【冬の魔女ア合同】強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!その2【更新中】

ぼくのかんがえた冬の魔女アストラル合同の参加企画「強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!」  その1は https://togetter.com/li/1302002 5/11(土)更新 次回更新は5/24(金)の予定です 続きを読む
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白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

なんだコレは? オレ様たちを、『新御三家』を馬鹿にしているのか? それは、確かに人気のある料理ではあった。 どこでも良く食べられているし、オレ様も大好きだった。 …子どもの頃まではな。 もちろん今もけっして嫌いじゃない。 そう、『ハンバーグ』は、皆に愛されている肉料理の代表だ。

2024-04-26 23:02:37
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

それは決して、否定は出来ない。 だが、これはどういう意味だ…? いや、まずは確認が先か。 大事なことを思い出したオレ様は、長テーブルの中央、料理審判の対象席に座っている女に声をかけた。 「オーミ、このメニューは君の差金(さしがね)か?」

2024-04-26 23:04:01
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「え? いいえ、違うわ。 私は、何も指示してない。 今回の料理は全てハチスケさんたちが用意してくださったの。 けど、どうしてこんな…『新御三家(わたしたち)』の歴史については、ちゃんと説明しておいたはずなのに…」 「なるほどな。 回答ありがとう、オーミ。

2024-04-26 23:04:20
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

おかげで、やるべきことがはっきりしたよ」 オレ様は、視線を前へと動かした。 そして、改めて今回の件の真犯人(・・・)に告げる。 「こんな庶民の料理をオレ様たちに食わせようとはな…… これは、『新御三家』への正式な侮辱ととって良いんだよな? なあ、ハシモト・ハチスケ?」

2024-04-26 23:04:46
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

続けて、オレ様は大声でどなりつけた。 「このハンバーグは、牛100%だ! ハンバーグなら合い挽(び)きが一番美味いことは、誰だって知っている。 しかもなんだ! こんな安い肉で! チーズを入れた程度で、ごまかしたつもりか! こんなものを、オレ様たち名家に食わせようと言うのか!?」

2024-04-26 23:05:20
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

オレ様は、フォークでその生ゴミをちぎって、そいつに突きつけた。 液体となったチーズが、血のように流れ落ちるがそんなことは関係ない。 見る者が見れば、そのひき肉の正体ははっきりと分かることだろう。 単なる腰抜けの流れ者かと思えば、こんなおちょくりを仕掛けてくるとはな!

2024-04-26 23:05:41
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

鍋の方は、特に手抜きは無かった。 あれは、普通に上質なメス子牛のモツだろう。 まさか、単に鍋特化の料理人だから他は作れない、というわけじゃあねえだろう。 誰かの仕込みやすり替えなんかの妨害工作のせい? あるいは、モツ鍋だけ代役に作らせた?

2024-04-26 23:05:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

いや、それはあり得ない。 なぜなら、このモスバ家の特設解除では、『新御三家』から派遣された監視員たちが厨房(ちゅうぼう)を見張っているはずだからだ。 これこそが、数百年におよぶとされる西方の伝統、長年の謀略のやり合いに耐えた相互監視システム。 出し抜くことは、まず不可能だ。

2024-04-26 23:06:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だから、こんなふざけたマネをしてくれたのは、目の前のこのガキ以外にはあり得ないってわけだ。 今回は、苦手なモツを料理して弱っていたのかもしれねえが、そんなもん、公式の場では言い訳にもなりゃしねえぞ! オレ様の怒りに、他の審査員たちも口々に同意を示す。 「その通り。

2024-04-26 23:06:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

公式審判員としての名誉に賭けて宣言しますが、 こんなハンバーグ、食べられたもんじゃありませんな。 勝負を諦(あきら)めたとしか思えません」 「オラ、ただのちょっと土地が広いだけの牧場主だけんど…これは、ケンカを売っているとしか思えんぞ。

2024-04-26 23:07:15
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

よそ者め、西方を代表する名家に仇(あだ)成すとは、オラたち全員を敵に回すも、同じこと。 生きてここから出られると思うなよ、小僧!」 さて…どうしてくれよう。 この野郎、タダじゃおかねぇぞ!

2024-04-26 23:07:30
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「待て、待ってくれ」 そんなふうに怒り狂っていたところ、突然、モスバ氏が声をかけてきた。 「なんですか?」 振り返ったオレ様は、ひどく驚いてしまった。 なにしろ、彼はその目から大きな涙を流していたんだ。 なんだ!? 一体、何が起こっている!?

