ネットテキストとSF翻訳者とのかなづかい比較

出典は『新版・華氏451度』(伊藤典夫・訳、早川文庫SF、2021年6月、15刷)。 どのくらいひらがなにしてもいいのかの、ひとつの基準として。
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砂手紙 @sandletter1

1・昔の翻訳小説(早川書房系)がどれだけ漢字を使っていなかったか、について調べるには、1960~70年代の雑誌・書籍を調べるのがいちばんいいんだけど、そういうのはすこし手順・手間がかかるので、手元の本で検証してみます。

2022-09-06 03:15:03
砂手紙 @sandletter1

2・はじめに「どうしてそんなにひらがなを使うようになったのか」に関して推論を語ります(忙しいひとは冒頭部分だけ読めばいい)。1・翻訳の師匠筋(都筑道夫・福島正実・柴野拓美・矢野徹など)は、漢字の使用制限のある子ども向きの本の翻訳(ダイジェスト版)・創作もやっていたこと、

2022-09-06 03:15:36
砂手紙 @sandletter1

3・2・翻訳は師弟関係がほかの創作物と比べて明確であること(師匠のとおりに弟子も訳す)、3・手書きの時代には「漢字」よりも「ひらがな」のほうが楽だったこと(「きれい」と書くほうが「綺麗」よりも楽)などが考えられます。

2022-09-06 03:15:58
砂手紙 @sandletter1

4・それにたいしてネットテキストの場合は、1・漢字の使用制限より、Twitterその他の字数制限のほうがきついこと、2・原則的に創作における師弟関係は存在しないこと(模倣による仮想師匠みたいなのはいる)、3・なんでもかんでも漢字にするのが、手書き時代より楽なこと、などが考えられます。

2022-09-06 03:16:27
砂手紙 @sandletter1

5・ということで、以下比較。「通常ネットテキストでみかけるかなづかい」→「伊藤典夫の翻訳の場合」。翻訳の出典は『新版・華氏451度』(伊藤典夫・訳、早川文庫SF、2021年6月、15刷)です。 「別の何かに」→「別のなにかに」 「変わって行く」→「変わってゆく」 「筒先」→「筒さき」

2022-09-06 03:17:29
砂手紙 @sandletter1

6・「拳に握り締め」→「こぶしににぎりしめ」 「眺めていると」→「ながめていると」 「鳴り渡り」→「鳴りわたり」 「類稀な」→「たぐいまれな」 「歌いあげ」→「うたいあげ」 「燃え滓」→「燃えかす」 「被り」→「かぶり」 「輝かせながら」→「かがやかせながら」 「触れる」→「ふれる」

2022-09-06 03:18:00
砂手紙 @sandletter1

7・「包まれ」→「つつまれ」 「染め上げて行く」→「染めあげてゆく」 「火に翳して」→「火にかざして」 「羽ばたきながら」→「はばたきながら」 「煌めく」→「きらめく」 「煽られ」→「あおられ」 「戻れば」→「もどれば」 「落ちる時も」→「落ちるときも」 「固めている」→「かためている」

2022-09-06 03:19:04
砂手紙 @sandletter1

8・「闇の中で」→「闇のなかで」 「踵が」→「かかとが」 「後に」→「あとに」 「止まらせる」→「とまらせる」 「塊」→「かたまり」 「滑るまま」→「すべるまま」 「足取りを緩めた」→「足取りをゆるめた」 「星影の下」→「星かげの下」 「雲を掴む」→「雲をつかむ」

2022-09-06 03:19:30
砂手紙 @sandletter1

9・「襲われていた」→「おそわれていた」 「佇む」→「たたずむ」 「香水の匂い」→「香水のにおい」 「嗅ぎ分けた」→「かぎわけた」 「分からない」→「わからない」 「曲がる度に」→「曲がるたびに」

2022-09-06 03:20:01
砂手紙 @sandletter1

10・とりあえずはじめの3ページ。個人的には、ひらがなのほうが読みやすいプロっぽいものが多い気がする、と思うんだけど、感想的には「老害」ってことになっちゃうんでしょうかねえ。引き続き、柴田錬三郎(眠狂四郎)・野坂昭如(火垂るの墓)も検証してみたいと思います。

2022-09-06 03:20:26