

@matu_ss

@psyka_dz 「ううむ」 考える時間が増えた。前から悩みっぽいとは言われていたが、近頃はそれが倍する勢いだ。陰気な自覚はある。理由も分かっている。「難しいな」 色々あって、色々考えている。悩みの種は尽きない。「何を立ててどこに折り合いをつけるのか……」 #dezasure

2011-09-03 02:15:57
@matu_ss

@psyka_dz 時間は常に切迫していて、リソースは限られている。その中で探す次善の回答。「難しい」人の心と環境と、現実は変数だらけで気が遠くなる。「しかし、まあ」状況は時々刻々で、下手の考えは休むに似たりだ。悩んでばかりもいられない。 #dezasure

2011-09-03 02:16:06
@matu_ss

@psyka_dz 前進ばかりが是ではないが、後ろ向きではいられない。何せ―― 「皆、どんどん先へ行くからな」拳を交わした友を思い。「やっぱり、先へ進みたいからな」省みて。「お前は、何を悩んで何を求めてるんだろうな」今まで踏み込んでこなかった友人の事を、思う。 #dezasure

2011-09-03 02:16:15
@matu_ss

@psyka_dz 逡巡と懊悩、そして距離。遠く在る友人に差し伸べられる手はあるだろうか。彼は確かに求めているが、その相手は自分ではなく――「……正解は、ないんだった」 人の事を考えている場合ではない。だが、近頃感じる彼の気配は、気がかり以上の"何か"だった。 #dezasure

2011-09-03 02:16:26
@matu_ss

@psyka_dz ――だから。歩いて、探して、姿を見つけて。「古河」声をかける。「何か悩んでいるんじゃないか」警戒の気配。「俺でよければ話を聞く」明確な戸惑い。「俺も知っているつもりだ」疑問の視線。「一人きりは……耐えられんよな」まずは一歩、踏み込んでみる。 #dezasure

2011-09-03 02:16:37

古河切夏 @psyka_dz

@matu_ds 「古河、」 下向きの視界の中、思慮深く、重みのある声が鼓膜を震わせた。 この声を聞く機会はそんなに多くなかった。もちろん喋らないわけじゃない。こいつも俺も、別段口数が多い方じゃないから。 #dezasure

2011-09-06 10:10:52
古河切夏 @psyka_dz

@matu_ds 「何か悩んでるんじゃないか」 その言葉に思わずびくりと、躰が震える。 「…………」何故。と聞くにも言葉が出ずに、ただ一瞬その顔を見上げた。 「俺でよければ話を聞く」 まっすぐな視線に貫かれ、びたりと思考が止まった。。 #dezasure

2011-09-06 10:10:57
古河切夏 @psyka_dz

@matu_ds 「……あ……」餓えが、飢えが、溢れて思考を擾乱させる。駄目だ、それは、駄目なんだ。見えない何かを求めるなんて、届かないものに手を伸ばすなんて、 #dezasure

2011-09-06 10:11:38