【冬の魔女ア合同】強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!その2【更新中】

ぼくのかんがえた冬の魔女アストラル合同の参加企画「強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!」  その1は https://togetter.com/li/1302002 4/26(金)更新 次回更新は5/10(金)の予定です 続きを読む
0
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

『強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!』今日もまったり、少しずつ執筆中です togetter.com/li/1302002?pag… 詳細はadventar.org/calendars/3515 を御覧ください。 #ゆらぎの神話

2022-10-15 00:34:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

出来れば、すぐさま牛野郎に食ってかかりたかった。 けれど、その時のオレは、あまりに怒り狂ったため、実際にはなにも言えなかった。 痛みと疲れで、しゃべることすらおっくうだったということもある。

2022-10-15 00:34:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

おそらく、あちこちにうずくまる誰もがそんな状態だった。 そのためか、小屋全体は静まり返っている。 それに気を良くしたのか、アホ牛は得意げにしゃべり続けた。

2022-10-15 00:34:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「強大な力は、選ばれし強者だけが使えれば良い! ハシバミ、お前は脆弱なサルに過ぎんが、俺様の戦車を修理したという、見どころがある! こんな弱いだけのサルどもとは違うのだ! よって、この【剛腕のガド】様が選んでやろう!

2022-10-15 00:35:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

さあ、手綱を引いて戦車を操れ! こいつらを皆殺しにすれば、お前を俺様の名誉ある副官に任じてやろう!」 「ぼ、ボクが…?」 とまどうハシバミに向かって、牛野郎はムダに大きな声を張り上げる。

2022-10-15 00:35:55
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「そうだ! 優れた者はそれに見合った扱いを受け、尊敬されるべきだ! だが、コイツらは違う!」 おい、話しながらこっちを指差すんじゃねえ。 その指へし折るぞ。

2022-10-15 00:35:55
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「【猿人】(さるびと)たちは、ちょっと手先が器用で、ちょっとメシに手を加えるのが上手いからといって、チヤホヤともてはやされ、不当な利益を得てきた!」 それがまさに“優れた者に見合った扱いと尊敬”ってヤツじゃねーのか? 知らんけど。

2022-10-15 00:36:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「そんなヤツらの悪質な陰謀によって、我々、真に優れた者たちは、陰に追いやられ、冷や飯を食わされてきた! ヤツらが料理するメシも、元々は我々の武勇や技術で獲得してきたものだというのに!」 侵略戦争による略奪を、こうまで美化するかねぇ…

2022-10-15 00:36:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

というか、お前の周りにいるのは、大半が漁師の子供だぜ? メシの獲得の仕方なんか、わざわざ教えてもらうまでもない。 あのメクセトだって、船や釣り道具の改良ははしても、オレらのためにメシを獲りはしなかった。 むしろその逆。

2022-10-15 00:37:00
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

メクセトに海産物を獲ってやったのは、オレら漁師の方だ。 船なんかの貸し借りは、それでチャラ。 『信用借り』とか『ローン』ってヤツだな。 今だって、それは変わりない。

2022-10-15 00:38:24
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

というか、お前が追放されたのは、同じ【牛人】(うしびと)の仲間からだったよな? 兄貴の復讐のために暴れすぎて、ついにみんなから嫌われて追い出されたんだろ? それのどこに“優れた”部分があったんだよ?

2022-10-15 00:38:24
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

本当に“優れて”いたら、自分が追放されねえで、逆に仲間を味方につけて、追放する側に回っていたはずだよな。 なじみの故郷(ホーム)では出せなくて、わざわざ追放先へ行かないと出せない“優秀さ”って、一体なんなんだよ?

2022-10-15 00:38:24
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「ハシバミ、お前の父も、俺様と同じだ。 本当に尊ぶべき価値を忘れた愚かな【猿人】どもに、迫害され、ついには殺されたのだ!」 そうか、分かったぞ! オレはここで、ようやく牛野郎の秘密に気づいて、叫んだ。 「耳を…貸すな、ハシバミ!」

2022-10-15 00:39:53
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「黙れ、ガキ!」 「いいや、誰が黙るか! いいか、ハシバミよく聞け!」 「ええい黙れと…ぐっ!」 おっ、牛野郎の目に誰かのツバが命中したみたいだな! ナギサか?

2022-10-15 00:39:53
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

さすがは、先月のツバ飛ばし競争で優勝しただけのことはあるな! まあ、来月はオレが勝つ…いや、今はそれどころじゃないな。 まずは、この牛野郎をなんとかしねえことには、来月どころか、今日の昼飯にすら間に合えねえ!

2022-10-15 00:39:53
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

コイツがここまでハシバミにこだわるのには、理由があるんだ。 今、それをバラしてやる! 「この牛野郎は、利き腕をケガしてて上手く武器が使えねえんだ! だから、戦車を扱えるお前を、いいように使おうとしてるんだよ!」

2022-10-15 00:41:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

それを聞いて、牛野郎は、反射的に右手をかばった。 小屋のあちこちに散らばっているガキどもが、それを見ていっせいにざわつく。 オレが言ったことが、本当だと分かったからだ。

2022-10-15 00:41:19
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ガキどもは、たぶん全員ズタボロで、もう立つことさえ出来ないヤツらが大半だろうから、戦力にはならない。 けどその声は、その存在と敵意は、そして今ヤツの弱みをつかんだというその事実は…確実に、圧力となってヤツをおびやかしているはずだ。

2022-10-15 00:41:19
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だが…足りない。 なぜなら、牛野郎はまだ… 「ええい、黙れ!黙れ! 利き腕が使えなくてもなあ、お前ら全員素手でくびり殺すくらい、簡単なんだよ! 分かったら、オレの言うことを聞け! ハシバミ、コイツらを殺してオレの部下になるんだ!」 「え、ええー!」

2022-10-15 00:42:20
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そうだ。 ヤツはまだ、その言葉を実現させられるだけの余力を残していやがるんだ。 悔しいが、ヤツの言ったように、武力じゃオレらは絶対にヤツには敵わない。 それは、この惨状を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。 だから、だから、このままじゃ…

2022-10-15 00:42:21
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

その時、ざわつくガキどもを前に、牛野郎は、また ドドン! と、床を殴っておどしにかかった。

2022-10-15 00:42:21
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「いいかハシバミ! お前がガキどもを殺さなければ、代わりにお前を殺してやる! 優秀でないものはいらんからな! 優れた部下は、俺様のような優れた上官に従うものだ!」 そのハシバミは、牛野郎の大声に身をすくませ、顔をうつむかせている。 迷っているのか…?

2022-10-15 00:43:40
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

いや、そんな必要はないんだ。 だって、お前は悪くない。 それになにより、このままじゃお前、ホントに… その先を考えると、オレはなんだかたまらなくなって… そこへ、またハエの羽音が、あのブンブンいう音が、耳から離れなくて…

2022-10-15 00:43:40
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そして、その間にも牛野郎はどんどん怒りをつのらせていて…話す言葉もだんだん荒っぽく、強制的に、逆らったらどうなるかというおどしの色を強めていって… 「もう、やめて…くれ 全部…オレが悪いんだ ゆるして…くれ」

2022-10-15 00:43:41
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そして気づけば、オレは牛野郎の前で土下座をしていた。 目が熱い、前がよく見えない… オレは、あふれる涙もふけないまま、ただ謝り、こい願う。 だって、もうそれしかない…それしかないんだ……

2022-10-15 00:45:30
1 ・・ 68 次へ