【冬の魔女ア合同】強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!その2【更新中】

ぼくのかんがえた冬の魔女アストラル合同の参加企画「強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!」  その1は https://togetter.com/li/1302002 4/26(金)更新 次回更新は5/10(金)の予定です 続きを読む
0
前へ 1 2 ・・ 68 次へ
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「オレたち【猿人】が悪かったというのは、よく分かった いくらでも謝る。 だから…だから、そいつには、そいつと他のみんなには、手を出さないでくれ」 「親分!」

2022-10-15 00:45:31
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「手を出すな! オレが話をつける!」 声をあげかける仲間を、まだかろうじて動く右手を上げて押しとどめる。 だって、実際にはもう誰も『手を出す』なんて余力が残ってないことは明らかだったから。 そしてオレは、可能な限り丁重に、交渉を持ちかけ始めた。

2022-10-15 00:45:31
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「なあ、 【剛腕のガド】 アンタも立派な武将なら、戦(いくさ)の『落とし所』というのが分かるはずだ。 だから頼む! 今回のケジメは、オレの命だけで勘弁しちゃくれねえか…!」 言葉だけではなく、何度も頭を下げて地面にこすりつける。

2022-10-15 00:46:56
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「頼む。 このとおりだ…!」 今回の交渉には、使える交渉材料が何も無い。 駆け引き出来る余地すらあまり無い。 だから、出来るのは、こうして精一杯語りかけることだけ。 それだけだ……

2022-10-15 00:46:56
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「それにアンタも、このあたりの村々全部を敵に回したくはないはずだ! ここにいる皆や、ハシバミを殺せば、確実にそうなる! いくら『メクセトの戦車』でも、たった一台、それも乗り手がケガしてちゃ、ずっとは戦えない。 なあ、アンタは、そんな状態で『戦』を起こすつもりなのか?」

2022-10-15 00:46:56
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「…お前一人だけなら、そうはならないと言うのか」 や、やった…! 食いついてきた! いや、焦るな。 今は、着実に交渉をまとめるんだ。

2022-10-15 00:47:55
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「ああ、オレの親父イワモリとその祖先。 そして海の神ハザーリャと海底地獄の女王ルウテトに誓う。 オレが殺されても、他の仲間が無事なら絶対に仕返しはさせない!

2022-10-15 00:47:55
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

もし、この誓いが破られたら、オレもオレの仲間たちも、永遠に海の幸を食べることはなくなるだろう。 そして死後は皆、ルウテトに引き渡され、神をも殺すような、恐ろしくマズい毒物料理を食わされ続けるだろう…」

2022-10-15 00:47:56
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

この文句は、この【北辺海】の村々に伝わる正式な誓いの作法だ。 まあ本当は、誓いに実効力をもたせるためには、村長や【長老衆】なんかの立ち会いが必要なんだが…そんなおえらいさんを、今すぐここに呼べるわけもないし、これだけで勘弁してもらうしかない。

2022-10-15 00:49:46
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

肝心なのは、これで“相手を持ち上げている”ことがしっかり伝わっているかどうか、だ。 あの牛野郎…ガドの一番の弱点は、その高慢さ、つまりは自尊心(プライド)だからな。

2022-10-15 00:49:46
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

殺戮計画も復讐も、元を突き詰めれば自分がチヤホヤされたいという欲望の挫折に過ぎない。 時代の変化で理解されなくなった“素晴らしい自分”を他の誰かに認めさせたいんだな。

2022-10-15 00:49:46
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だから、うまくそれを満たしてやれば、あるいはオレみたいなヤツとの交渉だって… さて、これでどうだ…! オレは意気込んだ。 だが…次に牛野郎が投げかけてきたのは、実に奇妙な問いかけだった。

2022-10-15 00:50:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「…お前はなぜ自らを犠牲にしようとする 昔からの仲間だけならまだしも、ハシバミは、お前にとってただのヨソモノのはずだ」 ああなんだ、そんなことか。 なぜそんな当たり前のことを問われるのか。 オレは、それを不思議に思いながらも答えを返した。

2022-10-15 00:50:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「オレがこのあたりのガキの頭(アタマ)だからだ。 武将が、部下の面倒を見るのは当然だろう? どれだけ能無しでも、出身がどこだろうと、そんなことは関係ない」 「…自分の命と引き換えでもか?」 ガドは、いぶかしげだ。

2022-10-15 00:50:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

つくづく物わかりが悪い男だなぁ…… 仕方がないので、オレは分かりやすいように、たとえを使って説明してやる。 「お前の兄貴は、そうじゃなかったのか?」 「…!」

2022-10-15 00:51:49
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ここに来て、ようやく牛のくもったような目に光が灯りだした。 果たしてその脳裏に何がよぎったのか…まあ、オレには関係ないことだな。

2022-10-15 00:51:50
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「フン…いいだろう 貴様を殺してケジメとしてやる」 よし、やった! 今度こそやった…… これで示談の成立だ。 肩の荷が降りて、力が一気に抜ける。

2022-10-15 00:51:50
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

なんだか後ろの方で「ちょ…待ちなさ…!」とか女子の声と、新手の猛獣みたいなのが暴れる騒音が、聞こえてきたが…… まあ、予想の範囲内だ。 婚約者が元気で、オレも一安心だよ。

2022-10-15 00:52:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

残念ながら、オレはもうアイツと結婚することは永久に出来ないわけだが… それでも、アイツはこれからも生き残る。 ふがいない婚約者で悪いが、これがオレに出来る精一杯だ。

2022-10-15 00:52:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

じゃあなナギサ。 今度は、もっと良い婚約者を見つけろよ…! それを声に出したら、今度こそ本当に殺されそうな気がしたので、別れの言葉は言わなかった。

2022-10-15 00:52:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

これで全てが一件落着、阿呆(あほう)なお坊ちゃんが死んで、みんな幸せになりましたとさ、と行きたかったところなんだが…残念ながら、オレはまたまた大事なことを忘れていたんだ。 その時、唐突に声をあげ、この示談に異議を唱えるものが現れたのだ!

2022-10-15 00:54:10
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

いや、現れたというか、ソイツは最初からこの場にいたんだが。 「ちょっと待ってください! 納得出来ません!」 いつの間にか、というかみんなが存在を忘れていた間に、ソイツは思わぬところにいた。 ソイツは、なんとよりによって、牛野郎ご自慢の戦車にまたがり、大声を張りあげて叫んだのだ。

2022-10-15 00:54:10
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「そんな取引はボクが許しません! それにそもそも、そんな取引は無効なんです! だって、立ち会い人がいないんですから!」 言うまでもなく、こんなときにこんなことを言うヤツは、一人しかいない。 オレの村で…いいや間違いなく、この【食卓界】で一番空気を読めない男。

2022-10-15 00:54:11
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「おい、ハシバミ! そこは看過(スルー)しとけよ!」 ハシバミだった。 しかも、 「いやです!」 オレの言うことを全く聞きゃあしねえときたもんだ。 ああ、一体どうすんだよ、この状況! せっかく話がまとまりかけたのに、また牛野郎が肩を怒らせ始めたじゃねえか!

2022-10-15 00:55:08
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ただこのときも、ガドはまだハシバミを説得しようとはしていた。 「落ち着け。 もはや、その戦車を使う必要はなくなった。 いったん降りろ。 貴様がまたがっているのは、強大な兵器だ。

2022-10-29 00:10:45
前へ 1 2 ・・ 68 次へ