四の舟×おろし丸によるスケッチブックリレー小説 ねぎくが~クリスマス編~

スケッチブックの知識必須。加えて、カップリング妄想好きな人向け。二か月前ですが、根岸君と空閑さんのクリスマスエピソード。
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焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 福岡では、雪が降っていた。だがその雪をものともしないように人は歩き行き交う。その人混みの中を歩く、少し小さな影があった。「……ああ、あったあった、ここだ。」彼女が目指していたその場所は、カラフルに彩られた、綺麗な菓子屋だった。

2011-09-30 23:53:29
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 福岡の雑多な街並みの中で、その菓子屋の建物は、まるで『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の家のような雰囲気を醸し出している。煙突からは煙ももくもくと出ている。本当にここが博多の街なのか疑ってしまいそうな、素敵な菓子屋だ。

2011-09-30 23:58:47
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE ドアも自動ドアではなく、手開きのドアだ。ぎい、とその扉を開けると、中もまるで絵本の風景をそのまま描いたかのような光景だ。「いらっしゃいませ。」サンタの帽子をかぶった店員がにこやかに声をかけ、空閑はそっと会釈を返した。

2011-10-01 00:01:46
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「あの、予約していた・・・」 「空閑さんですね。もう、今日予約されていた方々はすべて受け取りに来ましたので」 「ありがとうございます。それで・・・どうでしょうか?」 「はい。できてますよ。少しお待ちください」 店員がいそいそと店の奥へと歩いて行った。

2011-10-01 00:04:51
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…根岸ちゃん、喜んでくれるかしら」にこやかに笑うサンタの人形を見ながら、空閑はぽつりとつぶやいた。        

2011-10-01 00:06:56
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 小躍りしたくなる気持ちを抑え、宝箱を持つように丁寧に箱を受け取った。扉を開けて店を出ると、冷たい風が吹き思わず身を震わせた。「…いそがなくちゃ。根岸ちゃん、待ってるものね」 空閑はほうっと息を一つ吐くと、いつもより恋人同士の多い町を歩きだした。

2011-10-01 00:10:40
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…っくし、冷えるな……」コートの襟を立て直し、待ち人でにぎわう駅前で根岸大地は人を待っていた。右を向いても左を向いても、幸せそうな男女で溢れかえる福岡駅前は、天気予報で言った気温よりも若干高めの温度なような気がした。

2011-10-01 00:13:51
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 例年、聖夜に予定がないのが常だった根岸にとって、今年の聖夜は記念すべきものだった。今夜は一日、空閑と過ごす約束をしているのだ。空閑に告白をして、はや三ヶ月。気がつけば雪舞い寒さ漂うクリスマスの時期になっていた。

2011-10-01 00:16:57
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE とはいえ、皆考えることは同じなのだろうか。よくもまあこんなに集まったものだと愚痴りたくなるほどに人であふれかえっている。先程はよく見なれた長身の細めの男性と外国人のカップルを見かけたような気がしたが、特に気には止めなかった。

2011-10-01 00:18:56
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko クリスマスは予定があるとみなもに話したことを考えた。あまりいい顔はしなかったが、出かける前にクリスマスプレゼントをあいつの部屋に置いておいたから、文句を言われることはないだろう。いまは、空閑が来るのを待つばかりだ。しばらく待っていると―きた、空閑だ。

2011-10-01 00:23:09
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「おう、待ってたぞ空閑」「…おまたせ、根岸ちゃん。」空閑の口から溢れだす白い吐息は、普段よりやや大きく感じられた。大事そうに抱えている紙袋はプレゼントだろうか。人混みから離れる為に、二人は駅構内に入って行った。

2011-10-01 00:25:37
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko クリスマス会をやるのは空閑の自宅だ。家族は懸賞で当たった温泉旅行へ行っているそうだが、空閑の分のチケットが無かったため、今年、空閑は一人で聖夜を過ごすことになっていたらしい。オレと空閑としては、まさに好都合だった。

