七夕とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~ササノハ祭りで悪霊退治!~】
- suzumeninja
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七夕とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~ササノハ祭りで悪霊退治!~】 (実況感想ハッシュタグは #エルフ三人娘 だと後で拾えるので嬉しい)
2022-07-07 22:00:25「そろそろ次の街が見えてくる頃だな」夏のよく晴れた爽やかな日差しに照らされて街道を歩く3人組。先頭を歩くのは、胸にサラシを巻いて竹の軽鎧に身を包む、ギザギザ歯で長身のバンブーエルフ、メンマだ。
2022-07-07 22:01:48「メンマ、いつもより張り切ってる気がすゆ」メンマの後ろに続くのは、ミスリル銀の保管箱を背負う、ズングリとしたポテサラエルフのポテチ。顎の力が弱く舌っ足らずで、ポテトサラダを主食とするエルフだ。
2022-07-07 22:02:46「なんたって、アレがあるからね~」最後尾を歩くのは、ボサボサの金髪に簡素な貫頭衣でニコニコ笑うクソバカエルフのハカセ。クソバカエルフなんて名前だが、別名”森の賢者”とも呼ばれる叡智に満ちたエルフだ。
2022-07-07 22:04:02「アレってなんだゆ?」ポテチは首を傾げるが、すぐにその答えがわかった。「うおー!見ろ見ろ!」はしゃぐメンマが指差す先には街があり、そして、その街はバンブーに囲まれていた。
2022-07-07 22:05:44ヒューマンならざる旅エルフの三人は、エルフがヒューマンの良き隣人であることを知らしめるために旅をする。ゆく先々でヒューマンを助けることでお互いを知り、エルフの森焼きを防ぐという大役があるのだ。
2022-07-07 22:07:21「うおー!見渡す限りのバンブー!懐かしいなあ!おい!」メンマは久しぶりに見る自生バンブーに生まれ故郷を思い出し一人で盛り上がる。「ここに来たのは初めてだゆね?」ポテチがメンマを見上げる。「おう!だけどよぉ、ポテチだって見渡す限りのポテト畑があったらどうだよ?」
2022-07-07 22:10:42「み、見渡す限りのポテト畑……!」ポテチは脳内で想像する。故郷のポテト畑にも引けを取らない大規模ポテト畑で、思う存分ポテサラを作る自分の姿を幻視した。「でへへへへ……」あまりに都合の良い妄想に顔が緩みきるポテチ。
2022-07-07 22:12:39「ポテチ、戻ってきて!」ハカセの声にハッと我に返るポテチ。「メンマの言う事、とても、とても分かった気がすゆ……」あんまりにも緩みきった顔をしていたことを自覚してか、とたんに恥ずかしくなったポテチはもじもじする。
2022-07-07 22:14:11メンマは街の中を見渡す。「へー、家もバンブーでできてるじゃねえか。ますます懐かしいな……」恥ずかしさを誤魔化そうと、ポテチはメンマに疑問を問いかける。「そ、そういえば、バンブーは鋼よりも硬いはずだゆ。どうしてヒューマンが加工できゆ?」
2022-07-07 22:17:23バンブーエルフの扱うバンブーウエポンは様々あるが、どれも鋼鉄に引けを取らない(あるいはそれ以上の)頑丈さを持つ。しかし、この街で資材として使われているバンブーは特別な加工をした痕跡はない。「それはねー、魔力がないからだよ」ハカセがサラリと答える。
2022-07-07 22:18:55「どういうことだゆ?」「メンマはいっつも魔力を使うでしょ?ここのバンブーには魔力がないんだよ」「ゆ???」ポテチはうまく説明を飲み込めない。クソバカエルフは凄まじい頭脳を持つが、それゆえに会話で言葉が足りず、理解してもらえないことが多い。クソバカエルフの名前の由縁の一つがそれだ。
2022-07-07 22:21:17「ポテチにもわかりやすいように説明するとだな……」メンマが説明サポートに入る。「アタイらが使うバンブーは土地の魔力を吸って固くなる。バンブーエルフの土地は魔力がいっぱいあるから強いバンブーになる。だけど、魔力が少ない土地ならヒューマンにも簡単に切れちまうバンブーが育つってわけ」
2022-07-07 22:23:54「ようは土壌養分の差ってことゆね」「そういうこった」さすがはポテト生産が生命線の農耕民族ポテサラエルフ。こういう理解は素早い。「それは分かったんだけゆど、あれはなんだゆ?」ポテチは立ち並ぶ家々の玄関前を指差す。そこには、色とりどりの短冊が結び付けられたバンブーが飾られていた。
2022-07-07 22:27:49「ああ、ありゃあ……」メンマが説明しようとしたその時、一人のヒューマンが声を上げた。「あ!バンブーエルフ様だ!バンブーエルフ様がいらっしゃったぞ!!」「なんだって!?」「バンブーエルフ様が!?」途端に人々が集まり、あっという間にメンマたちは囲まれてしまった。
2022-07-07 22:29:54「おいおいおいおい!なんなんだよ?」最も困惑しているのは渦中のエルフであるメンマだ。「メンマ、昔この街に来た?」「んなことあるかよ」ハカセの問にメンマは首を横に振る。そうこうしているうちにも人々が集まり、このままでは街中の住人が集まりそうな勢いだ。
2022-07-07 22:32:08「これこれ、皆の者、落ち着かんか!」群がるヒューマンの中から、ひときわよく通る声が響く。その声を聞いた人々は落ち着きを取り戻し、声の主に道を開ける。「よくこの街においでくださった。私は代々ササノハ祭りを仕切る者です」「ササノハ祭り?」メンマは首を傾げる。
2022-07-07 22:34:58「はい。この街で毎年盛大に行われている祭りでして。詳しい話は我が家でお話いたします。長旅でお疲れでしょう。さあ、どうぞこちらへ」代表者らしき人物は、メンマ達を案内する。メンマとポテチは最初はちょっぴり怪しいと思ったが、ハカセが何も疑わずについていったことで安心してついていった。
2022-07-07 22:37:54場所は変わって代表者らしき人物の家の中。「こりゃあ、すげえな……」メンマは調度品に目を奪われる。それらはすべてバンブー製で、物によってはメンマの加工力を超えて繊細な細工が施されたものもある。「さあ、どうぞおかけください」代表者らしき人物は三人をテーブルに案内し、ササノハ茶を出す。
2022-07-07 22:41:41ササノハ茶を一口すすったメンマは目を見開いた!「う……」「ど、どうしたんだゆ!?」ポテチが慌ててメンマを見る!「う……」「う?」ハカセもメンマを覗き見る。「う……うまい!!」メンマは溜めに溜めた感嘆を解き放った。「「ズコーッ!!」」ハカセとポテチはずっこけた。
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