完成度の高いAIが生成した画像が広く知られた既存画像とよく似ている場合、既存の著作権者から著作権侵害などのクレームがくる可能性がない訳ではありません

著作権法第三十条の四のニは解析のための複製等は許諾不要という内容だったとしても、出力されたなにかしらが既存の著作権を侵害しないというわけではない……というお話。
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KJ_OKMR @OKMRKJ

奥邨説です・・・ディスクレーマー

2022-08-30 15:35:35
KJ_OKMR @OKMRKJ

Professor of Law (Intellectual Property Law & In-House Legal Practice), Keio Univ. Law School, Japan:アイコンは、著作権法学会のシンポジウム「メタバースにおける著作権」の司会として、HMDを装着して登壇したところ。

digital-law.info

KJ_OKMR @OKMRKJ

完成度の高い画像生成AIが次々登場して話題になってるので、老婆心的なことをつぶやくと・・・ 生成した画像が、広く知られた既存画像とよく似ている場合、既存画像の著作権者から、複製権侵害などのクレームがくる可能性がない訳ではありません。

2022-08-25 01:42:17
KJ_OKMR @OKMRKJ

現時点ではまだ色々分からないことが多い(裁判例はありませんし、学説上も様々です)ので、最終的に侵害になるかどうかはそれこそ分からないので、クレームが来る可能性を指摘するに留めています。ただ、クレームが来ただけでも、普通は、色々と大変ではないかと思います・・・

2022-08-25 01:42:18
KJ_OKMR @OKMRKJ

例えば、アニメやSFの特定のキャラクターの絵柄を目標に、色々試行錯誤を重ねて、結果似た画像を生成してネットで公開したりするのは、クレームを受ける余地がある行為の1つになり得るという点は、注意喚起できるかなと思っています。

2022-08-25 01:42:18
KJ_OKMR @OKMRKJ

なお、以上は、画像生成AIで作成した画像が著作物と認められるかどうか、またその著作権を画像生成者が享受できるかどうかという問題とは関係なく生じます。

2022-08-25 01:42:18
KJ_OKMR @OKMRKJ

著作権法の大原則である、アイデア表現二分論(表現は保護されてもアイデアは保護されない) 画風・作風はアイデアに当たると理解されてきた。 一方で、表現の本質的特徴は、なお表現であって、保護される。 連続的に繋がっている両者の境界はどこかという難問が可視化された。

2022-08-30 11:07:53
KJ_OKMR @OKMRKJ

他人の著作物に類似する作品になぜ著作権が及ぶのかについては、少し説明が必要だと思ってる。 著作権法の条文には(自身が著作権を有する著作物と)類似するものに著作権が及ぶとは書いていない。「著作者はその著作物を○○する権利を専有する」であって、権利が及ぶのは自己の著作物のみ。

2022-08-31 10:33:28
KJ_OKMR @OKMRKJ

この点商標法が、類似商標の使用等が権利侵害になると明文で規定しているのとは異なる。 ただし、商標法でもみなし侵害にすぎない。みなし侵害とは、本来は、権利が及ばない範囲の行為であるが、特に侵害とするというものであるので、商標権でも、類似商標の使用等には本来は権利が及ばないのである。

2022-08-31 10:33:29
KJ_OKMR @OKMRKJ

特許権の均等はどうか。特許権が及ぶ範囲は特許発明の技術的範囲と考えられているところ、ボールスプライン最判は、前記範囲は、特許発明の技術的範囲に均等なものにまで拡大されると説くのではなくて、クレーム記載の「構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する」とするにすぎない。

2022-08-31 10:33:29
KJ_OKMR @OKMRKJ

よって、均等が認められても、なお特許権が及ぶ範囲は特許発明の技術的範囲に限られ、それが拡大されるわけではない。

2022-08-31 10:33:30
KJ_OKMR @OKMRKJ

そもそも著作権は相対的独占権なのであるから、権利が及ぶのは自身の著作物に限られるのであり、条文はその点を正確に記載している。 つまり、自身の著作物を無断で使っている者に、使用を止めろとか、損害賠償をしろとか、請求できるに過ぎない。

2022-08-31 10:33:30
KJ_OKMR @OKMRKJ

では、類似する作品に著作権が及ばないのかというとそうではない。 しかし、それは、ストレートに類似しているからなのではなくて、類似しているのが権利者の著作物を利用した結果だからなのである。 逆に言うと、権利者の著作物を利用していないが類似する場合(=独自創作)には著作権は及ばない。

