国産戦闘機開発の夢は幻想であることについて
ロンドン支局長・木村正人 日米同盟もちろん大切だが(http://t.co/NKAvDs5r)…左派の危うさは言うまでもないことだが、右派にも危うさがあることを改めて認識させられる記事。それほど踏み込んでいないが、やはり「国産戦闘機の夢」などという言葉が踊るところが問題だ。
2011-10-02 12:54:45F-Xについては現実的にはF/A-18E/Fが有力視されていると思うが、それとインドの中型多目的戦闘機(MMRCA)選定計画を比較対象とするのはやや問題がある。そもインドは非同盟国家であって、昔はロシアとの関係が深かったが、最近は多方面からの兵器調達に尽力している。
2011-10-02 12:57:41その背景として、多方面からの技術供与で兵器の国内生産基盤を強化したいとの思惑があるのは一目瞭然だ。そしてこのような強気の政策を支えているのがインドの長期的な経済発展である事を忘れてはならない。つまりこれは斜陽の国家には到底まねできない、上り調子一辺倒の国家の戦略であるという事だ。
2011-10-02 13:00:25日本はこれから景気動向でも人口動態の面でも斜陽の国家。既に老齢に入り、過去を懐かしむ時代に入っている。そんな国家がインドのような国家の戦略を真似できるはずがない。これは軍事のみならずあらゆる問題においてそうだと思うが、この所与の前提を忘れると「国産戦闘機」のような暴論が出てくる。
2011-10-02 13:02:36国際関係の基本的な捉え方に関わる事だが、グローバル化の進んだ現代においては如何に「主権国家」と言えども自国で全ての事を賄えるという国家は基本的に存在しない。米国ですら不可能だ。「大体の点において」全ての事を賄える(潜在力を持つ)という国家も米中を除けばインドくらいなものだろう。
2011-10-02 13:05:19日本が彼らと同列に物事を論じたり考えたりするのはおこがましい。身の程を知れ、と常々叱責したい気分でいる。戦闘機に話を戻せば、日本ではF-2に結実した80年代末の次期支援戦闘機(FSX)開発過程で国産開発できなかったのが余程悔しかったのだろう。未だにその未練が残っていると感じる。
2011-10-02 13:07:24確かに当時は日本の好景気が世界的に注目されていずれは軍事的にも大国になると見なされていたから、当時としては国産戦闘機の開発も決して夢ではなかったのだろう。しかし時代はもう完全に変わっている。日本は既に世界で一流の国家ではない。こういう過去の幻想にいつまでもしがみ付くべきではない。
2011-10-02 13:09:55ところが日本ではまだそういう認識が残り続けているのが現実だ。日米関係について造詣の深い春原剛氏の本でも『甦る零戦 国産戦闘機vs.F22の攻防』と、そういう夢が残り続けている事を感じさせるタイトルになっている。F-Xやその先の戦闘機調達をFSXの延長で捉えている風が窺われる。
2011-10-02 13:13:15この点は正直、遺憾だ。この20年の国力の衰退が反映されていない議論だからだ。財政を中心とする国力を考慮すれば、それは所詮、技術者の夢でしかない。幻想のままで終わる議論だ。そういう議論は不毛だ。国産戦闘機の可能性は将来に渡って存在しない事実を認める事から意義ある議論がスタートする。
2011-10-02 13:15:41将来、日本が多少なりとも国産技術を戦闘機開発に生かせるとすれば、それは武器輸出三原則等の緩和を前提とした国際共同開発においてだろう。その過程で日本が部分的に優れた技術を持っている事で他国よりも競争力を示せる可能性はあるかもしれない。ATD-Xの開発も基本はそれが狙いだと思う。
2011-10-02 13:17:29米国や英国でさえ、戦闘機のような主要装備は共同開発でリスクを分散する時代において、国産戦闘機の夢を語ることが如何にバカげた話であるかというのは理解している人はよく理解していると思う。別に戦闘機の話ばかりではなく、これからの時代、ますます自国の力の限界に誠実であることが問われる。
2011-10-02 13:19:35