狩猟採集社会で発達した逆支配（リバース＝ドミナンス）

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逆支配（リバース=ドミナンス）という、自然界においてヒトだけに生じた特異な進化のポイントは5つあった。 ・心の発見 ・意図の共有 ・投擲武器の使用 ・規範意識の形成 ・ゴシップ（噂話） pic.twitter.com/DGdJqVVmOf

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これらの要素が揃っていなかった───前適応として進化していなかった───他の動物の群れ社会では、人類社会の特徴的な構造である “逆支配” は起こらなかった。

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しかし、われわれ人類はそれを進化的に可能にした動物だ。これは進化史において非常に大きなターニングポイントだった。

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弱い者たちが、強い個体の振る舞いを "逆支配" するという進化。このことの決定的な重要性にピンときていない人はかなり多いかと思う。

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逆支配（reverse-dominance）構造とはようするに、「オレは強者だ！」と叫ぶよりも、「わたしは弱者だ！」と叫ぶほうがサピエンスの進化的適応環境（=部族社会）では「強かった」ということだ pic.twitter.com/z1LLqRVLoZ

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これは進化人類学の最大の発見のひとつだ。良くも悪くも、人間の本質とは『私は被害者である』というところからマウントポジションをとるところにある。これこそがホミニン、そしてサピエンスという種の特徴だ。 pic.twitter.com/ZIlBTkyEeb

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損害を受けた者、傷つけられた被害者たちが「訴え」を叫べば、人類は一致団結して“横暴な悪者”を倒そうとするように進化している。twitter.com/selfcomestomin…

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“ 人はものごとに対して道徳的な見方をしようとすると、自ずと被害者の視点をとって、加害者はみなサディストやサイコパスなのだと決めてかかる。”（スティーブン=ピンカー）

2019-12-03 01:30:10

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NHK取材班は『ヒューマン』特集において、狩猟採集民が実行する『逆支配（リバース=ドミナンス）』行動研究の世界第一人者であるクリス=ボームに直接話を聞いている。；

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“ なぜ民族や文化の違いにかかわらず、罰を科そうとするのか。どうして人類に普遍的な習慣である必要があるのか。────それを探るべく、私たちは狩猟採集民の制裁行動に詳しい人類学者、南カリフォルニア大学のクリストファー=ボーム博士に話を聞くことにした。” pic.twitter.com/jLud4xwz2a

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“ 博士は、世界各地で狩猟採集民のフィールドワークするかたわら、チンパンジーなど類人猿の行動も調べ、人間の集団行動の歴史、特にモラルの進化について考察をつづけてきた。現在はジェーン=グドール霊長類研究センターの所長という肩書きも持っている。”

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“ 博士は、これまで50以上の狩猟採集民や遊牧民の集団を対象に、どのような行動が制裁の対象になるかを調査してきた。そこにはある傾向が見られるという。” pic.twitter.com/BS4N2cZCe2

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“ まず、そのひとつめだ。「もっとも広く行きわたっていたのは、人を怯えさせた者に対する制裁です。単なる喧嘩で相手を傷つけたりしても、集団のメンバーはさほど怒りません。しかし喧嘩好きで、常に威圧的な態度をとる人間が誰かを傷つけたら、それは制裁の対象になる可能性が大きいです」。” pic.twitter.com/c77EPXmNeU

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“ 次は、狩猟採集の生活で、重要度の高い食料に関するケースだ。「狩猟採集民は捕った獲物や食料を公平に分配します。しかし、肉を分け合ったあと、それを盗もうとしたり、誰かを脅してそれを奪ったりする者は必ず制裁の対象になります。」”

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“「ずば抜けて狩りがうまく、獲物を捕るのに欠かせない存在であっても、ずるをすれば許されません。もし獲物を仕留めたあと、藪に隠しておいて、後で密かに食べるような行為が見つかったら、間違いなく厳しい制裁を受けます」”

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“博士は…実例も紹介してくれた…コンゴ民主共和国に暮らすムブティの人々の話だ。「ムブティの人々は伝統的に網を使った狩猟をおこなってきました。男たちが非常に長いネットをもち、半円形に並びます。そこに女や子どもが動物を追い込むのです。男たちの間隔は離れていて、互いの姿は見えません」” pic.twitter.com/f4b0nc4dtT

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“「あるとき、1人の男がほかの者よりも前に出ました。自分だけ動物を多く仕留めようとしたのです。しかし、彼の行動は偶然に見られていました。キャンプに戻ると、仲間の1人が『この男はずるをしたので動物以下だ』と言いました。」”

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“「小さな子どもですら、彼が以前座っていたところには座らせようとせず、『動物は土の上に座る。ほかの者の食べ物を盗むのは動物だけだ』と非難しました。」”

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“「彼は恥をかき、自分を弁護しましたが、仲間たちは『お前がそんなに偉大で、私たちよりも優れていると思うなら、家族を連れて自分の集団をつくったらどうか』と言いました。」”

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“「彼は追放を怖がりました。隣の集団から何マイルも離れている森に追放されれば死んでしまうからです。彼は改心し、その後集団のために大きく貢献する人間になりました」”

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“ 私たち人類は、ずっと集団で協力することで生き伸びてきた。その基本にあるのは平等という考え方だ。現在の狩猟採集民を見ても、リーダー的な人物は存在するが、彼がほかの仲間より多くの肉を貰ったり、特別に優遇されたりすることはないという。” pic.twitter.com/l1UnpuOCoQ

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“ そして、この平等を壊す行為を忌み嫌い、それに対して罰を科す。それが、仲間への処罰が世界共通のルールになっている理由なのだ。”

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“… モラルや恥の意識は、盗みや狩りをサボタージュして分け前だけもらうといったフリーライダー的な行動を抑止したであろう。しかし、力ずくで物を横取りしたり、集団を牛耳ったりする者が現れることもあったはずだ。” pic.twitter.com/zuuT6sS0MV

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“ そうなれば、獲物は群れを支配するオスを中心に分配され、分かち合いのシステムは崩壊する。それを防いだのが「飛び道具」だったとボーム博士はいう。” pic.twitter.com/9nft74E9lu

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“「カの強い、ならず者に制裁を加えようとしても、接近戦では、いくら制裁する側の人数が多くても反撃を受けるリスクがあります。しかし飛び道具なら、ならず者を集団で取り囲み、安全に威嚇したり、場合によっては処罰したりすることができるのです」” pic.twitter.com/6hFWyzBIAw

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“ ボーム博士の研究で、制裁を受けるケースで特に多いのは、人を怯えさせる行為だったのを覚えているだろうか。狩猟採集民の社会では、飛び道具の力で平等に分かち合うシステムが担保されているのだ。”