2022-08-31 10:33:30
KJ_OKMR @OKMRKJ

翻案作品も、全く同じであって、権利者の著作物(の表現上の本質的特徴)を利用しているので、著作権が及ぶのである。

2022-08-31 10:33:31
KJ_OKMR @OKMRKJ

なお、当然ではあるが、表現上の本質的特徴は、文字通り「表現上」の特徴なのであるから、アイデア・表現二分論で言えば、表現に分類されるものである。 twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-31 10:38:20
KJ_OKMR @OKMRKJ

もっとも多くの訴訟(の主張立証)においては、わざわざ、原告作品を利用しているから被告作品は類似しているなどとする必要はないと思うが、AIによるコンテンツ生成のような場面では、そもそも著作権が及ぶのはどこまでか、なぜ類似するものに著作権が及ぶ(場合がある)のかを改めて考える必要がある twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-31 10:44:39
KJ_OKMR @OKMRKJ

結局、著作権侵害の要件として、依拠性と類似性が求められるのは、被告が原告の作品を利用したかどうかが分かりづらいからなのであって、それが別の形で証明できる場合、依拠性も類似性も議論する必要はない。 例えば、コピー機での無断コピーが証明できるなら、依拠性も類似性も論じるまでもない。

2022-08-31 11:08:27
KJ_OKMR @OKMRKJ

同様に、原告が市販しているCDを被告が無断で有料レンタルしている場合、そのことが証明できれば、それで貸与権侵害は成立する。 依拠性とか類似性とかが出てくる余地はない。なぜなら、原告の著作物が利用されていることが証明されているからである。

2022-08-31 11:08:27
KJ_OKMR @OKMRKJ

法律というのは厄介で、日本語で記されていても、意味内容を知るには、法的解釈を必要とする。 解釈には、その立法経緯や立法趣旨、法律・規定の意味内容に関する学説、実際に適用した裁判例などを総合して検討する必要がある。 法律用語という別言語で記述されてるぐらいの慎重さで臨むのが安全かな。

2022-08-30 11:43:12
KJ_OKMR @OKMRKJ

なので、弁護士とか裁判官とか法学研究者とかの法解釈の専門家が存在する。 喩えるなら、法律用語を日本語に翻訳してくれる通訳や翻訳家。 最近は自動翻訳サービスが普及したが、あれは単なる言語変換。 翻訳は、作品や作者に関する全体的な理解と外国の社会や時代に関する理解がないとできない。 twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-30 12:25:02
KJ_OKMR @OKMRKJ

ということで、専門家出ない人は、まずは、いきなり「原文」に当たるのではなくて「翻訳家」による「翻訳」に当たるのが良いと思います。 もちろん「翻訳家」によって、様々な「翻訳」があり得ますから、比較検討して、その上で自分の意見をまとめるのが良さそうに思います・・・私からは以上です。 twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-30 12:33:40
KJ_OKMR @OKMRKJ

著作権法の権利制限規定には「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない」とのただし書きが散見されるが、注目すべきは、利益を「不当に」害すると言う部分。 権利を制限する以上、利益が一定程度害されるのは織り込み済み。「不当」に至ってようやくただし書きの問題となる。

2022-08-30 15:29:10
KJ_OKMR @OKMRKJ

権利制限によって害される「利益」は著作権法上の保護に値するものであることが求められると解される。 著作権法上保護されない利益が害されても、それを理由に著作権の制限を止める理由にはならない(その場合不当とも言えないだろう)。 例えば、アイデアの無断利用禁止は著作権法上保護されない利益 twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-30 15:34:16
KJ_OKMR @OKMRKJ

権利制限規定については、例えば元々の権利が100だとして、それを90に「制限」する規定と捉えるのが一般的かもだけど、本当にそう? 元々100しかない権利が110にならないように「制限」していると捉えられるのでは、とも考えてる。 なので、権利制限規定は常に謙抑的に解釈すべし、には疑問を感じる

2022-08-30 16:40:41
KJ_OKMR @OKMRKJ

前者は「部分月食アプローチ」(本来、今日の月は満月のはずなのに一部が欠けて見えている状態) 後者は「三日月アプローチ」(そもそも今日の月は、欠けた状態) あくまでも、たとえばなしです twitter.com/OKMRKJ/status/…

2022-08-30 16:44:43