2024-04-26 23:08:20
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

更にそこに、親父まで急に話しかけてくる。 よく見れば、こちらの目も濡れている。 これは一体、何が起こっている!? 驚き、硬直するオレ様や他の審査員をよそに、モスバ氏は、 「懐(なつ)かしいな、アンガス」 「ああ…」 などと、親父と二人だけで会話している。

2024-04-26 23:08:41
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「どういうことなんだ!?」 「そう声を荒げるな、コーベイ。 そう大(たい)した話でもない」 そして、モスバ氏が話し出したのは、驚くべき話だった。 「このチーズハンバーグは、思い出の味なのだよ。 私たち三人のな」

2024-04-26 23:09:06
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

親父も同意する。 「ああ、我々三人、私とオージーとキアニー、つまり現在の新御三家の家長たちは、かつて駆け出しの頃、仲間だった。 共同経営で、一緒に働いていたのだ。」 「そんな! そんな話、初めて聞くぞ!」 「当然だ。 言ってないからな。 その必要があるとは思っていなかった」

2024-04-26 23:09:28
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「…こいつ、まだ口下手のままか。 もう少し説明しろ」 「…言ってどうなるというのだ」 「ああもう…やっぱり私の出番か」 モスバ氏は、こちらに説明を続ける。 「コーベイ君、それには理由がある」 「理由ですか、一体なんだって言うんです?」

2024-04-26 23:09:50
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「我々の勢力争いのことだ。 一番悪いのは、私とウェディズの馬鹿なんだが…ああいや、お嬢さん、君は関係ない。 君の父親、キアニーのことだ。 これからしばらく面倒な話になる。 すまないが、君はしばらく黙っていてくれ。 これ以上、話をややこしくしたくない」 「え、ええ…」

2024-04-26 23:10:20
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そして、モスバ氏は話を続けた。 「この安っぽいハンバーグはな、我々が共にビジネスをやっていた頃に、よく食べていたものなんだ」 親父が、それを補足する。 「あの頃の西方には、我々のような『猿人』(さるびと)に料理を出す店など、まず無かった。

2024-04-26 23:10:42
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

その時代には、あらゆる富は力が強く、牧場の経営や食肉解体に向いた種族や、その専属料理人が牛耳っていた。 『猿人』でも、料理が得意なら『旧御三家』に迎え入れられ、貴族料理人として贅沢(ぜいたく)をすることも出来たが…

2024-04-26 23:11:06
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

逆に言えば、料理が苦手なものには、掃除などの雑用ぐらいしか、仕事が無かったものだ」 「それで、我々が廃業寸前のボロい店をのっと…借用して その厨房で作っていたのが、このハンバーグだ」

2024-04-26 23:11:22
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「まったく、ひどい味だった」 「ああ、まさに、これだ。 コーベイ君、我々の時代には、こんな肉しか手に入れられなかったんだよ。 豚肉にしても、当時のミートタウンじゃ情勢の都合で手に入らないことも多くてね。

2024-04-26 23:11:51
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

メクセト時代の遺恨から、この町には豚を売らない農家も多かったんだ。 たまの贅沢で、こうしてハンバーグにチーズを入れることぐらいは出来たが…結果はご覧の有様さ。 それでも、これは…」 そして、親父が結論を述べた。 「我々にとって、忘れられない…思い出の味なのだ。

2024-04-26 23:12:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

やがて方針の違いから対立し、元々共同経営していたこを忘れざるを得なかった、『新御三家』の…我々の青春のな。 だからすまん、コーベイ。 今度ばかりは…」 「私たちは、ハシモトくんに投票させてもらうよ」 なんてことだ…ハシモトはこの事情を知っていたのか!? どうやって調べた!?

2024-04-26 23:14:01
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

このオレ様すら知らなかったんだぞ! いや、今はそれもどうでもいい。 今、問題なのは… 「これで、二対二だ。 この勝負、どちらが勝つのかは…コーベイ、お前に最終決定権がある。 お前が決めろ。 それがお前の権利であり、義務だ」

2024-04-26 23:14:31
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そうだ、このままじゃ引き分けになっちまう。 親父の言う通りだ。 今は、この勝負の結果を判定することこそが、最優先。 この料理勝負がどちらの勝ちか、それを決められるのがオレ様だけだっていうのなら…良いだろう。 なら、決めてやるさ。

2024-04-26 23:14:52
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