本作では二人の主人公の、二つの物語が並走する。信彦の物語は、「純粋な少年が、恋や裏切りをへて大人になる」ビルディングスロマン。光太郎の物語は、最低野郎のSF世界氏が指摘する通り、ほとんどイーストウッド映画であり、「生きた証を少女に託す老兵」の物語だ。>note.com/cute_gerbil226…
2022-11-12 17:37:42信彦がドイツ浪漫派的な「類-個の回路」の中で成熟してゆくのに対して、光太郎は「固有名」の中に生(敗北)の意味を取り戻す。あえて気恥ずかしい比喩を使えば、「恋」に従い玉座を目指す信彦に対し、「愛」ゆえに自分という玉座を壊しつづける光太郎、という図式がある。
2022-11-12 17:37:43未来に焦がれる青年の「戦い」の終わりと、過去に呪われた老兵の「戦い」の終わり。二つの物語は交錯し、ゆかりの《私達は誰も特別じゃない。残したものを誰かに受け継ぐだけの歴史の通過点だから》という言葉に収斂していく。この第十話の展開には、心揺さぶられるものがあった。
2022-11-12 17:37:43悪とは、誰だ。/悪とは、何だ。
「悪とは、誰だ。/悪とは、何だ。」という『BLACK SUN』のキャッチコピー。作品内容を端的に示していて、実に秀逸。まず前半の「悪とは、誰だ?」の悪は、ニーチェ的な「よい/悪い」(自分にとって有用/有害)の悪。本作が「誰が味方かわからぬ」群像劇であることを示す。
2022-11-23 05:06:06後半の「悪とは、何だ?」の悪は「善/悪」の悪。この作品全体がこの疑問文のようなもの。「強いてこの作品のメッセージを言うなら『あなたはどう思うの?』であって、監督はあえて作品の中に正しさを置いていない」と仰る方がいた。完全に同意する。>twitter.com/e_rewhon/statu…
2022-11-23 05:06:06BLACK SUNの社会問題・政治思想の描き方については、「強いてこの作品のメッセージを言うのであれば『あなたはどう思うの?』という作品。『作品の中に、正しさを置かない』ということが、おそらく監督なりのバランス感」というモモンガ氏の指摘も重要。>youtu.be/Qd-621CnvBM
2022-11-13 19:04:15世界には『答え』を描いた作品と、『問い』を投げつけてくる作品の二種類がある。例えば「悪い奴」の姿を描く映画や、「根っから悪い奴なんていないよ」と語りかけてくる映画がある(前者)。対して、観れば観るほど「悪とは、何だ?」と分からなくなる映画もある(後者)。こうした作品は怖い。
2022-11-23 05:06:07白石和彌『「正義と悪の境目」というテーマがあって、そこは今回もブレずに入れ込んでいます。僕の師匠である若松孝二監督は「…観ている客にナイフを突きつけて終わらせるんだ」と常々言っていました。つまり…「あなたはどう思ってるの?」と問題を提起する姿勢です。>news.mynavi.jp/article/202111…
2022-11-27 21:32:18白石和彌『大人になった時に、あの時に観た表現には、そういう意味があったのかと気が付く。そういうプレゼントのようなものを残すことは、エンターテインメントを作る大人の役割ではないか…そこを躊躇してしまったら、表現というもの自体が、先細りしてしまうのではないか>cinematoday.jp/news/N0133403
2022-11-27 20:19:03悪とは、誰だ?
和泉葵役の平澤宏々路(15歳)が『BLACK SUN』について《“悪”はいけないものだと強く批判することも、見方を変えれば“悪”になりうる。人それぞれ、価値観や考え方、感じ方があるのだと、深く考えさせられる作品》と評してて、幼稚な大人達の感想の中で明らかに浮いている。>oricon.co.jp/news/2254855
2022-11-23 22:41:50涙が止まらなくなるくらいに「和泉葵」を生きつつ、(多分あのラストも含めて)これだけ冷徹に作品を眺められるとは。冴えた批評家でなければ役者なんてやっていけないんだと思うけど、15歳にコレを言われてしまうと、大人には更に何が語れるのか?
2022-11-23 22:41:51悪とは、何だ?(ヒーローと差別)
『仮面ライダーBLACK SUN』に関する白石和彌監督の’21年11月掲載インタビュー。率直。面白い。《ヒーローであっても、やっていることがすべて正義とは限らない》。完成した作品を見ると、言葉の意味が沁みてくる。
2022-11-27 11:03:11これはたとえば白倉伸一郎(平成ライダーの育ての親にして『BLACK SUN』のエグゼクティブ・プロデューサー)が'04年刊行の『ヒーローと正義』の中で書いている主張そのままで、平成ライダーを支える柱の一つである。のだが、本作ほどド直球でこれを追究した作品も珍しい。>amzn.to/3ifMdHf
2022-11-27 11:03:13