- rouillewrite
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誰が発しただろうか、その声に目の前のカラスがピクリと反応したように見えた。 体育館の中に窓はあるが、夜なら施錠してあるはずだ。昼間のうちに、どこかから迷い込んだものをそのまま見逃していたのか。
2022-09-25 21:07:21漆黒を纏ったその鳥は、その色とは反する赤色のスカーフを身につけていた。頭のてっぺんの毛が少し逆だっているように見えるが、それ以外はなんの特徴もない普通のカラスだ。 彼らもよく見た事があるだろう。
2022-09-25 21:07:56なんでこんなところに、と彩透が口にする前に───カラスがバサッと羽を広げる。 威嚇でもする気だろうか、と誰もが身構えた時、カラスは驚くべき行動に出た。
2022-09-25 21:09:10「やぁやぁ! 集まってくれてありがとう〜!!」 pic.twitter.com/EvtjKTKEg3
2022-09-25 21:09:52シン……と体育館の中が静まり返る。 ここにいる誰の声でもないそれに驚いて、どこから響いているのかと全員で当たりを見回した。 中には幻聴では?と首を傾げる者もいる。
2022-09-25 21:11:05しかし、それが幻聴でも他の人間の声でもないことを、目の前のカラスが羽をバサバサと忙しなく動かして証明してくれた。
2022-09-25 21:11:55わーっと大きな声で大袈裟なほどのリアクションを取りつつ、舞台の上の鳥を指差す太陽。ザワザワと同時にどよめきが走る。
2022-09-25 21:13:32目の前にいるその「喋るカラス」は、動揺を隠せない彼らの様子を意にも介さない様子で、羽を腕のように動かし腰?にそれを当てた。 カラスの表情など普通は読み取れないが、何故かそれは明らかに“得意げ”に見える。
2022-09-25 21:14:26「ふふん、今どきのカラスは喋るんだよ」 「喋らないよ」 「そこ!そこのサイオンジ キヨハルうるさい!」
2022-09-25 21:15:20冷静にツッコミを入れられて癪に障ったのか、再び羽を動かして指差しのように聖遥にその先を向ける。 「もう、話が進まないじゃないか」と小さくぶつぶつと独り言を呟くそのカラスに、空彦が一歩前へ出て質問した。
2022-09-25 21:16:28「集まってくれて、と言うと、もしかしてここに我々を呼んだのは君なのですか?」 「そうだよ!タテマキ ソラヒコ! そうだ、まずは自己紹介をしなきゃね。 僕の名前は【むび助】! 見ての通りとぉ〜〜〜ってもシュートなブラックバードさ」
2022-09-25 21:17:32「君たちのことはよーく知ってるよ。 本名も、経歴も、思い出も、大切なものも、 ────君たち全員が、大切な人を失くしているってことも」
2022-09-25 21:19:06驚いて目を見開き、目の前の黒い鳥を見つめる。 先程までの陽気な声とは一変して、なにやら冷たい雰囲気を感じ取れる声音。 少し肩をふるわせ、たじろぐ凪の後ろに渚が移動する。それを合図にしたかのように、徐々にお互いの顔を見合せて数十秒。
2022-09-25 21:21:11「他ぁ?」 不機嫌そうな識圜の声。 それに小さく「ヒェッ」と悲鳴をあげつつも、咳払いをしながらむび助は答える。
2022-09-25 21:23:16「───ズバリ!! 君たちにはこの夜の学校で、お化け退治をしてもらいます!」 「………はぁ?」
2022-09-25 21:24:12