- rouillewrite
- 1764
- 1
- 0
- 0
黒い羽根は彼らの手元に来る直前に、大きな音を立てて落ちた“なにか”によって引き裂かれる。 突然鳴った大きな音に、市夏が驚いて形を変えたそれを落とすと、トサッと軽く布が擦れたような音がした。
2022-09-25 22:08:55「これ傘だよね……?戦えるの……?」 「だいじょ〜ぶ!!それ中に剣が入ってるんだよねぇ。仕込み刀?ってやつ?開いて雷をどうこう……みたいな使い方もできるから、色々試してみてね」 「…………」
2022-09-25 22:11:08しばらく傘を見て神妙な面持ちのまま固まってしまった市夏。 そんな彼を少し離れたところで見つつ、累も自分の手元に宿ったそれを見た。彼の武器は“槍”である。
2022-09-25 22:11:53自分より少し大きいくらいだろうか。薄い藍色の柄の先についた赤い雲のようなものが、刃との境界となってふわふわと存在していた。 現実ではほぼありえない物体であろう。
2022-09-25 22:12:54「そうそう!多分そういう戦い方になると思うよ!まぁ〜…君脳筋だからそれ要らないかもしれないけど…」 「いるいる、めちゃくちゃいるって。よし、それじゃあ命名しよう、お前は雷神丸だ!よろしくな!」
2022-09-25 22:14:09羽根は下からの衝撃で、さらに宙を舞う。 地響きのような感覚が一瞬したかと思えば、彼ら2人の手元には既に“武器”があった。
2022-09-25 22:16:18「アスタ シオン、ヒトトセ ニウ。 君たちの色は“土”だね!誰かを護る力を、君たちはどう扱……」 「ちょっとぉ」
2022-09-25 22:17:01得意げに話していたむび助の言葉を、呆れたような識圜の声が遮った。 彼が手にしている盾は、身長の3分の2ほどと大きく、実に彼らしいものである。
2022-09-25 22:18:03「これ、演劇部の小道具部屋にあったやつじゃん」 「そうだよ〜!君にピッタリかと思って!」 「壊れたらど〜すんのさぁ」
2022-09-25 22:18:56むび助の言葉になおも突っかかる識圜を無視して、彼は仁宇を見つめた。 彼には似合わない大きな柄の長い斧には、真ん中に黄色の模様がついており尖った先端には青い飾りがつけられている。 随分と重そうなそれを、彼は柄を下に持ち上げてニコニコしていた。存外しっくり来たらしい。
2022-09-25 22:21:03「順応するの早すぎない!?」 「そう?これくらい大きい方が扱いやすいわよ」 「君ホントわかんな〜い! もっと驚いてよ〜!!」
2022-09-25 22:22:01むび助はワーッと喚くが、仁宇がそれものらりくらりと避けてみせるのでしばらくすると静かになった。 「もういいや……」と独り言のように呟いた諦めの声を最後に、彼は羽を振るう。 今度は、焔楽と渚に向かってだ。
2022-09-25 22:23:15宙を舞った羽根は、彼らの元にたどり着いた頃には白色に変わっていた。 手のひらに触れた瞬間、それは白い光の柱に包まれて消えてなくなる。 眩しくて閉じていた目をそっと開けた時には、既にそこに“それ”はあった。
2022-09-25 22:24:34「君たちの色は“光”だね!カナギ ホムラは神楽鈴、ツユリ ナギサは鏡かな?君たちも少しだけど、仲間の回復に貢献出来る力を持ってるよ。あとは敵の妨害したりとかかなぁ。 だから、あんまり攻撃向きじゃないかも」 「ふ〜ん……」
2022-09-25 22:25:32持ち武器を幼なじみや親友に自慢しに行ってしまった太陽から少し離れて、自分に与えられた武器を焔楽はじっくり眺めた。
2022-09-25 22:27:01まず目に入ったのは鬼灯の形をした鈴。四段構造になっているそれは上から順番に数が増えており、どれも精巧な作りをしているようだ。 四段目に至っては鈴はついていないが、なにやら美しい模様が彫られている。柄の後ろには長い帯がつけられていて、シャン、と鳴らしてみれば静かに揺れる。
2022-09-25 22:27:32「……もしかしなくても、雰囲気で選んだ?着物着てるからとかそういう」 「えへへへ!バレた?」 「えぇ〜……単純すぎなーい?」
2022-09-25 22:28:42呆れたようにそう笑う焔楽に「いいじゃ〜ん君っぽくて〜」と軽く返し、むび助は渚の方を見た。どうやら彼は、手鏡サイズのそれをどう扱えばいいのか迷っているようだ。
2022-09-25 22:29:43「それは回復したい対象を鏡に写すか、反射させると使える特殊な鏡だね。気に入らない?」 「いんや、どこで殴ればいいのかなぁ…と思ってさ」 「角とか?……〜〜っじゃなくて!!君たちは補助属性なの!殴りに行かない!いや殴ってもいいけど!」
2022-09-25 22:30:37光の色をしている、と言われた2人は属性に反して何かと手が出るのが早い。 大丈夫かなぁ……と小さく零したが、各々武器を眺め始めてしまったので、むび助は最後に一振、羽根を落とした。
2022-09-25 22:32:22