観察するとはどういうことか?

shinshinohara @ShinShinohara

「観察」考。 昨晩のウェブ飲み会は、観察がテーマ。でも、観察って難しい。見ていても見えないことがあるから。次はナイチンゲールの言葉。 『経験をもたらすのは観察だけなのである。観察をしない女性が、５０年あるいは６０年病人のそばで過ごしたとしても、決して賢い人間にはならないであろう。』

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「路傍の石」という言葉がある。確かに目に入っているのに、見えているのに、道端の石ころは気にとまらず、意識されず、気づかれもしないという言葉。私達は、ただ漫然と見ているだけでは見えない。「ありがちな景色」処理され、意識に上ってこない。これでは観察にならない。

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意識して観察しようとしても、何をどう意識したらよいのだろう？「意識しよう」と思ってもただ気張るだけで終わりがち。それでは気疲れするだけで、やはり何も見えない。「ちゃんと観察して！」と伝えるだけでは抽象的過ぎて、何をどうしたらよいかわからない。

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高校生に「タオル干しといて」と頼んで、驚いたことがある。金属の棒の先にフックがあったのだけど、タオルの端っこをそのフックで貫いてぶら下げていた。タオルに穴はあくし、しわくちゃ。家のベランダで散々タオルを干してるのを毎日目にしていたはずなのに、観察できていなかった。

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では、懇切丁寧に教えれば観察できるようになるのか、というとそうでもない。教えたことしかできない、観察できないということが起こり得る。ある化学メーカーで、一通りの作業を教え、「よく観察して。異常があれば連絡するように」と言い残して任せると、異常を眺めたまま何もせず、危険なことに。

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「なんで眼の前で異常が起きてるのに知らせないんだ！」と叱責したら、「何が異常なのかわからない。見てろと言われたから見てました」という回答。どんなのが異常か教えられてないからわからない、という。教えられていないことは気づかない、というのでは、観察にならない。

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ある老練の技術者は、若手を指導する際、なるべく教えず、危険がない限り失敗を経験させるという。失敗は体験してみないとわからない。しかし、ベテランになったとしても、未経験の失敗というものがある。全ての失敗を経験することは不可能。当然、教えることも不可能。そこで、若手をどう指導するか。

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機械を目の前にして、若手に「これ、どう思う？」と問いを投げかける。若手は何かあるのに違いないと思うが、何が何だかわからない。ベテランはそれでも安易には教えない。「五感を使って、何がどうなってるか、想像してみなさい」と言って、しばらく様子を見る。若手はやむなく、五感で感じ取る。

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それでも、若手は皆目見当がつかない。ベテランはそれでも、安易に答えにはいかない。異常がない部分を指さして「ここはどうなってる？」若手はここが異常のありかか、と思い、五感で感じ取ったことを口にして伝える。ベテランはウンウンとうなづき、「だとしたら？」と問いを発する。若手は。

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「異常では、ない・・・と思います」と恐る恐る。ベテランはそう、と、どっちともつかない返事をして、「次のここは？」と新たに問いかける。こうして、ありとあらゆる部分、部品について、五感を使って味わわせる。叩いたり、耳をすましたり、角度を変えて見たり。

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そろそろか、という時点で、異常なところを指し示す。示されたところは異常とは限らないことに気づいた若手は、慎重に観察する。しかし五感を使ってしゃぶり尽くすように感じ取ることに慣れてきているので、あれこれ口にする。するとベテランは、「そう、それ。よく気づいたな。それが異常のサイン」。