連続ついのべ「聖美といた夏」(不完全版まとめ)

偶然から生まれた連続ついのべシリーズ、「聖美といた夏」をまとめました。 全25ついのべですが、まとめるのが遅れたために最初の方はまとめから外れてしまっています。 完全版まとめはコチラで読めます。 http://ameblo.jp/amethysta2020/entry-11020756670.html ごめんなさい。
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(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 彼女はキスの感触が気に入ったらしく、何回もキスを求めた。私達は何回も、深いキスをした。そして、もつれ合うように抱きしめあった。彼女の体は細く軽く、すぐにでも壊れてしまいそうだった。…私は彼女を抱いた。泣きながら抱いた。本当に、彼女は私を天国へ連れて行ってくれた。

2011-09-12 23:32:56
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 次の日の朝。目覚めると既に聖美は起きていて、軽やかに歌っていた。「おっはよう♪おっはよう♪」「…体は、大丈夫?」「大丈夫!すごく幸せなんだ。アナタのおかげ!ありがとう」美しい笑顔。見とれてしまっていると、また軽くキスされた。「さあ、録音しようよ?私、歌いたい!」

2011-09-13 18:53:36
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 彼女の歌は驚異的だった…!昨日より、さらに成長している。声量も昨日とは比べものにならないくらい大きい。プロの歌唱を何人も聴いている私だが、聖美の歌声は今まで聴いた誰の歌声よりも最高だった。深いヴィヴラートと、長いサスティン…!自由自在な歌声。人間離れしていた。

2011-09-13 18:55:24
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel しかし終わりは突然やってきた…。夕方、ひどく咳き込み、口から血の塊を吐き出す彼女。「だ、大丈夫か?クスリを…」彼女のバッグを探る。しかしクスリは見当たらない。「…ご、ごめんね…」息も絶え絶えに彼女は言う。「今朝、2倍の量を飲んじゃったの。もうクスリは残ってない」

2011-09-13 19:01:59
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 楽園大学付属病院。聖美がもともと入院していた病院らしい。聖美についての事情は伝わっていたらしく、すぐに救急車はこの病院に到着した。動かなくなった聖美と私を乗せて。…病院で待っていたのは、薄汚れた白衣に長い黒髪、銀縁メガネの、あまり医師っぽくない若い女性だった。

2011-09-14 18:55:28
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「聖美の担当の、皿田だ。すまないコトをした」彼女は何もかも知っている様子だった。「聖美の体に盗聴器と発信器がつけてあったからね。事情はわかってる」冷たい表情で彼女は言った。「…なら、なぜ!なぜ救えなかった!?」私は彼女に掴みかかろうとした。「…すまない。謝るよ」

2011-09-14 18:59:03
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「聖美は実験体だったんだ」彼女は言った。「聖美は11歳の時に、一度死んでいる」私は驚く…。「そんな、まさか…」「まあ、死んだといっても脳死状態だったんだが。それを回復させるために、脳を再生する実験をしていた。記憶を人工的に作って彼女に与え、脳を復活させる実験だ」

2011-09-14 19:02:00
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「しかし、うまくいかなかったんだ!なぜか「死にたい」という意識が再構築させた脳からは出てしまう…」彼女は冷ややかに横たわる聖美を見る。「だから試しに「歌いたい」という意識を与えてみたんだ。すると、意外なほど上手く成長した。しかし…欲求不満で脱走してしまってね」

2011-09-14 23:37:09
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「そういうコトだったのか…」私はただ、聖美を見つめるコトしかできなかった。「再生はできないんですか?」「…無理だな。肉体の損傷が激しい。強い薬を与えすぎてしまったな。彼女のコトはあきらめてくれ」冷たく皿田は言い放つ。「…最後に、キスくらいならしてもいいよ?」

2011-09-14 23:40:53
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 自宅に戻った。最悪な気分だった。ひどく疲れていた。私は泥のように眠った。…夢。夢の中でも、聖美は私に歌いかける。「おっはよう♪おっはよう♪」…私は目を覚ました!そうだ!パソコンを立ち上げ、録音した聖美の歌声を再生させる。素晴らしい歌声が再生される…!私は泣いた。

2011-09-14 23:47:05
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 聖美の歌を何回も聞き直して、私は思った。彼女はあの日、死を覚悟していたんじゃないか?「…きっと、そうだ!」朝に2倍量の薬を飲んで、薬がもうないというコトを知っていながら…全力を込めて歌ったんだ。命を懸けて。考えれば考えるほど、聖美を深く愛さずにはいられなかった。

2011-09-15 23:32:40
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 彼女の歌を完成させるコトを決めた!それから私は3日間、ほとんど寝ずに、何も食べずに曲作りに没頭した。聖美の歌声を一つの作品として残すために、全てのチカラを使って…完成させた!私はネットの動画投稿サイトに、その歌をアップした。そして疲れ果て、再び泥のように眠った。

2011-09-15 23:35:26
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 2日間で3万アクセス。トップクラスの作曲者にはかなわないが、私にとっては十分な反応だった。聖美の完璧な歌声に、「コレって新しいボーカロイド?」とかいうコメントがついたりした。「感動」とか「泣ける」というコメントが幾つもついて、私はほとんど狂喜した。最高だ。

2011-09-15 23:43:03
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 突然私の家のチャイムが何回も鳴らされた。午前2時。…こんな時間に?不審に思いつつドアを開ける。そこには、白衣を着た長い髪の女性…。皿田だ。「聴いたよ、聖美の歌!素晴らしいじゃないか!」上気した笑顔で皿田は私に言う。「何の様だ?」「…聖美を生き返らせてみないか?」

2011-09-16 19:00:06
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「何だって!?」訊き返す。「感動したよ。あんな曲…なかなか作れないだろう」もう一度、訊く。「生き返らせるって、どういうコトだ!?」「…彼女の意識データは全て、大学のコンピュータの中に残っている。396TBのデータだ。それをキミに預けてみようかと思ったのさ」

2011-09-16 23:29:39
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 396TB!?膨大なデータだ。「396TBの記憶容量を確保できれば、キミのパソコン上に聖美の意識を再生できる。用意できるか?」皿田は微笑みながら言い放つ。確かに、確保するには大変な容量だ。しかし無理な容量ではない。「用意する!どんな手を使ったって、用意するさ!」

2011-09-16 23:36:43
(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel …あれから2年。今日も聖美は私のパソコンの中で歌っている。好きな歌を好きに歌って、幸せそうだ。「おっはよう♪おっはよう♪」「おはよう、聖美。また、夏が来るよ。キミの大好きな季節だね」「うん、大好き!だって、アナタと出会えた季節だもの!」最高の笑顔で、聖美は歌う。

2011-09-16 23:43:54