クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

中層を行き来するリフトの終着駅から降り、別の路線……下層への始発駅へと乗り換える人々はまるでゾンビめいて、俯きながらヨロヨロと歩く。下層へのリフトへ乗り込むものは多いが、降りてくる者は少ない。乗り込む者達の人波にまぎれ、ニンジャスレイヤーとガンドーは暗い視線を交わす。

2011-09-19 00:26:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴーン、ゴーン……ガゴーン。トークン式のゲートの向こうで、降下するリフトの重苦しい稼働が垣間見える。二人はIDを提示してゲートをくぐる。駅構内は不気味な行商人達が思い思いにゴザを広げている。バイオヒヨコを満載した檻に寄りかかるように座る男。ボール紙の看板には「おてまみ」とある。

2011-09-19 00:32:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「安い」「安い」「遺伝子でビジネスあるよ」「タバコと交換」「そっちじゃ騙される」「基板……ギリギリ違法」耳を凝らせば、ざわめきは彼ら行商人が呟く売り文句である事がわかる。リフト利用客は皆、無言だ。

2011-09-19 00:35:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当然、ニンジャスレイヤーとガンドーもそれら売り子には反応せず、上がって来たリフトに乗り込む。ギュグン!くぐもった稼働音とともにリフトは降下を始める。「アッ!?」申し訳程度の高さの手摺をはみ出し、不注意な労働者がリフトから転げ落ちる。「アイエーエエエ……」悲鳴は眼下の闇に飲まれる。

2011-09-19 00:48:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パイプ群がむやみに這い回る壁面に、蛍光スプレーで「覚悟はよいか」と書かれている。その他、「火の魔法」「蛇のように曲がりくねる」といった狂気じみて無意味な文言。「アッハハー!」見よ、この満載のリフトにも一人、狂者が一人、蛍光スプレーを取り出し、壁に「サヨンナラ」と書き始めた。

2011-09-19 00:52:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「テメッコラー!」「アッ!?」激昂した労働者に肩を押され、狂者は容易くリフトから転がり落ちる。「アイエーエエエ……」ゴンゴンゴン……陰鬱な下降音。先ほどの落書きも、はるか頭上だ。「第10層ドスエ。忘れ物の無いように」マイコ音声のアナウンス。七割はここで降りるが、二者はそのままだ。

2011-09-19 00:55:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「慣れたものだな」「まあ、ちょっとな」)ニンジャスレイヤーは先程のガンドーとのやり取りを思い出していた。ジキソ民のIDをニンジャスレイヤーに渡したガンドー。既に彼は自分用の偽造IDを所持していた。(「下層への行き来はしばしばするのか」ガンドーは口の端を歪め「上がって来たのさ」)

2011-09-19 01:00:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「上がって来た?」「そう、俺の生まれはな……第13層……今回の腐れ掘削機の設置点とやらだな」)そう告げたガンドーは無表情だった。ちょうど今と同じに。(「では今回の件は」「ハッ!他人事さ。どうせ俺を知る奴なんざ残っちゃいねえ。そういうものさ……下層ってのは……」……)

2011-09-19 01:05:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウン……ゴウン……二者を乗せたリフトは呻き軋みながら、二者をキョートのより深い場所へ……エンシェント・オイランの胎内へと運んでゆく……。

2011-09-19 01:09:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より:「クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド」#3 終わり。#4へ続く

2011-09-19 01:10:18