2011-10-01 00:29:01
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…雪、降るかしら。」「…さあな」雪こそ降っていないものの、いつ降ってもおかしくない空を見上げながら、空閑の家まで歩く。見なれた街の風景もどこか違うように感じられてしまう。

2011-10-01 00:32:48
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko さくっ さくっ さくっ  しんしんと降る雪の中を、根岸と空閑は歩いていく。二人が足跡を刻むたびに、雪が靴の形にへこむ。お互い話すことはなく、ただ靴が雪を踏む心地よい音を聴きながら、ゆったりとした気分でいた。そして、気がつけば空閑の自宅にたどり着いた。

2011-10-01 00:36:47
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「……ちょっと冷えてるかもだけど」電気をつけると、そこにはクリスマスらしい装飾が施されていた。「…これ、一人でやったのか?」「そうよ」「凄いな……」

2011-10-01 00:39:41
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 星形に切られた折り紙がいくつも壁に貼られ、クリスマスツリーの足下にはプレゼントがいくつも置いてある。 「お前、いつでも飾り付けのバイトができるな。これなら」 根岸がそういうと、空閑がふるふると首を横に振る。 「根岸ちゃんのために、飾ったのよ?」

2011-10-01 00:43:24
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「空閑…?」「……ごはんの準備、しないとね」そう言いながらそそくさと、空閑はキッチンの方に向かって行った。「…俺は何したらいい?」「…今は何も」

2011-10-01 00:44:59
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko そう空閑に言われて、根岸の錆びついていたいたずら心が動き出した。静かに空閑の後ろに回り込んで、優しく抱きしめたのである。空閑は驚いて作業の手を止める。「……根岸ちゃん?」 「気にするな、一つ目のクリスマスプレゼントだ」「………バカ」

2011-10-01 00:49:08
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…バカとはなんだよ。」「……そのプレゼントは、私がしたかったのに」「え」サンタの服のように、顔面を真っ赤に染めている空閑は、手にしたおたまをどうすることもなく、ただ動けないでいた。

2011-10-01 00:51:19
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「………悪ぃ」 「いいのよ。さっさと、ごはんあっためちゃうから」 「もう、作ってあるのか…」 「ええ。だから、根岸ちゃん、ほんの少しだけ待ってて……」 「……わかった」

2011-10-01 00:53:21
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE ぎこちない動きで、椅子に座る。こじゃれた食器と装飾品が、妙に落ち着かせない。さっき抱きしめた空閑のぬくもりは、まだ腕に、胸に残っていた。

2011-10-01 00:55:00
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko そこで、俺は気がついた。そうだ。今夜は空閑と二人で過ごせる― いつもは限られた時間の中でしか会えない俺と空閑が、ゆっくりと過ごせる・・・。こんな幸せなことがあるだろうか。そう思うと、料理を待つ間、俺はカバンに入っている空閑へ渡すプレゼントを眺めていた。

2011-10-01 00:58:41
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 人によっては、大したものじゃないと思うかもしれないし、それを空閑が欲しがるかなんてのはさっぱり分からない代物だ。だが今の俺には、それが一番のプレゼントだと、そう思っていた。問題はそれを、いつ渡すか、どのように渡すかだ。

2011-10-01 01:00:41
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「お待たせ」すぐに空閑は料理を運んできてくれた。もちろん、一流ホテルで出るような豪華絢爛な料理が運ばれてきたわけではない。それでも、どれもみなおいしそうな料理ばかりだ。空閑がどんな気持ちでこの料理を作ったのか考えると、感謝の気持ちでいっぱいになった。

2011-10-01 01:04:32
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「空閑、これみんなお前が作ったのか?」「ええ……初めて作る料理もあったから、不安だったんだけど…」はにかみながらそう言う空閑は、何よりも可愛く見えた。「それじゃ、食べようぜ空閑。」「あ、ちょっと待って。」そう言うと、空閑は電気のひもを引っ張った。

2011-10-01 01:08:57